お金持ちはなぜ悪事を働くのか、新たな研究で明らかに

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競争に勝つことで、欲が深まる。

悲しいことに、お金持ちで成功していてパワフルな人ほど、ズルしたりウソをついたり、なんというか信頼できない感じだったりします。ダークサイドに落ちないと、上には行けないってことなんでしょうか? でもある研究によれば、むしろ逆のようです。つまり、競争に勝つことによって、倫理感より自分の利益を優先させるようになってしまうんだそうです。

米国科学アカデミー紀要(PNAS)で、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学とエルサレム・ヘブライ大学の研究チームが、そんな残念な研究結果を発表しました。

彼らが行った実験は2段階のゲーム形式で、まず1段階目で被験者を勝者と敗者の半々に分けます。そして2段階目では被験者にサイコロを振らせ、出た目にもとづいてお金をごほうびとして与えました。ただそのとき、どんな目が出たかは被験者にしかわからないようにしたのがミソです。つまり被験者は、サイコロの目を多めに申告して本来より多い金額を受け取ることもできたんです。

2段階目が終了した後、1段階目で勝者となった人と敗者となった人の申告したサイコロの目を比較したところ、勝者にはサイコロの目を多めにごまかして申告する傾向がはっきりと見られたんです。

ゲームは1段階目・2段階目ともに、ふたりがペアになる形式でした。1段階目では、被験者はコンピューター画面で図形の集合を見て、どんな図形が一番多く表示され、図形が全部で何個表示されたかを答えました。そしてペアのうち、回答が実際の数に近いほうが「勝ち」となり、イヤフォンがもらえました。ちょっと変わった実験ですが、要は偶然によって勝敗が決まり、この段階で勝敗が知らされることがポイントです。

2段階目では新たなペアが組まれ、今度はサイコロを振ってその目にしたがって合計12シケル(約360円)のお金を分け合うゲームが行われました。ペアのうちひとりが、つぼ振りの要領でサイコロ2個を転がし、7(一番出やすい目)を出せばお金の半分を、それより多い目を出せばより多くの金額を受け取ります。そしてペアの相手は、残ったお金をもらえます。ポイントは、どんな目が出たか確認できるのはサイコロを振った人だけで、ペアの相手にも研究チームにも見えないようになっていたことです。つまりサイコロを振る人は、目を多めに申告することで、相方の取り分を自分の取り分に回すことができたんです。

ただし研究チームでは、個々のプレイヤーによる不正を見ぬくことはできなくても、サイコロを振った人が申告した目の合計値は把握できました。また実験参加者は86人と十分な数だったので、たまたま多い目や少ない目が出るのは当然としても、サイコロの目の平均値が7前後になることもわかっていました。さらに、サイコロの目の平均値を1段階目の勝者と敗者に分けて見ることもできました。

そこで彼らは、勝者が申告した目と敗者が申告した目それぞれの平均値を出しました。すると、勝者による平均値は8.75と、予測される7前後より明らかに高かったんです。一方敗者が出した平均値は6.35と、7より低い値ではあるのですが、統計的には異常でない範囲でした。つまり勝者が目を高く申告する傾向がはっきりわかったんです。

研究チームではさらに別のグループに対しても同様の2段階の実験を行いました。あるグループには「競争に勝ったときを思い出す」ように、そしてもう一方のグループには「個人的な目標を達成したときを思い出す」ようにと指示してから、サイコロのゲームをしたんです。その結果、勝った経験を思い出したグループのサイコロの目の申告値は8.89と、やはり統計的有意に高い値が出ました。一方個人的な目標達成を思い出したグループの値は7.16と、予測される7前後の範囲内でした。つまり単に「成功した記憶」では不正の傾向が確認できなかったのに、「誰かに勝った記憶」では明らかに不正が起きていたということです。

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どうやら競争に勝つことが不正を招いているらしいということで、研究チームでは、仮説を裏付けるための簡単な実験も行いました。ある集団に、競争に勝ったとき、または個人的な目標を達成したときを思い出させ、その後権利意識の強さを判定する調査に回答させたのです。その結果、勝った体験を思い出した場合は、個人的目標達成を思い出した場合より強い権利意識が見られました。そこで研究チームでは、少なくとも分析上は、勝つことと権利意識は結びついている可能性が高いという結論に至りました。彼らは論文にこう記しています。

経済成長や技術の進歩、富の創造、社会的流動性、より大きな平等を発展させるために、競争が重要なのは当然である。だが一方で、競争が批難すべき行為を誘発している側面を認識することも非常に重要である。我々の発見が示すように、勝者が不道徳な行為をする傾向がより強いことは、社会の格差を緩和するよりも増大させ、社会的流動性や平等を妨げる可能性が高い。

つまり、成功してる人はズルい手段でますます得をして、そうじゃない人は損をする、って傾向があるんですねぇ…。その傾向が、ズルをしてもせいぜい100円、200円しか違わない実験で明らかになってしまったというのもまた驚きです。

source: PNAS

Esther Inglis-Arkell-Gizmodo US[原文

(miho)