宇宙放射線はマウスの脳にどういう影響を与えるのか?

宇宙放射線はマウスの脳にどういう影響を与えるのか? 1

火星に探査機を送るだけでも一苦労ですが、生物学的に決して強くはない人類を送るのは別次元の難易度です。

私達はまだ、宇宙が人体にどういう影響を及ぼすのかをあまり知りません。マウスを使った最近の研究によれば、宇宙は私達の脳に予想も出来ない形で影響を及ぼすかも知れないそうです。

火星への旅は、飛行士を治療不可能なまでに壊してしまうのでしょうか? あるいは、予め飛行士候補を宇宙空間にさらすことで、危険な高エネルギー粒子のシリコンや鉄などを生き延びる可能性を上げることはできるのでしょうか? ダラスのテキサス大学Southwestern Medical Centerにて准教授を務めるAmelia Eisch氏と彼女のチームは、まさしくそういった疑問に対する答えを見つけようとしています。10月21日にシカゴで行なわれた北米神経科学学会の本年度の会合にて、Eisch氏はNASAから出資を受けている彼女の研究宇宙放射線が大人のマウスと若いマウスの脳に与える影響―のポスターを公開しました。

なぜマウスの年齢に注目したかというと、宇宙放射線のマウスに対する影響を調べたこれまでの研究では、人間のティーンエージャーにあたる若いマウスを使っていました。Eisch氏が説明したように、NASAは(ありがたいことに)10代の若者を火星に送る予定はありません。ならば、若いマウスを研究してもそれほど意味がないのです。そこでチームは、NASAの宇宙飛行士と同じ年齢に該当するマウス達と若いマウス達で対照実験を行ないました。ブルックヘブン国立研究所にある加速器から生み出した放射線を浴びせ、記憶と学習のテストの成績を照射前と後で比較したのです。

現在、公表のために査読されている彼女達の論文は驚きのものでした。照射を受けた若いマウスは、簡単なテストでも難しいテストでも、受けなかったマウスよりも成績が劣りました。ところが、大人のマウスは難しいテストの成績が上昇したのです。行なったテストは、「パターン分離」と呼ばれる、2つの異なった環境を区別するというものでした。照射を受けた大人のマウスは、受けなかったグループよりも素早く区別することができたのです。

しかし、これは必ずしもよいこととは限りません。これはつまり、2つの環境を区別するという、脳の海馬を使う特定の作業のみが上手になったということです。宇宙放射線に有害な影響があることは多くの研究ですでに知られていますし、作業がうまくなった理由にはいくつかの可能性があります。Eisch氏の説明によれば、マウスの脳が新たに海馬に大きく依存するようになって能力が向上したか、あるいはニューロンや苔状線維の発火パターンが変えられたからかも知れないそうです。彼女のメールにあるように、ここから新たな疑問が生まれます。もしも区別がうまくなったのだとしたら、逆に包括的に考えることが難しくなったのではないでしょうか?

結論から言えば、これらの影響をより深く研究していかない限り、謎が解けることはないでしょう。何より彼女の発見から確かなのは、宇宙旅行の副作用に関する、そもそもの研究手段から見直す必要があるということです。

2030年、NASAは人類を火星に送ろうとしていますが、それまでにはまだまだ研究せねばならないことが山積みのようですね。

image by NASA

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文

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