バイオニック・ヒアリングとやらを試してみた

160204Here_a.jpg

ライブこれで聴くと面白いよ。

アクティブリスニングシステム「Here」は一見ただのインナーイヤー型イヤホン。初期版を数日試してみたんですけど、「聴きたい音だけ聴きたいように聴ける」世界のポテンシャルは想像以上かもしれません。

このHereの中にはプロセッサが入ってて、外の音をちっちゃなマイクで拾って、リアルタイムで変換して耳に送り込んでくれるんです。変換方式はスマホのアプリで設定が可能

目立たなくて、快適に装着できます。1回だけ薄暗いバーで落っことしたときには、スマホで照らして5分ぐらい探しましたけどね。

160204Here_b.jpg

製造元のDoppler Labsによると、用途は主にライブ用です。高級な耳栓と呼ぶのが近いかな。同社はファッション指向の耳栓で始まった会社ですし。

160204Here_c.jpg

ライブで耳栓すると、音楽聴こえなくて、なんのためにここ来たんだろうって思っちゃいますよね。まあ、使ってますけど。ヘビメタで鼓膜破れたら困るんで。

ボクみたいな人が多いのかHereの1番の基本機能はボリューム調整です。周りの音の大きさを22dBぶん減らせます。増やすほうは6dBぶん。うるさい奴のそばにいるときは、これでこっそりボリュームを下げればストレスも減る、というわけですね。

160204Here_d.jpg

音量調整だけならただの耳栓と変わりませんが、Hereはアプリで外界の音をさらに変化させることもできます。たとえばライブを聴いているときはイコライザーとしても使えるんです! 5つの周波数のバンド(周波数帯)を180Hz~6.8kHzでコントロールできます。これは人間の耳にとって1番よく聴こえる周波数帯で、だいたいの音楽はこのバンドになるのだとか(たとえばトランペットの音は170Hz~1kHz)。

この5バンドのイコライザーは本当に素早く遊べます。飲み屋のフォークバンドの生演奏で試してみたんですけど、いい感じにミックスできました。ボクは素人なんで、ドラムやオルガンの音が何Hzかなんて想像もつかなくて、全部当てずっぽうですが。アプリに大体の目安が表示されれば助かるんだけどなあ。

160204Here_e.jpg

イコライザー以外にも、予め設定されたフィルターも用意されています。これは「Tune In」と「Tune Out」というカテゴリに分かれていて、「Tune In」はいろんな場所のサウンドを再現できるやつ。カーネギーホールとか、アビーロード・スタジオとか、一般のスタジアムとか。これはあんまりよくなかったです。小さなスタジオのはよかったけど、ほかのはなんか人工的な感じがして。

「Tune-Out」(ベータ版)は聴きたくない音を消すフィルター群です。うるさいカフェ、人混み、飛行機の機内、地下鉄などシチュエーション別になってます。こっちは使っても、ほとんど違いがわからないときもありました。飛行機は乗る機会なかったので試せなかったけど、地下鉄で試してみたら車輪の軋む音は普通に聞こえました。逆に言うと、ノイズキャンセリングヘッドホンみたいな「完璧な静寂」とは違って、外界の音は聴こえるんだけど、音の加減が調整できるってことですね。街を歩くときとかは、聞こえないと危ないもんね。

160204Here_f.jpg

ボリューム調整、フィルターときて、最後はこれ、エフェクトです。音楽制作ソフトみたいに周りの音にエコー、フランジ、ファズなんかのエフェクトをかけられるんです。これはほんと、トリッピー&クレイジーでした。一般ユーザー向けではなく、そういう音を求める「クリエイティブ」系の人がターゲットだと、Doppler Labs社のFritz Lanmanさんも話してましたよ。

こうして使ってみると、ライブ試聴以上の可能性が秘められてます。「試作車を一般道で走らせて、インイヤー・コンピューティングの世界を広めてるってなとこですね」とLanmanさん。

発売は随分ゆっくりペースです。去年Kickstarterでクラウドファンドに協力してくれた人たちに来年配る予定とのこと。あとはコーチェラス音楽祭で売るぐらいで、今のこれは市販では入手できません。発売の頃には、もっと改善を重ねたものが出そうですよ。

まだまだインイヤー・コンピューティングは未開拓の分野で、近いのはモトローラ「Hint」ですけど、あれはBluetoothのイアピースで、市販化もされませんでした。インイヤー・コンピューティングはもっと広範なものです。たとえばLanmanさんが考えているのは、Hereをリアルタイムの同時通訳に使うような世界

160204Here_g.jpg

ただ、それを実現するには問題が2つあるとLanmanさんは言ってますよ。1つ目はAIが今のかたちではまだまだ不十分なこと、2つ目は音声コマンドのアシスタントシステム(SiriやCortanaなど)に命じつけてる姿が傍目には奇異に見えること。なるほど。

仮にこれがインイヤー・コンピューティングの草分けだとして(AT&S×Soundchip×STが共同開発のもありますが)、買うのかって聞かれると、さて、どうでしょうね? 使って人生変わることは確か。でも今の段階では開眼というより、ちょっとドラッグに似てますね。ハイになって、いろんなクレイジーなエフェクトで世界を楽しみたい気持ちはあるのですけど、ならばその受け身のバイオニック・ヒアリング状態で四六時中外出したいかと言われると、そうは思わない。ボクは「Tune Out」するより、ありのままの音で満足かも。

Mario Aguilar - Gizmodo US[原文

(satomi)