SXSWレポート:「今いちばん楽しい場所」でHACKistがクリエイトし続ける理由

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雪もあれば、柴犬もいました。

テキサス オースティンで毎年3月に開催される音楽と映画とテクノロジーのフェス、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)。ツイッターやFoursquare、Meerkatなどのテック系サービスがブレイクしたことでも有名です。

かつてはスタートアップ企業などが多く参加し、インディーな雰囲気だったSXSWですが、最近では著名な企業やクリエイター集団の出展も増えています。そのひとつが、HACKist

HACKistは、Webサイトの制作を中心に、マルチタッチポイントで統合的なデジタルマーケティングを強みとする博報堂アイ・スタジオのデジタルクリエイティブラボ。通常業務としてではなく、クリエイターやエンジニアが有志で活動しているプロジェクトです。

彼らは、2014年からSXSWインタラクティブの展示会「Trade Show(トレードショウ)」に参加しています。たくさんのブースで盛り上がる2016年の様子をちょっとのぞいてみましょう。

「POSTIE」は小さな郵便屋さん

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POSTIE(ポスティー)」は、スマートフォンで送られた手書きの文字や写真が紙で届く郵便受け。印刷されたメッセージはPOSTIEの口からレシートのように出てきます。キョロキョロ動く目がカワイイ。

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昨年のSXSWでも人気だったというPOSTIEは、先日Indiegogoでクラウドファンディングがスタート。ブースでは、「絶対に買うよ!」と言っていた人もいました。プロダクトのわかりやすさや見た目の可愛さもあり、POSTIEの周りには常に人だかりができていましたよ。

山をデジタルでハックする「TREK TRACK」

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山での遭難者を減らすために作られたプロジェクトが「TREK TRACK(トレック・トラック)」です。山中に置かれたビーコンと登山者のスマートフォン、そして登山者どうしのスマートフォンでそれぞれの位置情報を共有、集約し、山全体にメッシュネットワークを作ります。

登山者が電波の届くところへ下りると、そのスマートフォンから全員分の位置情報がTREK TRACKサーバーへアップロードされるので、誰がどこにいるか(いたか)がチェックできます。

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ビーコンの電源にはソーラーパネルを使っています

テクニカル・ディレクターのQawasakiさんは、アウトドアとデジタルをテーマにして「デジタルじゃないとできないこと、(ハードウェアの環境が整ってきた)今じゃないとできないことがしたい」という思いからTREK TRACKを制作し始めたといいます。実際の山への実装に向けて、動き始めているそうですよ。

「Dig-Log」で雪かきを楽しく

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SXSW会場オースティンのこの日の気温は約30℃、もうほとんど夏でした。そんななか、HACKistブースの端には、が用意されていましたよ。

この雪(じつは吸水性ポリマー)を使ってデモ体験できるのが、「Dig-Log(ディグログ)」。シャベルに取り付けて「雪かきを遊びにする」デバイスです。

HACKist クリエイティブ・ディレクターの望月 重太朗さん「デモのやりすぎで腕が痛いです」

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デバイスが雪をかいた重さを測定して、スマートフォンに消費カロリーやかいた雪の総量などを表示します。

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応援されているような気持ちになりますね

体験してみましたが、雪かきは意外と重労働。ただ、リアルタイムにカロリーなどの数字を見せられると「もうちょっとキリのいいとこまでやろうかな〜」なんて気分になりました。雪の多い地域出身の来場者の方は「懐かしい!」と、喜々として遊んでいましたよ。

犬の気持ちを「INUPATHY」で探ろう

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INUPATHY(イヌパシー)」は心拍数をセンシングして、犬の気持ちを光で表現するペット用のウェアラブルデバイス。現在Indiegogoでクラウドファンディング中です。SXSWでは展示ブースを飛び出して、実際に街なかでデモを披露しました。

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モデルは柴犬のシロくん

緑の光は「ちょっと緊張している」気持ちだそうです。初対面の人が多かったせいでしょうか。

オースティンの街には愛犬を連れた人を多く見かけました。そのためか、イヌパシーをつけて歩いているとたくさんの人に声をかけられます。

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シロくんも嬉しそう。というのも、虹色に光っているのは「ハッピー」の意味なんだそうです。詳しいデータはスマートフォンアプリで確認することができますよ。

猫派のみなさん、ご安心ください。今後はもしかしたらNEKOPATHY(ネコパシー)も登場するかも…?とのことです。

まだまだあります

■ HELLO WORLD!

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HELLO WORLD!」は、置かれたものを画像認識してそれにまつわることを話すテーブル。例えば、パプリカを置くと「こんなレシピがおすすめですよ」と教えてくれたり、自分のセールストークをしたりなんてこともできます。

■ PLAN-NET

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PLAN-NET」は、Googleカレンダーのタスクやスケジュールを直感的にビジュアライズして表示するデバイス。

コンセプトは宇宙。それぞれのサークル内に丸がたまっていくことで、各スケジュールが終わりに近づいていく様子を表します。

横置きだと1日のスケジュールを表示していますが、縦置きにするとある時間帯にしぼることができます。例えば「今の会議があとどのくらいで終わるか」をビジュアライズしてくれるんです。

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この会議、もうすぐ終わります!

遊べるプロダクトから、社会問題の解決に踏み込んだプロトタイプまで、さまざまな展示を行なったHACKist。

彼らのクリエイティブのアイデア、そしてSXSWへのこだわりってどこから生まれてくるんでしょうか? クリエイティブ・ディレクターの望月 重太朗さん、テクニカル・ディレクターのQawasakiさんにうかがいました。

HACKistがSXSW(南南西)を目指し続けるわけ

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テクニカル・ディレクター Qawasakiさん(左)、クリエイティブ・ディレクター 望月 重太朗さん(右)

ギズモード(以下、ギズ):SXSWってHACKistにとってどんな場所でしょうか?

望月重太朗さん(以下、望月さん):SXSWみたいなフェスってほかにないと思うんです。来場者の規模や参加するメディアの種類がとても多くて、プロダクトを買って自分たちのサービスに使いたい人もいるし、未来のアイデアを探している人もいる。自分たちの会社にヒントになりそうなものを求めているメーカーの人たち、アーティストやメディア、いろんな人が集まっています。いろいろなものが混ざり合って、全体で実験している場所という感じかもしれません。

2015年のSXSWに出した、笑うと写真が撮れる「Smilfie Pod」を、ブラジルで写真館を経営しているという人が、あわよくば中を開けて構造の写真撮ろうとするくらい必死で見ていて(笑)

もし日本で展示したとしても、ブラジルの写真館の人が中を見ようと思って来ないですよね。これは極端な話ですけど、SXSWで展示するときに起こるアクシデントまで含めて、いちばん楽しい場所だと思います。作れば作ったぶんだけ、出したら出したぶんだけ、自分たちにフィードバックがある。

ギズ:今年のSXSWはどういう感触を得ていらっしゃいますか?

望月さん:ブースのテーマは「異質感」なんですが、Dig-Logのデモのために雪を置いたのはよかったと思ってます。目を引くもの、異質なものを置くと、「それ何?」とか「やってみたい」ってみんな足を止めてくれるんです。オースティンは街自体のキーワードが「Keep Austin Weird(俺たちはヘンであり続けようぜ)」で、そのマインドがSXSWを形成しているんです。だからヘンなものを受け入れたい、むしろそれを楽しみたいという人が来ている。せっかくなのでブースもそれを体現するものに近づけようと思っています。プロダクトだけじゃなくて、展示のやり方もプロトタイピングしていくという考え方です。

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ギズ:HACKistのみなさんにとって、普段のお仕事とSXSWってどういう関係にあるんでしょうか?

望月さん:HACKistの活動は、クライアントワークにまだ紐付いていない自分たちの技術を世の中に提示しようという発想なんです。広告的な技術、課題の発見とアプローチを組み合わせたプロトタイプのやり方で、「メタモルフィック・プロトタイピング」とよんでいます。

Qawasakiさん:普段の仕事で得た技術や見えてきた課題を(SXSWで展示するような)プロダクトのアイデアにすることもありますし、HACKistで作ったプロトタイプや技術を仕事に取り入れることもあります。うまく両立していますね。

望月さん:出展3年目の今年は、プロダクトの種類も多く、ビジネスの可能性を含めていろんな方向を狙っています。今後の指標作りのための実験場として、SXSWには大きな価値を感じています。

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毎年、個性的なブースが多いことから「もっともホットなゾーン」と称されることもあるSXSWトレードショウの日本エリア。HACKistの6つのプロトタイプにも、たくさんの人が足を止め、写真を撮ったり体験したりしていました。

ビジネスだけでもアートだけでもなく、社会にも寄り添ったプロトタイプを作るうえで、SXSWでのフィードバックには大きな価値があるというHACKist。記事の後編では彼らのプロトタイピングについて、より深くお話をうかがいます。お楽しみに!

関連記事:プロトタイプを「変態」させ、アメリカに挑戦するHACKistのクリエイティブの作り方

source: HACKist, SXSW

(斎藤真琴)