このマイクロユニット住宅でニューヨークの住宅難は解決するかも...?

2016.01.30 08:00
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時代はミニマムな暮らしへ。

住宅不足を解消すべく、全米各地で400平方フィート(37.2平米)以下のアパート、いわゆるマイクロユニット住宅が開発されつつあります。昨年末には、ニューヨークに初のマイクロユニット住宅がオープンしました。

マンハッタンにオープンしたのはOllie at Carmel Placeというマイクロユニット住宅。市内に手頃な価格の住宅を8万戸建てようという計画を後押ししているのはビル・デブラシオ市長ですが、もともとこういったタイプの住宅を推し進めたのは前市長のマイケル・ブルームバーグ氏でした。同氏は2012年にマイクロユニット住宅のデザインコンペを主催しています。そこで優勝したのがこの55戸のアパートで、ブルックリンを拠点に活躍するMonadnockがデザインし、お金とエネルギーを節約するためにブルックリンの工場でプレハブ式に組み立てられました。

そして時は流れて、昨年末。米Gizmodoは、閑静なミッド・マンハッタンのキップス・ベイに建つOllie at Carmel Placeを見学することに。Ollieのデザイン・ディレクターJacqueline Schmidt氏とともに見学した住居は302平方フィート(約28.1平米)でしたが、高い天井に輝かんばかりの新しい設備、そして白の木材で統一された室内は広く感じられました。各戸には1つ2役を果たす作り付けの家具やカスタマイズされた家具が備わっており、居住者が生活空間をより広く、使い勝手が良いと感じられるような工夫がされています。さらには、ペットの散歩やクリーニングといった雑用のためのヴァーチャル・コンシェルジュのようなサービスHello Alfredをどの住民もタダで使えるという特典付き。なお、家賃は月2,000~3,000ドル(約24~35万円)とのこと。

しかし市内には、それよりも高額な家賃を払って、そこよりもずっと狭いアパートに住んでいる人もいます。かつてのニューヨークでは、そんな靴箱ほどの広さの狭小アパートが建設されていましたが、ゾーニングによって1戸あたりの広さは最低400平方フィート(約37.2平米)と規制されて以来、そういった狭小アパートが建設できなくなりました。しかし、Ollieのような地元にもっと手頃な価格の住宅を増やそうという試みは特別に免除されているのです。(シアトルのように90平方フィートの狭小住宅を認めている都市もあります)

さらに言うなら、キップス・ベイでワンルームの家賃が2,500~3,000ドルというのはお手頃とは言えません。それが市場価格である(マンハッタンでのワンルームの家賃の平均がこのくらい)というだけです。Ollie at Carmel Place の22戸については収入などに基づいた異なるレートの家賃になるため、実際は1,000~1,500ドル(12〜18万円)の間になるとか。入居予定者の抽選にはなんと6万人が申し込んだそうですよ。 

つまり、こういったマイクロユニット住宅の需要があるのは明らかです。しかし、都市が建設すべき新たな住居の形としてこれが正解なのかどうかという、疑問が浮かびます。長い目でみればこの計画のほうが、また別の大規模開発をスプロール化寸前へと追いやり、住民に車での通勤を強いるよりもずっと責任重大でしょう。そして、こういった狭小住宅が新たなスラム街と化してしまわないかという懸念もあります。居住者のほとんどが住む場所の選択肢をあまり持たない低所得者なら、格差問題の成層化を進めてしまうということです。例えばロサンゼルスのような都市だと、マイクロユニット住宅の多くは今も元ホームレスが社会復帰するための住まいとして使われているそうです。 

大都市だけでなく田舎に暮らす人々のなかには、タイニー・ハウス・ムーブメントのように、小さな空間で暮らすことに憧れている人もいます。そういった人たちなら、このような住宅にはワクワクするでしょうね。そしてOllieのような洗練されたインテリア・デザインの力を借りれば、それまでマイクロユニット住宅など眼中になかった人たちも魅力を感じるようになるかもしれません。例えば、ベビー・ブーム世代に生まれて広い住宅からサイズを落としたい人や、通勤するに苦労くらいなら職場の近所に住むほうを選ぶミレニアル世代といったピッタリな人にとっては、これは理想的な生活環境といえそうです。 

私たちに覚悟ができているかどうかは別として、大事なのはこれが未来の住宅の形だと認めることです。あと数十年で世界中の多くの人が都会的なライフスタイルを送ることになるでしょう。しかし、都市の構造の一部として既にマイクロユニット住宅を建設している国々に対して、米国は大きな遅れをとっています。全米各地の都市はその現実を受け入れ、その地域に暮らしたい人が手頃な価格の住宅を見つけられるように今から備えるべきです。受け入れがたい人もいるかもしれませんが、「小さく暮らす」というのは避けられない現実なのです。


Alissa Walker - Gizmodo US[原文
(たもり)

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