北米の森に、酸性雨から回復の兆し

北米の森に、酸性雨から回復の兆し 1

数十年の努力が実を結び始めた模様。

米国北東部とカナダ東部の森が、酸性雨による被害からついに立ち直り始めたようです。米国ではこの問題に対し法整備などで40年ほど取り組んできましたが、その努力がやっと報われ始めました。

Environmental Science and Technologyの最新号に掲載された米国地質調査所の論文によると、研究チームが土壌の酸性度と毒素レベルを米国北東部・カナダ東部の27ヵ所で測定したところ、すべての場所で過去8年から24年の間で改善されていたんです。調査した場所のほぼすべてにおいて、酸性雨の影響を示すアルミニウムの濃度が下がり、浅い土壌層のpH値(低いほど酸性が強い)が上昇していました。

酸性雨とは?

酸性雨は硫黄酸化物や窒素酸化物などによって起こされるもので、石炭による発電やガソリンの使用などがそれらを生み出しています。大気中でこれらの化学物質が水や酸素と反応し、強い酸性の物質となります。雨が降るとその酸を含んだ水が土壌に染み渡り、土や水の中の生態系を破壊していきます。

「本質的に、酸性雨として現れるあらゆる環境問題は、土壌から始まります。」論文の主著者であるGregory Lawrence氏は、電話取材でこう語りました。

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Image Credit: Wikimedia

酸性雨が生態系に被害をもたらすプロセスは、主にふたつあります。まず酸性雨は、植物にとって大事な栄養である土の中のカルシウムを溶解させます。次に、土壌がより酸性に傾き、カルシウム不足になるにつれ、植物にとっては毒であるアルミニウムが流出していきます。「これは木や森、そして地表水にとって問題になります」とLawrence氏。アルミニウムは、特にレッドメープルやサトウカエデなど北米東北地域の主要な木の種類に対して脅威となります。「アルミニウムは、苗木の生存や、天候や昆虫からのストレスへの対応など、木の全体的な健康状態に影響を与えます」

さらにアルミニウムは土壌から近くの川などの水へと広がっていきます。このため長期的には魚などの動物が死滅していき、水生生物全体へと影響を及ぼしていきました。

人間による環境汚染と酸性雨、そして環境被害の関係は、19世紀から指摘されてきました。でも米国においてこの問題が広く知られるようになったのは、1970年代以降です。その頃、ニューハンプシャー州にあるハッバード・ブルック実験林から、森の生態系に対する酸性雨の被害を示す研究が公開され、大きな反響を呼びました。酸性雨を問題視する世論が高まり、米国議会は硫黄や窒素の排出を減らすことを目的とした大気浄化法を何回かにわたり改正していきました。これらは一般に成功だったと考えられ、米国の酸性雨レベルは1970年代中盤から劇的に下がっていきました。

遅れてきた土壌の改善

ただ、酸性雨レベルが改善したとはいえ、森が本当に回復したとは研究者も言い切れないままでした。

「酸性雨が減っているとはいえ、これまで土壌に関する研究では、ほとんどの地域で土壌の酸化の進行が示されていました。」とLawrence氏。「ですがそれらの研究で使っていたのは2004年までのデータのみであり、今回の研究では対象を2014年まで延ばしたのです」

新たな研究では、土壌の状況が酸性雨の前の段階にまで近づきつつあるかもしれないことが示されています。調査対象となった27ヵ所すべてで、一番表面の土壌は強い回復の反応を見せており、アルミニウム濃度が低下し、pH値が上昇していました。一部では深い土壌層の酸性度が高まっているところもありましたが、Lawrence氏らはこれを回復プロセスの一部かもしれないと言っています。

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マサチューセッツ州のパイオニア・バレーを通るコネチカット川。Image Credit: Wikimedia

「酸性雨の影響のひとつは、アルミニウムが土壌の深いところから、植物の根が栄養を吸収する表面の有機層に移動することです」とLawrence氏は言います。「今回の研究では、このプロセスが逆向きに起きていることが非常に強く示されていて、土壌のアルミニウム濃度が下がっているのです。アルミニウムが元々の場所に戻りつつあるのです。」

今後Lawrence氏らは、米北東部の川や湖で同様の回復の兆しを確認すべく、地表水の化学組成を調査したいと考えています。

「たしかに回復しつつあります」とLawrence氏は言っています。「我々はまだ、この生態系がどの程度回復する必要があるか見極めようとしているところです。でも酸性度の低下は、間違いなく良い方向に影響しています。」

環境系で報道されることの多くは環境破壊側の話で、ついついあきらめモードになってしまいます。でもこういう話があると、環境問題は解決できなくないんだ、と改めて思い起こされますね。自然って本当に、柔軟な力があります。

source: ESTHarvard Kennedy School

Maddie Stone-Gizmodo US[原文

(miho)