ラットの脳をサイボーグ化したら、コンピュータより賢くなった

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生物の知とコンピュータの知を融合。

中国で、普通のラットより、またはコンピュータよりも迷路を早く抜け出せる「サイボーグ・ラット」が生み出されました。ラットという生き物の知とコンピュータの知を統合することで、サイボーグ・インテリジェンスの可能性が開かれました。

コンピュータと動物の脳には、それぞれ得手不得手があります。コンピュータは数字を処理したり、あらかじめ決められた手順を高速で片付けるのが得意です。一方脳は、ネズミのものでも人間のものでも、もっと曖昧な問題解決、特に新しい環境や文脈に合わせた対応に適しています。サイボーグ・インテリジェンスの目的は、これらふたつのインテリジェンスのあり方を統合することです。

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Image: Y. Yu et al., 2016/PLOS One

中国・浙江大学のGang Pan教授の率いるチームはラット6匹を使い、それぞれ違った14種類の迷路を通り抜けるよう訓練しました。各ラットには小さな電極が脳のふたつの部分に、体性感覚皮質(触覚と位置感覚をつかさどる部分)と内側前脳束(報酬系を構成する部分)に埋め込んであります。その電極を通じて、コンピュータから電気刺激が送られました。

ラットはピーナツバターの匂いをかいで、迷路のゴールまで誘導されます。14種類の迷路には、坂道やトンネル、階段など複雑な要素をふくむものもありました。研究チームはラットが通る道や使った方法、所要時間などを記録します。並行して彼らは、14種類の迷路それぞれを解決するアルゴリズムを開発しました。

その際研究チームでは、迷路の中を誘導するためにラットの左右の体性感覚皮質を刺激しました。ラットは全体的には自力で動かされていたのですが、補助が必要になったらアルゴリズムが作動することになっていました。状況によって、コンピュータがラットに対し、左または右に動くよう刺激を与えます。といってもコンピュータがラットをコントロールしていたわけではなく、方向感覚や動き方を改善するヒントを与えていたのです。これによって、ラットたちは見たことのない道でも、ためらうことなく行き来できるようになり、行き止まりやループも回避できました。

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Image: Y. Yu et al., 2016/PLOS One

その結果ラットたちは、コンピュータからの刺激を受けた方が迷路のタスクをより良く解決できるようになりました。普通のラットとコンピュータは、タスク完了までに同じくらいのステップが必要でしたが、サイボーグ・ラットはより少ないステップで済みました。またサイボーグ・ラットは迷路脱出にかかる時間も少なく、通る地点も少なくて済みました。それに階段など見慣れない要素に出会ったときも、より柔軟に対応でき、つまり予想外の問題を本能と生来の知で解く力も持っていました。実験の詳細は、PLOS Oneで公開されています。

こんな知性の融合を人間で実現できるまでには、時間がかかることでしょう。安全性とか有効性、プライバシーの問題などについて慎重に検討する必要がありそうです。でも機械が人間を超えつつある今、その力を人間の知と合体させない手はありません。

1997年、チェスチャンピオンのガルリ・カスパロフ氏がIBMのディープ・ブルーに歴史的敗北を喫しました。これは「人類の敗北」とも見なされましたが、ここからカスパロフ氏は「アドバンスト・チェス」という新たなチェスを編み出しました。そこでは、プレイヤーは補助的にコンピュータを使うことができます。20年ほど経った今、それは人間のみ、コンピュータのみのチェスよりチャレンジングで面白いとされています。また米国軍では「ケンタウルス・チーム」として、人間と自動兵器を組み合わせる取り組みを進めています。

コンピュータの知と人間の知は、これからより密接につながっていきそうです。Pan氏がラットで試したようなシステムが人間に使われ、人間の脳にワイヤレスチップが埋め込まれるとき、人間もついに、サイボーグになっていくことでしょう。

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Top Image: Shutterstock

source: PLOS ONE

George Dvorsky-Gizmodo US[原文

(miho)