世界最速の退役オーシャン・ライナー、ニューヨークで生まれ変われるか?

世界最速の退役オーシャン・ライナー、ニューヨークで生まれ変われるか? 1

歴史に残る名船だけど、維持費も莫大で…。

客船ユナイテッド・ステーツ(SS United States)は、世界最速、米国では最大の客船です。が、それは1969年に客船としての営業を停止していて、維持費用の問題から取り壊しが検討され始めていました。リノベーションしてオフィスやレストランとして再利用しようとする動きもありますが、それで収支が合うのかどうかまだわからない状態です。

ユナイテッド・ステーツは、乗客を載せて大陸間を横断するオーシャン・ライナーでした。が、オーシャン・ライナーは全体的に飛行機に乗客輸送の役割を譲っていき、現在も運航しているオーシャンライナーはクイーン・メリー2だけです。ユナイテッド・ステーツは王室メンバーやセレブリティを数多く載せた経験を持ち、大西洋横断船として世界最速の記録を保持してもいて、米国の国定歴史建造物に指定されています。

現在この古い船はフィラデルフィアに係留されていますが、その維持だけで毎月6万ドル(約720万円)かかります。ユナイテッド・ステーツを管理するNPO、SS United States Conservancyは先月、10月31日までに資金が集まらなければそれを金属リサイクル業者に売却せざるをえない、ぎりぎりの状態になっていました。が、11月1日には幸い10万ドル(約1200万円)の寄付が集まったことが報告されました。とはいえこれでは、当面なんとか生き延びただけです。

1952年建造で全長990フィート(301.8m)のこの船は、当初は世界最速の船を作ることを目的としたトップシークレットの冷戦プロジェクトでした。でも最終的には、強力かつハイテク、ラグジュアリーなオーシャン・ライナーになったのです。その乗客にはケネディ家のような国家のトップ、ジュディ・ガーランドやマーロン・ブランド、マリリン・モンローといったハリウッドスター、ウォルト・ディズニーやサルバドール・ダリといったアーティストがいました。

ユナイテッド・ステーツは、大西洋横断の速度では世界最速記録を保持しています。最高速度は38.32ノット(時速70.97km)で、処女航海では行き帰りともに速度記録を突破し、60年後の今も記録は破られないままです。

またユナイテッド・ステーツは当時の技術の粋を集めたもので、そこにはタイタニックの教訓が多く生かされていました。かじが改良されて高速でも操作しやすくなり、法律で決められた以上の救命ボートを積み、そのボートはアルミニウム製にすることで軽さを確保、またオーシャン・ライナーとしては初めてレーダーマストを搭載していました。

それでも、月6万ドルという維持費をかけて保護し続けるのはもはや非現実的になってきました。また修復の必要性も高まっています。そこで、この船をニューヨークに運んで商業施設に生まれ変わらせようという計画が練られ始めました。

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フィラデルフィアに係留されたユナイテッド・ステーツ。Credit: SS United States Conservancy

あるニューヨークの投資家が、ユナイテッド・ステーツをニューヨーク・ブルックリンのレッドフック地区に運ぶことに興味を示しました。そこは工業地域であり、地ビール醸造所があるなど独特の雰囲気を持つ港町です。起業家でレッドフックにドックを所有するJohn Quadrozzi氏が、ユナイテッド・ステーツの身の振り方が正式に決まるまで船を無料で停泊させてもいいと提案したのです。

彼はまた、それを複合型商業施設にすることで再生させたいとBrooklyn Paperに語っています。その計画は船をリノベーションし、スタートアップ向けオフィスやレストラン、劇場、ジム、バー、海洋博物館などに変身させるというものです。彼はまたその施設全体で太陽・風力発電を利用し、エコフレンドリーな施設にしたいとも言っています。

素敵なプランに聞こえますが、その費用は5000万~2億ドル(約60億~240億円)にも及ぶと見込まれています。Curbedによると、そこには船をフィラデルフィアからブルックリンまで運ぶのにかかる200万ドル(約2億4000万円)はふくまれていません。

当面生き延びたユナイテッド・ステーツですが、まだまだどうなるかわかりません。SS United States Conservancyは来週役員会を開き、「経済面、再開発面、ブローカーそれぞれの観点から現状を評価する」予定です。Brooklyn Paperによると、Quadrozzi氏とSS United States Conservancyは「寄付金提供者やデベロッパー、投資家、政府当局とともにこの試みのための資金について話し合っているところ」です。

ユナイテッド・ステーツは、アメリカにとっても船舶全体にとっても、歴史の大事な一部です。なんとかうまく保存する道が見つかることを願います。

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1950年代当時のユナイテッド・ステーツ。Credit: SS United States Conservancy

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1952年、ヨーロッパへの処女航海を終えてニューヨークに戻ってくるところ。
Credit: Frank O. Braynard Collection/SS United States Conservancy Facebook

Top imgae by SS United States Conservancy

source: SS United States Conservancy via The Guardian , Curbed , The Brooklyn Paper , New York magazine

Bryan Lufkin - Gizmodo US[原文

(miho)