みんなの「いいね!」がイスラム国と戦う鍵?

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ポジティブシンキングが世界を救う!…ってわけでもないんですよね。

ダボスで行なわれている世界経済フォーラムにおいて、フェイスブックの最高執行責任者、シェリル・サンドバーグ氏は、オンラインのヘイトグループに対抗する手段として、ポジティブ性と「いいね!」攻撃を挙げました。テック企業はどこも、米政府からテロリスト対策を行なうよう圧力をかけられているのは確かなのですが、それにしてもこれはちょっと…。

サンドバーグ氏が例として挙げたのはドイツのフェイスブックで行なわれているネオナチページへのキャンペーンで、ドイツのユーザーはそれらのページを「いいね!」し、普段なら差別主義的なことが書き込まれるページをポジティブなメッセージで埋め尽くしたのでした。「憎しみや不寛容に溢れたページが、寛容と希望のメッセージに変わったのです」とサンドバーグ氏

しかし、これがイスラム国と戦う手段というのはあまりバカげています。まず、集中的にメッセージを送る場所を特定するのが困難です。イスラム国はそもそも、「ジハード! 死ねアメリカ! 共に戦おう! ジハード!」と堂々とページに書いて戦士を募集しているわけではありません。イスラム国の戦士を募集している多くのコミュニティは表立って暴力的な表現はしていません。それにそもそもフェイスブックは、明らかにイスラム国に賛同するグループを禁止にするルールをすでに設けています。

まず、サンドバーグ氏はなぜこんな主張を始めたのでしょうか? それは彼女の世界観に基づいていると言えるかもしれません。フェイスブックを、今の恐るべき情報のゲートキーパーたらしめたのは「いいね!」の存在だと言っても過言ではありません。それくらい、確かに「いいね!」の力は強大です。時に人は、麻薬ボタンを押し続けるモルモットのように「いいね!」のもたらすポジティブなフィードバックのループを求め続けます。それに、オンライン上で人はお互いの考えを変えることができます。だからこそ私たちは、フェイスブックに存在するイスラム国の勧誘員を恐れるのです。

それでも、イスラム国のファンページで平和を訴えるコメントに「いいね!」をするのは、全米ライフル協会の集会で「銃反対…」と呟くようなものです。人の心はそれでは変えられないし、サンドバーグ氏の提案はあまりにお粗末です。想像してもみてください。イスラム国のページに「いいね!」し、名言集を大量に貼るだけでテロリズムが止められる光景を。ジハーディ・ジョンが、まともにスペリングも出来てないマリリン・モンローの名言を一目見て銃を置きますか? 勧誘された若いイスラム国戦闘員が、イスラム国のページがミニオンのインターネットミームで埋められているのを見て、「イスラム原理主義ってクールじゃないんだ!」と気づきますか?

例えば、勧誘される危険性のある人たちを対象に直接メッセージを送り、イスラム国が間違っていて暴力では何も解決しないと説得したりするような、対プロパガンダ専門の特設グループを結成するのは、可能性としてほぼあり得ないでしょうが、テロリズム対策としてはより意味があることでしょう。

また、「いいね!」攻撃だけでなく、イスラム国と戦う上で最も効果的なのは、元イスラム国メンバーに語ってもらうことだとサンドバーグ氏は言います。「イスラム国の勧誘に対して最も有効な声は、勧誘され、本当の体験がどんなものか理解し、そして脱出してきた人の真実の声です。憎しみを永続させる声には、それを退けるカウンターの声。これが最高の答えだと私たちは思います」

身につまされるような話を持った元イスラム国メンバーに、なぜイスラム国に参加するのが危険かを語ってもらう。これこそ確かな反プロパガンダキャンペーンです。だったら「いいね!」攻撃とかしょうもないこと言わないで、なぜこれを先に言わなかったのでしょうか? 多分、「恐ろしい体験をした人たちに、その恐ろしい体験を語ってもらいましょう」より、「いいね!」攻撃のほうが聞こえが良かったからでしょう。

対テロ対策で政府と協力しているテック企業はどれも厳しい立場に置かれているため、フェイスブックは効果的な手段を講じているように見せようと必死です。だから、テロリズムを禁止するなんて壮大だけど無意味なことを発表したりするのです。サンドバーグ氏の、こちらが動揺するほどに現実離れした提案は、フェイスブックがどれだけ積極的に取り組んでいるように見せたがっているかを如実に表しています。同時に、問題の現実と向き合う用意が全く出来ていないことも明らかにしてしまいました。勿論、対策しろと言ってすぐに出来る簡単な問題ではありませんが、もう少し本当に効果があると思わせる方法を提案してほしかったですね。

image: rvlsoft / Shutterstock.com

source: The Guardian

Kate Knibbs - Gizmodo US [原文]

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