2015年、アメリカのインターネットに起きた6つの嬉しい事件

2015年の振り返りシリーズ、今回はインターネット編。米GizmodoのAdam Clark Estes記者のセレクトでお送りします。

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米連邦通信委員会FCC)がオープンインターネット規則を制定し、長いこと盛り上がってきたネット中立性議論に一旦区切りがついた2015年。その他にも、ワールドワイドウェブ(WWW)誕生以来の記録に残るようなできごとが多かったように思います。

しかし、自由で開かれたインターネットに向けた戦いはまだ終わっていません。FCCのオープンインターネット規則をめぐる訴訟は続いており、FCCのやり方がよろしくないと裁判官が判断する可能性は残っています。それでも、さまざまなマイルストーンは、これまで続いてきたアメリカの遅くてしょぼいインターネットが良い方向に向かっていることを示しているのではないでしょうか。

それでは2015年にブロードバンドインターネット界に起きた嬉しい事件を見ていきましょう。

嬉しい事件その1 インターネット市場の独占終了に向けたオバマ大統領の計画

2014年1月、連邦控訴裁判所がFCCのネット中立性規則の大部分が無効であると判断し、残念ながら通信会社に肩入れするような形になってしまいました。その1年後、オバマ大統領は、アイオワ州で初となる自治体がギガ・インターネットを敷設した都市を訪問。アメリカにはコムキャストのような大企業に支配されない、インターネットサービスプロバイダー(ISP)がもっと必要だと訴えました。

素晴らしいアイディアですよね! 現在はもろもろの要素で、コムキャストやベライゾンは自然と市場の独占を享受している状況です。例えば、私はインターネットバックボーンに程近いブルックリンに住んでいますが、ISPの選択肢はタイムワーナーケーブルしかありません。もし払っている金額に見合った高速サービスを受けられているのであれば文句も言わないのですが、そうではない上に、他に選択肢がないのです。

FCCのオープンインターネット規則に先がけてオバマ大統領が提案したのは、ISP同士の競争を活性化させ、文字通り真の「ブロードバンド」速度を提供するようにするというもの。オバマ大統領は、アイオワ州のシーダーフォールズやテネシー州のチャタヌーガを地方自治体が高速インターネットを提供している例として挙げています。グーグルファイバーも悪くない選択肢でしょう。簡単に言えば競争が増えることで、コムキャストやベライゾンなどのこれまでの通信会社が自分たちの設備を改善し、何かを提供しなければいけなくなります。ひどいカスタマーサポートはそのままでしょうが。

「国富論」のアダム・スミスも賛成することでしょう。競争はいかなる資本主義経済においても、よいことだ、と。

嬉しい事件その2 FCCのオープンインターネット規則

ネット中立性を守る最初の挑戦の後、FCCはインターネット上の有料高速道路であるファストレーンを認める規則を提案するという失態を演じました。これは巨大通信会社がお金をもらうことによってある種類の通信を優先させるという、ネット中立性の原則に反するものです。

反対の声は無視できないほど大きくなり、最終的にFCCのトム・ウィーラー委員長は180度方向を転換しました。2015年始め、FCCはインターネットを公共サービスに再分類し、ブロードバンドサービスを電話サービスのように保護する規則を提案したのです。この規則はトラフィックの有料での優先、速度制限、そして特定ウェブサイトの遮断も禁止しました。インターネット専門家やネット中立性のパイオニアであるコロンビア大学教授のTim Wu氏もこの規則を絶賛しました。私たちと同じように。

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2月、FCCは提案した規則を投票で承認、ネット中立性における重要な戦いに勝利しました。とは言え、戦いはまだ終わっていません。予想されていた通り、巨大通信会社が結託してこの規則を提訴、結論が出るまで数年かかりそうです。とはいえ、FCCはすでにISPがオープンインターネット規則に反している場合に通報するツールをリリースしているので、必要な時には声をあげることができます。

嬉しい事件その3 コムキャストとタイムワーナーケーブルの合併失敗

ただでさえインターネットがわずかな企業に独占されているのに、その企業がさらに減って、独占が進むなんてことはありえないことです。アメリカの嫌われ企業2大巨頭、コムキャストタイムワーナーケーブルの合併計画はまさにこれ。もし成功していたら、アメリカのブロードバンドの50%がこの巨大会社に支配されてしまうところでした。

FCCはこの合併計画を、消費者のベストなインターネットサービスを守るために却下しました。しかし巨大通信会社が力を得るために協力する動きは止まりません。5月にはベライゾンがAOLを買収。ISPとコンテンツプロバイダーを統合する、ネット中立性の原則を覆すような動きでした。

また、6月にはAT&TがDirecTVを買収、もうひとつの不必要な大規模統合になりました。この統合の後に何が起こるか語るのは早すぎるかもしれませんが、少なくともコムキャストとタイムワーナーケーブルの合併失敗は、巨大通信会社が大きくなりすぎるような統合は許されないという前例になるのではないでしょうか。

嬉しい事件その4 FCCがブロードバンドを再定義、補助金支出へ

お金持ちや都市部に住んでいる人は、Netflixが遅くても文句を言うことが簡単ですが、アメリカには高速インターネットを使うことができない何百万人もの人がいます。この問題を解決するため、FCCはブロードバンドの定義を25Mbps以上に見直し、その後にはブロードバンドに補助金を出す計画も承認しました。

このふたつの計画は、おもに人里離れた場所に住む低所得者に向けたものです。ブロードバンドを再定義することで、FCCは動画ストリーミングなどの重いサービスを利用するには遅すぎるインターネットサービスを「ブロードバンド」として売っているISPを取り締まることができます。また補助金は、自分で料金を支払えない人がブロードバンドサービスを利用できるよう、政府が支援するものになるでしょう。

農家の人を助けるために、ある一部の作物に補助金を出すよりも、すべての人を助けるためにインターネットに補助金を出すべきだと思いませんか。

嬉しい事件その5 スタートアップISPが戦い始めた

新しいISPを始めるのは簡単なことではありません。未来に渡って使えるギガ・インターネットの場合は特にそうでしょう。光回線を引くのはお金がかかるし、乗り越えなければいけない規制上のハードルも多い。巨大通信会社のロビイングの結果、アメリカの約半分の州ではなんと新しい会社がインターネットサービスを提供することを阻む法律があるんです。

しかしオバマ大統領は、ブロードバンド業界に競争が増えることによってすべての人を幸せにすると明言(コムキャストは反対するかもしれませんが)。そのため、今年のISP界でのスタートアップの急増は、とても喜ばしいものでした。小さな企業が地方自治体と協力し、高速なブロードバンドを低価格で提供し始めています。この分野でパイオニアのチャタヌーガのような町は、その動きに続こうとする都市を積極的に支援しています。

シリコンバレーの巨大企業もISP分野への進出を始めています。一番有名なグーグルファイバーは、今年も引き続きエリア拡大を行いました。今のところ、ベライゾンのような巨大通信会社は光インターネットの計画でひどく失敗しているのが現実です。そのため、小さな企業にもチャンスがあるように思います。

嬉しい事件その6 すべての動きは、始まったばかりだ

2015年がインターネットをよくするために何かできたのだとしたら、それらの取り組みを進めることは可能でしょう。高速ブロードバンドがアメリカ市民だけでなく、アメリカ経済にも重要となってきている現在、先進国の中で最悪のインターネットサービスを提供するなんてことはあってはならないことです。

アメリカはインターネットを発明しました。しょぼいインターネットを、世界最高のインターネットに変えられない理由はないでしょう。今年起きたいいできごとが、2016年、さらにウェブをよいものにしてくれることを祈ろうじゃありませんか。

GIF by Jim Cooke

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文

(conejo)