これからのVRの話をしよう。研究者がVRの利用に関する倫理的な規範を提示

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一時的に自分のことを忘れられるほどの没入感って最高。でも、それなりの危うさもはらんでいるみたい。

VR技術を研究目的や個人で利用するときの倫理的なリスクを指摘する論文が発表されました。著者はヨハネス・グーテンベルク大学マインツのMichael Madary氏とThomas K. Metzinger氏。VRが社会や個人に与える影響やそのリスクを踏まえた倫理的な規範づくりの必要性を強調しています

個人が留意すべき点としては、長期間に渡る利用社会的な交わりのヴァーチャル化の進行プライバシーに加え、リスクの高いコンテンツが挙げられていました。なかでも著者が懸念しているのは、VRが人間に与える心理的な影響の強さです。

これまでの実験で、人間はVRによって自分以外の肉体を自己の肉体だと認識してしまうことや、VR体験のなかで受けた心理的影響がその後も継続することが明らかになっています。とある実験では、VR上の自分がどの肌の色をしていたかによって、一時的に人種的偏見の度合いが変化するという結果も出ているのだそう。

心理的な影響を受けるのなんてVR以外のあらゆるメディアにも当てはまるんじゃないの? という気もしますが、著者はVRの特異性について次のように説明します。

ほかのメディアと違い、VR上では受け手が置かれる環境をクリエイターが完全にコントロールすることができます。高度なアバター技術によって「社会的な幻覚」を引き起こすことも可能にするのです。さらに、物理的に実在する世界を構築する場合とは違い、ヴァーチャルリアリティ空間では迅速かつ簡単に受け手の行動に影響を与えることができるのです。

さらに論文では、より広い意味でVRが私たちの社会に及ぼす影響についても述べられていました。

VRというテクノロジーは客観的な世界を変えてしまうものです。客観的な変化が主観によって受容されていくに従い、人間の価値判断も変容していく可能性があります。VRテクノロジーによって変わるのは「人間らしさ」といったものだけではありません。「意識的体験」、「自分らしさ」、「真偽」、「リアルさ」といった概念を、人間がどのように理解していくのかさえ、最終的に変えてしまうはずなのです。

とめどなく進化しているVR技術が、これから私たちの生活に浸透していけば、こうした本質的な議論や規範づくりがますます必要になっていくことでしょう。著者は今回作成したリストを今後の議論におけるプラットフォームとして位置づけており、これからどんどん改良されていくことを望んでいるとのことです。どんな項目が付け加えられるべきか、もしくは削除されるべきなのか考えてみるのも面白いかも。

ギズモード・ジャパンは、3月21日より5日間、メディアアーティストで筑波大学助教の落合陽一さんをゲスト編集長に迎え、テクノロジーの未来を考えるコンテンツ・ジャック企画を実施します。記事に対するコメント、感想は#gizjack_ochyaiへお寄せください。

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Image by aleg baranau / Shutterstock

source: Johannes Gutenberg University Mainzfronties in Robotics and AIInverse

(Haruka Mukai)