人肉食を妄想して警察のDBを不正閲覧した警官、無罪に

人肉食を妄想して警察のDBを不正閲覧した警官、無罪に 1

有害ではあっても、有罪ではない。

会社とか学校の誰かを「一発殴ってやりたい」と妄想するくらいは、多くの人が経験すると思います。「一発殴る」程度じゃなくてもっと激しい、あとから思えば罪悪感を抱くような妄想だってあるかもしれません。さらに、たとえば「誘拐したい」「殺したい」あわよくば「さらった人の肉を食べたい」みたいなレアな欲望を温めながらそっち系のネットコミュニティに参加してる人がいたら、それは犯罪になるんでしょうか?

あくまで妄想だけで実行に移していなければ罪ではないのか、それとも、妄想の中身によっては犯罪になってしまうのか、その点が問われる裁判が米国で行われました。当時ニューヨーク市の警察官だったGilberto Valle氏は一見普通の警官で、結婚して小さな子供もいました。が、彼にはネット上の人肉食フェチコミュニティに参加する裏の顔があり、自分の妻の写真もそこに流すなど活発に活動していたんです。さらに仕事上の立場を利用して、本来の目的以外で警察のデータベースにアクセスしてもいました。

彼は「女性の誘拐計画」、そしてデータベースの不正利用によって起訴されましたが、前者に関してはあくまで妄想だったとして一審で無罪となっていました。が、後者に関しても、それ自体では単に警察という職場のルールを破っただけであって、データベースの情報を使って良からぬ行為に及んだわけではありません。Valle氏はその点についても無罪を主張、検察は逆に誘拐計画の有罪を再度主張して控訴していました。

この事件でValle氏の無罪を主張し、法廷に意見書も提出した電子フロンティア財団は次のように書いています。

Gilberto Valle氏の事件は、報道機関から多くの関心を集めました。その理由は、ニューヨーク市の警察官であるValle氏が人肉食フェチサイトに書き込みをしており「人肉食警官」と呼ばれたことにあります。Valle氏はまた、法執行目的以外で警察のデータベースにアクセスして他人の情報を調べたことでコンピュータ犯罪取締法(CFAA)を侵害した罪にも問われています。

陪審はValle氏を両方の点で有罪としましたが、一審ではValle氏が誘拐を企んでいたとする評決が否定されました。判決では「政府が主張した1年近くに及ぶ誘拐計画では、誰も実際には誘拐されず、誘拐の試みもなく、現実世界でもインターネット上でも誰かを誘拐するために必要なステップは取られなかった」とあります。一審は結局、誘拐を計画したという理由でValle氏を有罪とすれば、思考犯罪で有罪扱いすることになると考えたのです。

ただし一審は、CFAAによる有罪判決は支持していました。そこで我々は控訴審に意見書を提出し、一審による危険な裁定を覆すことを求めました。我々は一審の裁定では数百万の無実の人から犯罪者を作り上げてしまうだろうと考え、二審はそれに同意したのです。彼らはValle氏のCFAAの有罪判決も否定し、他のふたつの連邦巡回区控訴裁判所と同様、政府が曖昧な言葉の連邦法規を拡大解釈する試みを拒否しました。彼らはこう言っています。「我々は検察による(CFAAの)解釈の採用を拒否する。それをすれば、普通のコンピューターユーザー数百万人の行為を犯罪扱いすることになるだろう。」

人肉フェチの警察官が警察のデータベースを眺めてたなんて想像すると怖いんですが、彼はあくまで人肉を食べたいと思っていただけであって、それを実行に移してはいないし、リアルな計画を立てていた証拠もないんです。またデータベースの目的外利用にしても、それは職場のコンピューター利用規程違反ではあるかもしれませんが、その中の住所を使って現実の誘拐計画を練っていたわけではありません。電子フロンティア財団ではそれを、職場のパソコンで「私用メールや野球のスコアをチェックするような、よくある無害な行為」と同じだと言っています。

ただし危険な妄想に関しては、高等裁判所のBarrington D. Parker判事が判決文書の中で次のように書いています。

これは、妄想が無害だということではない。むしろ、女性に対する暴力的な妄想は犯罪行為文化の兆候であり、それに貢献するものでもある。だが我々は、自由でまっとうな社会においては、すべての害悪が連邦犯罪として対処されるべきではないのを忘れてはならない。なぜなら、「妄想と意志の関係は、妄想だけを証拠とするには薄すぎる」からである。

ちょっとエスカレートしたら犯罪を犯しそう…と思うような人がいても、それだけでは罪に問えないってことですね。そしてその状態に対応する方法は法律ではなく、もっと別の何かだということなのでしょう。考えさせられる判決です。

Image by Hurst Photo/Shutterstock.

source: EFF

(miho)