世紀を越えた研究が続く…北アイルランドの沿岸に並ぶ、不思議な石道

世紀を越えた研究が続く…北アイルランドの沿岸に並ぶ、不思議な石道 1

ここは、イギリスの正式名称(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)に含まれる、北アイルランド

北海道とほぼ同じ大きさ、エメラルドの島ともよばれる広大な自然に恵まれた島の北端、アイルランド首都ダブリンから離れたイギリス領にあるのが、ジャイアンツ・コーズウェー(Giant' Causeway)とよばれる沿岸です。

"巨人の石道"と名付けられたこのエリアには、幾何学的な形をした玄武岩が4万個ほど並んでいます。この特徴的な形は自然が生み出したものだとして、世界遺産にも登録されているのですが、未だ解明しきれていない謎が残る石道なのです。

さかのぼること300年以上前のこと...1692年にリチャード・バルクリー卿が、ロンドン王立協会にこのエリアの発見を知らせたとされており、そこから始まったのが、どのようにしてこの幾何学的な形が出来上がったのか、という激しい議論。

アイルランドの伝説によると、北アイルランドのFinn McCoolという巨人がスコットランドのライバルとの戦いのために作られた道。科学者たちは、神話から遠ざけるために「おそらく"普通の"男が、つるはしと彫刻刀で土手を作ったのだろう」と合理的な釈明に落ち着かせた時代もあったそうです。

それから約80年経過した、1771年のこと。「火山活動によるものではないか」と新たな見解を発表したのが、フランスの科学者Demarest氏。円柱上の形に仕上がったのは6千万年前。大規模な噴火によって溶岩が海に流れ、急速に冷えたことで六角形になったという説が有力になりました。

この原理が基礎となり、2007年になって詳しく調査をしたのが、トロント大学の物理学者Stephen Morris氏と、当時学生であったLucas Goehring氏。溶岩の流れとその急速な冷却化に加え、これらの石柱群が形成されるまでに地下水の沸騰も相まったことが当時のタイム紙で指摘されました。

彼らは、ジャイアンツ・コーズウェーと同じような六角形のパターンをつくる実験も行ないました。それは、コーヒーカップのなかで水とコーンスターチを混ざり合わせて、1週間以上、光を当てながら混合物が完全に乾くのを待つ...というもの。乾いて割れ目ができたとき、その内部に円柱上の形を確認できたそうです。

なんとも新奇なパターンが見られたというX線の断層写真は、Youtubeでも公開されています。

そして、時は2015年。先月初頭に出版されたPhysical Review Lettersによると、ドイツにあるドレスデン工科大学のMartin Hofmann氏によって、先行研究をベースに新たな見解が表明されました。特に、表面に見られる割れ目のパターンが形成されるまでの過程については次のように詳しく説明されています。

冷却の初期段階において、表面上のランダムな場所で起きる亀裂が90度の角度で交差するときにエネルギー放出が最大になり、個々の割れ目の変化が長方形から六角形のパターンを織り成すということが分かりました。さらに溶岩が冷えると、六角形のパターンが維持されて、最終的に自然のなかで見られる石道の形を成しているのです。

先ほどのMorris学者は、彼らの発見について良い結果だとコメントするも、結論として締めくくるにはまだ程遠いことを強調。米Gizmodoに対して、メールで次のような見解を示してくれました。

「彼らが到達した"弾性エネルギーの放出スピードを最大化するように亀裂が動く"という結論は、一つの大きな推察の始まりにすぎない。原理を最適化するうえで六角形はたしかに最適なパターンである。しかし割れ目ができる構造はそんなにシンプルなものではない。」

例えば、どんなメカニズムによって岩のサイズが決まるのか実験した同氏とGoehring氏は、亀裂が伝搬する速さなどの要因によるということを発見していました。

同氏はまた、「新たな計算によって、いくつかの答えは導かれるが、問題のその他の側面に到達していない」といいます。

今回発表された最新の研究は、「"球形の牛"(現実に起きる複雑な事象を極度に単純化すること)で、岩が完全な六角形でなく、部分的にランダム性があるという事実とは対照的に、最初から完全なレンガ状のパターンが完璧な六角形になることを想定した推察になっている」さらにいくつかの場所で見られる形状を形成する波状の岩についても同研究で説明されていないことについても言及しています。

このようなことからMorris学者は、自然のなかで見られるランダム性や、ジャイアンツ・コーズウェーの玄武岩に見られる不完全で歪んだ形について説明しようとされていないことを指摘しています。

何百年もの時を越えても未だなお、科学的な筋道が通らない北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェー。まだまだ科学的研究は続きそうです。

Image by Chmee2/Wikimedia Commons

source: Goehring, L., Lin, Z., and Morris, S.W. (2006) “An experimental investigation of the scaling of columnar joints,” Physical Review E 74: 036115.

Goehring, L. and Morris, S.W. (2008) “The scaling of columnar joints in basalt,” Journal of Geophysical Research 113: B10203.

Goehring, L. and Morris, S.W. (2014) “Cracking mud, freezing dirt, and breaking rocks,” Physics Today 67(11): 45.

Hoffmann, Martin et al. (2015) “Why hexagonal basalt columns?” Physical Review Letters 115: 154301.

Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文

(Rina Fukazu)