ディズニーは、遂にピクサーに肩を並べた

2016.02.22 20:40
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

160219_disneypixar01.jpg


黄金期を取り戻せるか?

15年程前、ピクサーが登場して名作を連発していた期間は、ディズニーにとっては混迷の時期でした。その後もピクサーが快進撃を続ける中、負けじとディズニーも3D部門を立ち上げましたが、初めての事には何でも障害が付き物。それ以降の作品もしばらくはあまりパッとしませんでした。しかし、「塔の上のラプンツェル」辺りを境に素晴らしい作品を多く輩出し始めました。米Gizmodo io9のGermain Lussier記者は、「ズートピア」の登場により、遂にディズニーはピクサーと肩を並べたと主張しています。


* * *


もう何年も、ピクサーは親会社であるディズニーの評価を高めてきました。一方で、ディズニー自身のアニメーションスタジオは苦境に立たされてきました。ウォルト・ディズニーの名を冠するには力不足の作品ばかりを輩出していたからです。

もちろん殆どのお茶の間の皆さんは、そもそもピクサーが別の会社であり、ディズニーは配給をしていたにすぎない事を知らないでしょう。ディズニーはピクサーの映画作りにはほぼ関わりが無かったのですが、それはお互いにとっても視聴者にとってもウィン・ウィンな関係でした。ピクサーが素晴らしい映画を作り、ディズニーがそれを公開する。そしてそれによって、どちらの評価もあがったのです。

ところが、ディズニーはピクサー製のヒットを公開しながら、ディズニー・アニメーション―映画史上屈指のフィルモグラフィーを持つ企業の支社―で製作した、自身の作品もリリースしていました。しかし、そこから出る映画は、残念ながらどれもピクサーに太刀打ちできるものではありませんでした。結果、ピクサーはディズニー・アニメーションの顔となり続けていました。…今までは。

時間も、労力も、血も、汗も、涙も、途方もない量を必要としましたが、「アナと雪の女王」や「ベイマックス」、そして来月(日本では4月)公開の「ズートピア」等の映画により、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオは前代未聞の快挙を成し遂げました。かつての栄光を取り戻し、ピクサーと共にトップの座につく事ができたのです。


160219_disneypixar02.jpg


ウォルト・ディズニー・フィーチャー・アニメーションは、1937年の「白雪姫」で一躍有名になりました。当時は、初の長編アニメーションという事もあり、白雪姫は革新的でした。その後の30年、ディズニー・アニメーションは頂点を極め続ける事になります。白雪姫の後は「ピノキオ」、「ファンタジア」、「ダンボ」に「バンビ」と続き、その後も「わんわん物語」、「ピーターパン」、「眠れる森の美女」、「101匹わんちゃん」、「ジャングル・ブック」…まだまだあります。とにかく、黄金期という言葉でも足りないくらいの連勝だったのです。

それら多くの映画にも直接関わったウォルト・ディズニーは、1966年にこの世を去ります。その他にもあらゆる要因が重なり、ディズニーは1970年代に大きな下降を経験しますが、80年代から90年代にはカムバックを果たし、「美女と野獣」、「リトル・マーメイド」、「アラジン」、「ライオンキング」等のヒットを飛ばします。

そして1995年、ピクサーが「トイ・ストーリー」を発表し、全てを変えてしまいました。ピクサーは新しい映画の作り方を提案しました。それは単に3DCGを使うというだけではなく、ストーリー作りを委員会形式にしたという事です。才能のあるフィルムメーカー達が結集して一つの「頭脳委員会」となり、映画の全ての側面を徹底的に磨き、過剰なまでの品質管理を行う方法です。一人や二人の作家の才能に頼るのではなく、時には10人以上の才能を集めて作り上げ、しかもモダンで、エキサイティングで、全く新しい映像媒体を使ったピクサーの映画は軽々とディズニーを飛び越え、世界の心を掴んだのです。


160219_disneypixar03.jpg


ピクサーの初の映画から20年。ピクサーはディズニー・アニメーションの黄金期にも劣らない作品リストを持っています。出す映画が次から次に大ヒットし、決定的な失敗作はほんの2、3作で、経済的な障害も一度あった程度です。一方、ディズニーの制作手法はほぼ絶滅状態でした。

「ターザン」、「ラマになった王様」、「リロ・アンド・スティッチ」、「ブラザー・ベア」等は評価も売り上げもそこそこでしたが、同時期にリリースされたピクサーの映画に比べると明らかに見劣りします(「モンスターズ・インク」、「ファインディング・ニモ」、「Mr.インクレディブル」、「カーズ」、「レミーのおいしいレストラン」、「ウォーリー」、「カールじいさんの空飛ぶ家」)アカデミー賞は長編アニメ映画賞を2001年に作り、ピクサーは7回受賞しました。一方、ディズニーは0でした。

そこで登場したのがジョン・ラセターエドウィン・キャットムルです。2006年、ディズニーはピクサーを買収し、ピクサーで「頭脳委員会」方式を作り出した二人に、同じ事をディズニーでも行うよう雇ったのです。数年かかりましたが、着実に状況は変わっていきました。まずは「ボルト」、「プリンセスと魔法のキス」、「塔の上のラプンツェル」、「シュガーラッシュ」、「ベイマックス」、そして勿論、未だにアニメーション映画で興行収入トップを誇る「アナと雪の女王」。また、「アナ雪」はディズニー・アニメーション初のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞。この功績は、翌年「ベイマックス」で繰り返される事になります。


160219_disneypixar04.jpg


ここで私が言いたいのは、状況は今も上向く一方だという事です。2月第2週目、私は幸運にもディズニーの最新作、「ズートピア」の先行上映に参加できました。皆さんも予告はご覧になったかと思います。予告を皆さんが楽しんだかどうかは分かりませんが、決定的な事実を本編で突きつけられるでしょう。この映画は、過去20年のディズニー作品の中でも最高の作品です。ええ、「ポカホンタス」や「ベイマックス」、「シュガーラッシュ」や「アナと雪の女王」よりもだと言っているのです(まぁ、「アナ雪」程の社会現象にはならないでしょうが、それでも作品としては上です)。

ズートピアはテンポが良く、スマートで、笑えて、素晴らしいキャラクター達と、映画史上屈指のリアルなCG映像を観る事ができます。そして、テーマがこれ以上なくタイムリーなのです。この映画の根底のテーマは、偏見と、特定の種族が大多数を占める社会の搾取です。劇中、動物たちは捕食者、被食者に関わらず共存していますが、お互いを種族によって偏見の目で見ています。中にはマイノリティを一掃すべきだという者までいますが、それらは「ずる賢い」キツネと「かわいい」ウサギの主人公たちが乗り越えなければならない障害のほんの一部です。二人は最初、互いを嫌い合い、色眼鏡で見ていますが、お互いの表面よりもっと奥まで見る事を学びます。ディズニーの映画はほとんど何かしらのメッセージが込められていますが、今の社会情勢を見ると、この映画のメッセージはより即時性があり、今までの映画以上の複雑なニュアンスで伝えられています。


160219_disneypixar05.jpg


そういったタイムリーなメッセージを持つ事は、「ズートピア」に胸に突き刺さるような痛切さを与えています。そしてその痛切さは、この映画の素晴らしい娯楽性によって支えられています。この映画はピクサーに匹敵するだけでなく、ピクサーの最新作、「アーロと少年より遥かに優れています。では、ピクサーの最高作品と比べたらどうでしょう? 「インサイド・ヘッド」や「トイ・ストーリー」よりも優れているのか?と問われるなら、恐らくノーでしょう。しかし、「シュガーラッシュ」や「アナ雪」、「ベイマックス」等と同じく、ピクサーのベストと比較されるに値する作品である事は間違いありません。

しかし、これからもディズニーが躍進し、ピクサーを超えられるかどうかには、他にもあらゆるファクターが絡んできます。ディズニーもピクサーも、今や全く同じ制作方法で映画を作り、スタッフも重なっています。なので、クオリティが近づくのは当然と言えるでしょう。しかも、ピクサーは過去作が大成功だったため、これから続編ラッシュが待っています(「モンスターズ・ユニバーシティ」が既に出ましたが、今後「ファインディング・ドリー」、「カーズ3」、「トイ・ストーリー4」、更に「Mr.インクレディブル2」も控えています)一方でディズニーは、過去の作品がパッとしなかったので、フランチャイズ展開を期待している作品やスタンドアロンの新作を多く制作しています。一般的に、続編は新作に劣るというのが常識です。とは言え、ピクサーの続編は大体の場合ハリウッド基準を遥かに超えるし、ディズニーの「新作」は大抵原作付きですが。それに、ディズニー自身も続編が無いわけではないし(「アナ雪2」とか)、逆にピクサーは去年新作を2つ公開し、一つはアカデミー賞候補に選ばれています。

ご覧の通り不確定要素だらけですが、一つだけ確かな事があります。ピクサーがアニメーション映画界を完全に制覇する中、ディズニーが「トレジャー・プラネット」や「ホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え!」等を制作していた時期は終わり、状況は大きく変わりました。ディズニーは、ピクサーが高く引き上げたクオリティのハードルに届いただけでなく、創業者、ウォルト・ディズニーのハードルをも越えようとしているのです。


Germain Lussier - Gizmodo io9[原文
(scheme_a)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
・関連メディア