薬物の乱用を防げるか。「デザイナードラッグ」の効果を無にするワクチンが開発

薬物の乱用を防げるか。「デザイナードラッグ」の効果を無にするワクチンが開発 1

いずれ、欧米の高校か大学の入学前に義務付けられたりして…。

スクリプス研究所の科学者たちは、研究ジャーナル「Angewandte Chemie」に、とある特殊なワクチンの実験結果をまとめました。これはウィルスから身を守るものではありません。代わりに、デザイナードラッグ効果を遮断してくれるのです。デザイナードラッグとは、違法とされる薬物の分子構造を組変えることで、現行法では対処できなくなっている薬物のこと。そのベースとして一般的に使用されているのが、フェンタニルという薬品です。

フェンタニルはオピオイド性鎮痛薬で、血管を伝って脳に渡り、オピオイド受容体と結合します。直後は沈痛作用がありますが、フェンタニルは脳のドーパミン濃度をあげる作用もあるので、多幸感を引き起こします。それ故、フェンタニルは違法ドラッグの効果を高めるために混入される事が頻繁にあり、そしてそれは同時に、過剰摂取による死亡の可能性も高めてしまいます。そのポピュラーさが原因でフェンタニルには派生種が数多く存在しますが、この新しいワクチンはその全てに対応できるかも知れないそうです。

ワクチンは構造がフェンタニルに非常に似た分子を持っており、体内の免疫がそれを攻撃するよう仕向けます。結果、免疫はフェンタニルとその派生種を外敵と認識するようになり、それらが血流に侵入した直後に抗体が結合し、脳への侵入を防ぐのです。ドラッグが脳に達しなければ、ハイは起こりません。ワクチンは選択的なようで、フェンタニル系のドラッグは防げるものの、同じくオピオイド性鎮痛薬で麻薬としても知られるオキシコドンには無反応だったそうです。という事は、ワクチンを接種してもオキシコドンの乱用は止められませんが、同時に鎮痛薬として必要な際の手段も残されているという意味でもあります。

ワクチンは、ハイを防止する事でそもそもフェンタニル系のドラッグを買わないようにさせ、過剰摂取を防ぐのが目的です。しかし、ドラッグを求める人間の思考は時に、「ハイを得られなければ、もっと摂取すればいい」となってしまいます。それでは結局過剰摂取してしまうのではないか、というのはもっともな懸念です。

しかしこのワクチンの場合、ドラッグが脳に達するのを防ぐ抗体は、同時に致死量の過剰摂取も防げるそうです。論文の共同執筆者である君嶋 敦氏は、「私たちの知る限り、これはドラッグの致死量の摂取を防げる初のワクチンです」と語っています。

研究者たちは、ワクチンの効果を広げ、いずれはヘロインの効果も防げるようにしたいそうです。米Gizmodoへのコメントには、中毒の人は他の手段を探すだけなので、より根本的な中毒に対するセラピーが必要な事は変わらないという主張もあります。確かにそうですが、ドラッグの経験が無い人なら、これを接種する事でより深くドラッグにハマる前に未然に防げるかも知れません。それだけでもこの研究には非常に大きな価値があるのではないでしょうか。

source: Angewandte Chemie, EurekAlert

Esther Inglis-Arkeil - Gizmodo US [原文]

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