胸をえぐる「フェイスマッピング」と終活ノート。amazarashiの衝撃MVクリエイターたちがギズだけに制作秘話を語ったよ

2016.03.09 18:00
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すでにご覧になったでしょうか?

素顔を見せない日本人ロックバンド「amazarashi」。その代わりに、3Dアニメからモーションキャプチャまであらゆるデジタル技術で、世界観溢れる何度も見てしまうミュージックビデオを公開することでしられ、YouTubeのチャンネル合計3000万回再生と、世界的な話題を集めています。

2月24日(水)にリリースした最新アルバム「世界収束二一一六」と合わせて、突如公開された最新MV「エンディングテーマ」は、これまで公開されてきたamazarashiのMVの中でも、見ているだけで悲しさ孤独さが最大級に溢れてくるストーリーに仕上がっていました。


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このSF的なMVをさらに特別に演出しているのが、フェイス・マッピング技術! amazarashiの中心人物の秋田ひろむさんが歌う顔に直接マッピングして、動く口にまでもリアルタイムにビジュアルを完全にシンクロさせて、変形していく映像アート作品を作るという、世界でも初めてのチャレンジなのです。

ギズモード編集部は、幸運にもこのMV撮影の現場に潜入させていただきました。顔の上だけじゃなく、歌を歌い開いて動く口にまでもマッピングを重ねてさせていく撮影技術。これ凄い! どうなっているんでしょうか?


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世界初めての技術を目の前にしてビックリ。この撮影方法がどうなっているのか、「エンディングテーマ」MVを制作された3人のクリエイターの皆さんが、ギズモードへ特別に語っていただきました。

今回のMVは、クリエイティブディレクターには、これまでのamazarashiの「穴を掘っている」や「季節は次々死んでいく」MV制作に関わってきた「SIX」の本山敬一さん、テクニカルディレクターにはWOWの映像クリエイター浅井宣通さん、映像ディレクターとして「P.I.C.S.」の橋本大祐さんの三人が制作に名を連ねます。


クリエイティブディレクター 本山敬一さん(SIX)


MVのクリエイティブディレクションを担当したSIXの本山敬一さん。以前からamazarashiのMV制作に関わってきたクリエイターとして、世界観やストーリー設定についていろいろ語っていただきました。


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まずMVの舞台になっている集中治療室のような世界観と時代背景について聞いてみました。ディストピア的な独特の世界観は、アルバムタイトル「世界収束二一一六」や収録曲「多数決」「百年経ったら」でも示唆される今から100年後の未来、つまりは2116年に設定されたとのこと。

「世界収束二一一六」は世界の終わりを描いているアルバム。「エンディングテーマ」が秋田さん本人が自分の死を妄想している曲。なので、MVの設定はこの2つを足して、「人類最後の人」が死んでいく様を描いているストーリーになっているそうです。


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MVで壁に映し出す映像の中で、大勢の人が言葉を書いているのは、エンディングノート。死にゆく存在としての自分を意識して、未来へ向けてメッセージを残す終活ノートです。秋田さん本人はもちろん、漫画家の石田スイさんやSF作家の宮内悠介さんをはじめ実在の30人近い人がノートに言葉を書いています。歌詞とリンクした質問に答えていく彼らの言葉を通じて、生きる意味とは何かを観る人にも問い直す構成になっています。

「エンディングテーマ」を歌った秋田さんの気持ちを追体験できるように、ノートの販売を前提で企画は進み、撮影時にはもう完成していた、そうです。

気になるフェイスマッピングを使った理由については、「秋田さん本人が歌う姿を見せて、感情をダイレクトに伝えたい」が、「本人は顔出しNG」という困難な課題をクリアするために、フェイスマッピング技術を選択したそうです。

勿論、フェイスマッピングによって加工され顔は隠れるため、感情が100%伝わることはなくなりますが、浅井さんの新技術で、本人の表情までトラッキング出来たので、歌う秋田さんの顔から感情が伝わったのではないかと思います。


SF的な設定にしているわりに、最後に舞台裏が見えたり、途中マッピングが微妙にズレるテイクをあえて使用しているのも、あくまでこれはマッピングであり、このテクスチャの下で歌っているのは秋田さん本人なんだ、その魂を感じてもらうためです


そしてMVでは秋田さんがアンドロイドの素顔に"露出"していく姿が描かれていました。本山さんは、amazarashiの「古いSF映画」という崩壊直前の世界を描いた楽曲の中で、「ブレードランナー」のように「主役が実はアンドロイドだった」という歌詞をヒントに、死にゆく男が死ぬ寸前、生命維持装置が切れて、アンドロイドの骨格がむき出しになって死んでいく展開を考えたそうです。

ちなみに


極度に劣化した老人がベッドに横たわっているというイメージは、SF映画「ミスター・ノーバディ」からインスパイアされました

と映像のイメージについても教えて下さいました。



でも、顔にマッピングするだけでなく、あえて口元までシンクロした完全フェイスマッピングは、技術的にも映像的にもリスクと隣合わせだったと思いますが、それでもトライした理由はなんだったのでしょうか? その理由を本山さんは「秋田さんが自身の死をイメージして歌った歌なので、本人が歌う様を映すことによって感情の伝達効率をあげたかった」と説明してくれました。

「ミュージシャンが歌うときの表情ってのは、感情伝達率が高く人の心を動かすことができると思っています。フェイスマッピングで、顔は完全に隠れているのだけれど、下地には秋田さんがいる。本人が歌っている表情を感情がほんの少しだけ溢れ出てくる。見ている人は、それを感じてグッとくる。そんなギリギリの表現を狙いました」(本山さん)

本山さんが今回のMV制作で目指したものは、顔を出さないまま「歌う表情」をリアルに映し出すことで、見る人の心を揺さぶる映像。世の90%のMVにアーティスト本人が歌うパートがあるのも、結局は歌い手の表情が視覚的に心を動かす大事な要素で、一番効果的だからかと本山さんは、アデルの「Hello」MVでグザヴィエ・ドラン監督が最高にエモい表情を捉えていた例を挙げてくださいました。

最後に、本山さんは「エンディングテーマ」MVを通じて、見ている人には「大切なもの」を探すことを伝えたかったとコメントしてくれました。

「無数の情報があふれて、一日中スマホを見て、他人の意見に左右されがちな時代に、ちょっと立ち止まって自分の人生とは何か、自分にとって本当に大切なものは何か、渇望するものは何かを見つめなおすきかっけになってほしいです」(本山さん)


テクニカルディレクター、浅井宣通さん(WOW)


「エンディングテーマ」で、世界初のフェイスマッピング技術を作ったのが、映像クリエイターの浅井宣通さん。先日行われたグラミー賞で、レディーガガがデヴィッド・ボウイのトリビュート・パフォーマンスを行った際の顔マッピングを担当されていたので、すでに映像はYouTubeでもご覧になった人もいらっしゃるはず。

浅井さんは2014年に人間の顔にリアルタイム・マッピングするアート作品「OMOTE」を世に発表。センシング技術やデジタルの表現手法などを組み合わせた映像技術を進化させ、フェイスマッピングの領域を切り開いたイノベーター。

その浅井さんにとっても、今回の「エンディングテーマ」は、まだ世界で誰もチャレンジしていない初の完全フェイスマッピングでした。

「アイデアとしては、OMOTEのときからありました。とても難しいプログラムになるので段階的に取り組んでいこうと考えていました。今回は、口だけですが実際には顔は変幻自在にデフォームするものなので、これを正確にトラッキングするにはいろいろ難しい技術を取り込んでいく必要があります。でも、これができるともっと面白い表現になっていくのも間違いないです」(浅井さん)


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気になるフェイスマッピングの機材についても聞いてみました。

「輝度13,000LMのパナソニック製プロジェクターを使っています。今までにもノウハウの公開はしている通りですが、OptiTrackというIRセンサーを使っています。口周りのトラッキングをするために、元の3Dモデルデータを変形させるためのいろんな工夫をしています」(浅井さん)


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今回のMV制作で特に聞いてみたかったこと。それは、撮影現場で映像をマッピングする時、何に特別気を使ったかということ。普段ならマッピングする対象は静的な建物やオブジェ。ですが今回は常に動いて、しかも頭の向きや角度で微妙な変化が起こる顔に、口元から全てマッピングを施すほど正確性が求められる作業だったはずなんです。

空中にプロジェクターとセンサーを安定して固定するのが結構難しかったです。しっかり作ったつもりのマウントも長時間の撮影の中でちょっとずつズレていってしまいます。そうするとトラッキングがはずれてブレたり、ズレたりしてしまいます。それは事前に読みきれなかった要素で、限られた撮影時間の中でどんどん時間が押して行くのでドキドキしました。

でもその中で、激しく熱唱する秋田さんの顔の動きに連動して、トラッキングは外れてしまう症状がそのまま感情の激しさの表現につながっているな、と気づいて、それからは意図的にそのノイズを演出として使う、という作戦に見方を変えました。

テクニカル的には、エラーでしかないノイズを表現として捉える深さは面白いですね。デジタルなデータは、メモリー上にしか存在しないので電源が切れると消えてしまいます。その儚さが、エンディングノートの死と直面して失わつつある生命の儚さの表現とつながっているのは深いです

amazarashiもレディーガガも例外ではなく、音楽作品を作る上でテクノロジーとの融合が無視できない時代が来ています。CG技術や編集ソフトの進化、これまで見られなかった表現手法が増えていますが、浅井さんはこの流れに関して次のようにお答えてくださいました。

「テクノロジーが便利なツールである、というだけでなく、人間の存在のあり方自体を変えてしまうような時代になっているなと感じます。テクノロジーの進化自体が人間の生命の進化のプロセスである、という感覚です。音楽においても、映像においても、テクノロジーという要素は常に必要不可欠な要素です。単に道具ではなく、単にギミックということではなくて、表現の本質に関わるようになってきていると感じます」(浅井さん)

最後に浅井さんが今回フェイスマッピングで実現したかったことと、感じたこと、そしてMVを通じて見ている人に感じてほしいことを聞いてみました。

フェイスマッピングでは、皮膚を老化させることによって、5分間の間に数十年分、老化させるという表現にチャレンジしています。人間の顔は、皮膚の質感で年齢を感じとることができるのが面白いです。その人の一本一本の皺にその人の人生が刻まれています。それを表現できたらいいな、と思いました。でも、100才の老人の人生の皺を、たった2週間のCG作業で刻み込むことはとうてい無理でした。そんな人の顔はそんな薄っぺらいもんじゃないな、と改めて感じました。

人は普段、自分の寿命が限られているということをあまり意識しないと思います。でも、死ということを見つめたときに、その限られた時間をどう使ったらいいのか?今日一日をどう価値的に生きたらいいのか?っていうことに意識的になることができんだと思います。今回のMVに出てくるいろんな人々のエンディングノートは、リアルに書いてもらったものばかりですごく胸に迫ってくるものがあります。

普段みんなが目をそむけてしまう死という現象に正面から向き合った今回の楽曲、そしてMVはすごいな、と思います。ボクはこのMVで初めて参加しましたが、これまでのシリーズのMVもどれも現場のクリエイターの本気さや情熱が伝わってくる素晴らしいものばかりです。本当にリスペクトです


映像ディレクター橋本大祐さん(P.I.C.S.)


映像監督はRADWIMPSなどのMVから、CMやプロモーション用動画まで手掛ける橋本大祐さんが担当されました。

橋本さんには、「エンディングテーマ」の歌詞とリンクしている、灰色の病室の中に取り残された秋田さんが有機的な表情で歌う映像の意味についてコメント頂きました。

「(自分が地球上で)最後の人間だと思っていた秋田さんですらアンドロイドだった。つまり、その世界にはもう人間は記憶としてしか存在していなくて、そこに実像はない。人間の記憶だけの世界で、アンドロイドが人間のことを想う。この構図によって、生きることの儚さや生への渇望のようなものを、より強く伝える狙いがあった。人工的なものが逆説的に人間性を浮き彫りにする、というイメージをMVは伝えています」(橋本さん)


さらに、今回のMVで特徴的なフェイスマッピング。橋本さんはどのような点を強調されて、どんなことを表現したかったのでしょう?


「今回のフェイスマッピングでいえば、顔というのは、やはり人間にとって特別なインパクトを持つものだと思います。建物などにマッピングするよりも、直接入ってくるというか、より直感的な部分に働きかけることができる。人間性や情緒のような、人工的な表現方法では伝えにくかったものを、テクノロジーによってより見る人の内に深く入り込むかたちで表現できるというのは、可能性の広がりを感じます」(橋本さん)


本山さん、浅井さん、橋本さん、ありがとうございました!


孤独と生の狭間を描いた最新アルバム「世界収束二一一六」


2月24日(水)にリリースされたamazarashiの最新アルバム「世界収束二一一六」。初週でいきなりアルバム・チャート4位にランクインするほどの話題作となっております。

10月15日(土)には、幕張メッセでのライブ「amazarashi LIVE 360°」が決定済み。フロア中央に設置された特設ステージを取り囲むスクリーンに映像を全方位から投影して行う、音と映像が結合したライブを見せてくれます。

今回のMV「エンディングテーマ」だけでなく、アルバム収録曲「季節は次々死んでいく」や「スピードと摩擦」もすでにYouTubeで公開されています。音楽の映像表現で常に新しい領域に踏み込んでいくamazarashi。驚き溢れる映像技術に、強いメッセージと世界観を重ねあわせた映像作品には、5分では表現しきれない想いが詰まっていることが、クリエイターさんたちの熱い言葉から伝わってきました。パワフルで独創的なamazarashiの世界、気になる方は映像をご覧になるのを絶対オススメします!


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アルバム詳細
アーティスト:amazarashi
タイトル:世界収束二一一六
リリース日:2016年2月24日
レーベル:Sony Music Associated Records
ストア:iTunesAmazon
リンク:公式サイトYouTubeFacebookTwitter

トラックリスト
1. タクシードライバー
2. 多数決
3. 季節は次々死んでいく
4. 分岐
5. 百年経ったら
6. ライフイズビューティフル
7. 吐きそうだ
8. しらふ
9. スピードと摩擦
10. エンディングテーマ
11. 花は誰かの死体に咲く
12. 収束

フォーマット:初回限定盤A(ライブDVD/小説/詩集付き、限定5,000枚)、初回限定盤B(オリジナルフィギュア付き)、通常盤


協力:ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ
source:amazarashiSIXWOWP.I.C.S.

(Yohei Kogami)

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