テロは暗号化技術のせい? 好機とばかり監視を正当化する情報機関

テロは暗号化技術のせい? 好機とばかり監視を正当化する情報機関 1

情報だけ入っても、対応しなきゃ意味がない。

先週金曜日にパリで起きたテロ事件について、捜査当局は暗号化技術がテロリストたちを助けたのだと決めつけ、市民への監視を正当化するかのようです。

警察や情報機関の高官たちは、パリのテロ事件が起きたのは、テロリスト間のプライベートなやりとりを保護する暗号化ツールが自由に手に入るからだと言っています。つまり、もしテロリスト同士の会話を追跡しさえできれば、テロを食い止められたと言わんばかりです。でも過去には、情報機関がテロの計画をつかんでいながらそれを防げなかった例があります。ムンバイの事件です。

2008年にムンバイで起きたテロ事件は、テロ組織が計画を実行するとこうなるという見本のようです。事件収束後には、テロの前やその最中の情報機関の対応が批判され、エドワード・スノーデン氏がリークした文書の中でもそのプロセスが明らかになりました。情報機関は実行犯のうち数人を知っており、オンラインでの行動も追跡可能だったのですが、手遅れになる前に彼らの計画を把握できなかったのです。その失敗は、暗号化技術とは全然関係ありません。

ムンバイのテロリストの一部は、イギリス、インド、米国の情報機関に知られていましたが、各国は情報を十分共有していませんでした。彼らが情報交換し、多くのヒントを見逃していたことに気づいたのは、テロが起きた後でした。ムンバイの犯人たちは、死角に隠れていたわけではありません。うちひとりはGoogle Earthを使い、攻撃対象を細かく検討していました。問題は、テロリストがプライバシーツールを使いこなしていることでも、プライバシーツールが捜査の邪魔をしたことでもありません。情報機関が重要な情報を有効に分析し、共有しなかったことです。

「私のキャリアの中で、(テロの)兆候の情報だけに基づいて計画を止めたことは1度も思い出せません」元CIAのテロ対策責任者、Charles Faddis氏はニューヨーク・タイムズで語っています。暗号化技術が使われるかとか、情報を解読できるかよりも、人間が情報にどう対応するかのほうが、はるかに重要なんです。

国をまたいだ情報機関同士での情報共有の拙さは、パリの事件にも影響していました。トルコ当局は、トルコがフランスに対し2回、金曜日の犯人について警告していたが回答はなかったと言っています。イスラエルやイラク、ヨルダンも、フランスに対し警告を出していたそうです。

でも、捜査当局は暗号化をテロリストの道具と呼び、彼らの主張を通すのに利用しようとしています。ニューヨーク警察委員長のBill Bratton氏は、日曜日にTV番組「This Week With George Stephanopoulos」に出演し、ISISの身を隠す能力は「今回の事件において大きな要素」だと指摘しました

Bratton氏はさらに、別の番組「Face the Nation」でも暗号化技術批判を繰り広げました。「我々は多くの面で、この種のデバイスのおかげで目が見えなくなっています。それらのデバイスの情報には、それを作ったメーカーであっても、我々警察機関が捜査令状と法的効力を装備して向かったとしても、アクセスできないのです。この件は非常に迅速に議論する必要があります。目が届かないところでは動けませんから」

CIA長官のJohn Brennan氏も暗号化に関する議論の中で、このテロはひとつの警鐘だと言いました。彼は「未承認の情報公開や、政府の役割の縮小」が国際的情報機関のテロ防止を邪魔していると言います。彼がいう「未承認の情報公開」とはもちろんエドワード・スノーデン氏によるリークのことです。まるでテロリストたちが、スノーデン氏のせいで政府の追跡に気づいたかのような言い草です。

情報機関がなぜパリの事件を把握できていなかったのかはまだわかりません。Forbesでは、ベルギーの連邦内務大臣Jan Jambon氏が「テロリストたちはPS4を使っていた」と発言した件を伝えていて、そこではPS4が悪者扱いです。でもJambon氏がその発言をしたのは、テロが起こる前だったんです。

テロリストがどんなプラットフォームを使っていようと、暗号化技術が情報機関の努力を妨げるというのは仮装の話に過ぎません。犯人たちがいかに最新鋭の暗号化ツールを使っていたことがわかったとしても、それを解読するカギを政府に渡すことが解決策になるという議論はどこかおかしいです。

テロリストが暗号化を使っていることは、Glenn Greenwald氏が指摘するように、少なくとも2001年からわかっていました。もう20年以上にもなります。プライバシーツールに関するレトリックはシニカルな楽観論、無神経な責任転嫁に過ぎません。暗号化をテロの主要因とする考え方は、結論を急ぎすぎているだけでなく、情報共有の失敗というより大きな問題を見落としています

たとえば爆弾にカギをかければ、その処理が少し面倒にはなります。でもカギが悪者になったり、禁止されたりはしません。暗号化はプライバシーを提供することで、大部分のユーザーにとってインターネットを安全なものにしています。情報機関たちは、暗号化技術を攻撃したり、それによって非効率な監視活動を支持させようとしたりすべきではありません。彼らはまず、脅威の見極めに失敗したことを認めるべきなんです。

Image by Getty Images

source: Propublica(12)、New York TimesBuzzFeedCapital New YorkTwimgNBC NewsKotakuCNBCUSA TodayThe Intercept

Kate Knibbs-Gizmodo US[原文

(miho)