知らないと恥ずかしい21世紀のフューチャリスト用語20

知らないと恥ずかしい21世紀のフューチャリスト用語20 1

毎日どうでもいい情報に振り回されて肝心のことが見えてない気がするみなさま、そんな「抑制的反昇華」状態で「知性爆発」に突入したらあっという間に「テクノロジー失業」ですよ? さあ、今から「コベイランス」と「道徳能力増強」と「知性増幅」でこの「ミュールズ」だらけの「アントロポセン」の新世紀を乗り切りましょう。

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ここで紹介するのは、21世紀を語る20の必須キーワードです。2007年の初稿をベースに、フューチャリスト(未来学者)諸氏にお話をうかがいながら修正加筆しました。

1. Co-veillance(コベイランス=相互監視)

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フューチャリストのSF作家デイヴィッド・ブリン氏の造語。Steve Mannの「sousveillance(逆監視」とJamais Cascioの「Participatory Panopticon(参加型パノプティコン)」のマッシュアップで、自身が提唱する「Transparent Society(透明な社会)」の延長線上にあります。要は「監視と逆監視を掛け合わせて生まれる、見て見られる相互監視」であり、「下からの監視」のことを指します。ブリン氏は取材でこう語ってくれました。

現代人は監視権力が日々拡大することに不安を感じている。カメラはより高速・小型・ベターになって、(自分の感覚では)ムーアの法則を凌ぐペースで大量化とモバイル化が進んでいる。リベラルは独裁政権や顔のない大企業から監視者ビッグ・ブラザーは台頭すると考え、保守派は学界や顔のない官僚から生まれると考えている。どっちも正しい。ジョージ・オーウェルの警告はみな真剣に受け止めているのに、「見るな!」と泣きごと言うぐらいのことしかできない。 それでは監視は止まらない。泣きごと言う代わりに、見返してやったら? ボトムアップで逆監視を思いっきり効率的にやれば? 監視カメラ作動中の部屋にカメラをもって入っていき、一般市民が監視者を監視したらどうだろう?

見て見られる相互監視は実現が難しいけど、「見るな!」と法律で取り締まるよりは効果が期待できそうだというお話でした。

2. Multiplex Parenting(多親育児)

これは先にも出ました未来研究所特別上席フェローのJamais Cascio氏がプッシュしていたもの。「試験管ベビーなんだけど、生殖細胞系列の遺伝子を操作したもの」、つまり精子、卵子母、ミトコンドリア母の3人を親にもつ子どものことを指します。多親ベビーは2014年の英国に次いで、米国でも現在認可を検討中。今は遺伝病治療が目的ですが、将来的には人間特質を選別するデザイナー・ベビーに道筋をつけるものとして注目を浴びています。

3. Technological Unemployment(テクノロジー失業)

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こちらはフューチャリストでSF作家のRamez Naam氏の推薦。技術が採用され、人が不採用になる現象を指します。以下は氏のコメント。

自動運転車が普及すれば、タクシー運転手、自動車・トラック運転手は失業の危機に晒される。これは何百年も前からある現象で、ラッダイト運動ではネッド・ラッドが人間から仕事を奪う織機を叩き壊した。これまでは自動化に伴うニッチな新雇用創出のほうがペースを上回っていたが、今は人間排除のスピードがすさまじいので、そのペースに果たして新スキル獲得、富を分散する社会制度改革が追いついていけるのかどうか。そこが焦点だ。

ロボットとAIは、あらゆる業種でマンパワーに取って代わる可能性を秘めています。高失業率と社会激変を心配するのは当然のことで、最近は「最低限所得保障(GMI:Guaranteed minimum income)」のことも盛んに議論されてますよね。

4. Substrate-Autonomous Person(底質独立型人間)

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未来の人間は肉体の枠を超える。これが「サブストレイト・オートノマス・パーソン(底質独立型人間)」―フューチャリストでありトランスヒューマニストのNatasha Vita-More先端技術大学教授が提唱する概念です。人は最終的に「プラットフォーム変換可能な肉体(物理的に装着・使用可能だが、同時にコンピュータ環境やヴァーチャルシステムの中にも存在しうる未来の体)」で自らのアイデンティティを確立し、バイオ領域、サイバー領域、ヴァーチャル環境の間を自在に行き来できるようになります。

「アイデンティティを確立はするのだけど、その人格は肉体単体よりむしろ環境に結びつけられたものになるわけですよ」と教授は取材に答えてます。使用するプラットフォームに応じて、底質独立型人間は自らの情報をアップロード&ダウンロードし、環境に合わせたかたち(肉体)に姿を変えます。バイオ領域では肉体、メタバースではアバター、ヴァーチャルリアリティーではデジタルフォーム。

5. Intelligence Explosion(知性爆発)

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技術的特異点(シンギュラリティ)」に代わる新語。推薦理由をオックスフォード大学「人類の未来研究所」リサーチフェローのStuart Armstrong博士に尋ねてみたところ、シンギュラリティという言葉にはいろんなニュアンスが盛り込まれ過ぎてカルト化しているため、AI(人工知能)が人間に追いつき追い越したときどうなるのかということを論じるときには不向きだし、何より人によって解釈が異なり、大枠の現象の一部しか論じていない点が問題だというお話でした。

Intelligence Explosion(知性爆発)」は、戦時中ブレッチリー・パークでアラン・チューリングの助手として暗号解読を手がけたI. J. Good氏が1967年に提唱した言葉です。以下はArmstrong博士の説明。

「知性爆発」とは、AIのような人工システムの知性がいきなり爆発的増大を始める現象を指す。これが起こるシナリオは何通りか考えられる。まずシステムが急激な自己改良を始め、知能を獲得すればするほど、それに輪をかけて知能を容易に獲得できるようになるというもの。もうひとつは、人間の知性は観念の枠内に固まっているため、地道に学習を続けるAIが村全体を見回してバカな村人からアインシュタインを見分けて差がつけられるというもの。あるいはまた単にスキルのリターンが多いため、ちょっと組織全体の知性が上なだけで、中の人間ははるかにパワフルになれるというものだ。いずれにしても地球生命体の運命は主に、こういう「超生命体」が握ることになる。

6. Longevity Dividend(長寿配当)

フューチャリストの多くは長寿社会を人道的論点から絶賛していますが、中にはアンチエイジングのバイオ技術出現で得られる膨大な財政上のメリットで絶賛する少数派もいます。この「長寿配当」という言葉を推したのはIEETの生命倫理学者James Hughes博士です。要するに「バイオジェロントロジスト(老化学者)が提唱しているもので、老化を遅らせ健康な長寿社会を実現することで得られる医療費削減のほうが、そうした技術の開発・提供や数年の延命ケア提供にかかるコストを遥かに上回ることを指す言葉」です。健康で長生きできるようになれば、医療費や介護の費用は減り、より多くのシニアが人の世話にならずに労働力として活躍できると博士は言っています。どおりで最近、どの企業も長生きの技術開発レースなわけですね。老化予防医療は、経済的利益と経費削減が半端ないのです。

7. Repressive Desublimation(抑制的反昇華)

io9の編集長であるAnnalee Newitzが提案してくれたのがこちら。もともとは政治哲学者ヘルベルト・マルクーゼが、あの金字塔的名著「エロス的文明」で提唱した言葉です。Newitz氏はこう言ってます。

これはゆるやかな独裁政権を指す言葉。政治的反対分子を抑圧したい、金持ちの消費文化社会に好まれる。こういう社会では大衆文化(セックス、ドラッグ、暴力的なビデオゲームなど)の影響で人は欲求昇華を抑制・発散し、同時に企業や政府の権力に歯向かう意欲は削がれてしまう。その結果、人は常に監視され退屈極まりない仕事を強いられているのに、あたかも自由な社会に生きているかのような錯覚を覚えてしまうのだ。要は消費第一主義。社会的抑圧から人々の目を逸らすリベラルの価値観というやつね。

8. Intelligence Amplification(知性増幅)

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頭文字で「IA」とも。人間エンハンスメントのサブカテゴリで、人間の知力を技術で高めることを指します。 「AI(Artificial Intelligence: 人工知能)の誕生を補完するもの、あるいは競合関係にあるものとして位置づけられるが、現実には両技術が共通して排除するものはひとつもないのだ」とRamez Naam氏は言ってます。氏の説明で、へ~と思ったのは、IAでテクノロジー失業はある程度解決されるというところです。確かにAIを進化させて人間(ポストヒューマン?)の「能力を高める」ことができれば、ずっと現役で働けますからね。

9. Effective Altruism(効率的利他主義)

Stuart Armstrong博士がもうひとつ推薦していたのがコレ。こう解説しています。

慈善活動などの利他的な運動に費用対効果の概念を応用することを指す。どんな策よりもエンジニアリングのアプローチのほうが問題解決の効果が数千倍高い場合もあるように、チャリティーのほうが数千倍効率がいい場合もあるし、利他的なキャリアの道のほうが数千倍効率がいい場合もある。効率を高めればより多くの人の命を救い、世界中でより多くの人の負担が軽減されチャンスが与えられる。チャリティーがこのようなかたちで行なわれれるのであれば、やる道義的責任が人類にはある、という論が成り立つ。非効率性は逆に、人を見殺しにする行為にほかならない。

10. Moral Enhancement(モラル・エンハンスメント=道徳能力増強)

若干関連があるのですが、James Hughes博士が21世紀のフューチャリストが知らないと恥ずかしい用語として挙げていたのが、この「モラル・エンハンスメント(道徳能力増強)」です。別名「Virtue Engineering(倫理エンジニアリング)」とも呼ばれ、薬物・ウェアラブル端末・インプラント端末で人間の自己抑制・共感・フェアネス・気遣い・知性・スピリチュアル体験の能力を高めることを指します。

11. Proactionary Principle(積極行動原則)

これはアルコー延命財団CEO兼社長のMax More氏が推薦していたもので、「Precautionary Principle(予防原則)」をもじった造語です。氏はこんな風に解説しています。

技術開発の自由は人類にとってかけがえのない価値を持ち、欠くべからざるものとも言える。したがって開発抑制政策が提案される際には、一定の原則が必要だ。つまり大衆の世論ではなく既存の科学をベースにリスクとチャンスを評価するということ。抑制そのものにかかるコスト失われる機会のコストも考慮に入れること。影響の可能性と度合いに見合う、期待値の高い政策を支持すること。そして、実験、技術革新、進歩の自由を守らなけばならないということだ。

12. Mules(ミュールズ)

こちらは先述のJamais Cascio氏の推薦。マイナーだけどね、って言ってました。ミュールズとは想定外の出来事を指します。金融の世界でいう「ブラックスワン」。既存の知識で知り得ないというだけでなく、世界観の枠の外にある物事ですね。アイザック・アシモフのSF小説の連作「ファウンデーションシリーズ」に登場する突然変異体「ミュール」からきた言葉。

13. Anthropocene(アントロポセン=人新世)

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NASA/NOAA

Jamais Cascio氏推奨の必須用語。大気科学者のパウル・クルッツェン氏が提唱した造語で、定義は「今の地質年代。人類が生態系を本質的に変容させているのが特徴」。

14. Eroom's Law(イルームの法則)

高速化が「ムーアの法則」なら、スペルを逆にした「イルームの法則」は鈍化の経験則。製薬産業でみられる現象です。研究開発への投資10億ドル(1085億円)当たりの新薬開発スピードは1950年から9年ごとに半分になっており、「過去60年間で約100分の1になった」とRamez Naam氏は言っています。「理由は沢山考えられる。行き過ぎた規制、手近な果物からもぎ採る傾向、システムがどんどん高度になって解明する手間の割には得られるリターンが低くなったことなど」。

15. Evolvability(進化可能性)

Natasha Vita-More教授によると、これは「既存の変異体より適応力やパワーに優れた変異体を生み出す能力」を指す言葉だそうです。以下は教授の言葉。

進化可能性は、あるシステム(進化可能な特性を備えた社会や文化など)で判断できる場合もあります。たとえば今の人体の生理学的変化に比べ、現代の文化はもっと創発的で突然変異を引き起こしやすい環境にあります。数千年の間に人間の道具、言語、文化は多種に進化しました。人体はほぼ前と変わりないままなのに、文化が促す道具(石器からコンピュータまで)の使用には進化可能性の変化が顕著に見られます。

16. Artificial Wombs(人工子宮)

これは「女性の子宮を使わずに出産を叶える技術的デバイスや生物学的デバイス」とAnnalee Newitz氏は語っています。またの名を「Uterine Replicator(子宮レプリケーター)」と呼びます。これが実現すれば女性は出産から解放され、子作りももはや男女1対のものではなくなります。「人工子宮の開発とともに、親が3人以上いる家庭や同性婚をサポートする社会的枠組みづくりも進めていくことになる」とNewitz氏。

17. Whole Brain Emulations(全脳エミュレーション)

Stuart Armstrong博士の言葉を借りると、全脳エミュレーションとは「コンピュータにコピーした人間の脳」のことで、コピー後は物理原則で操作し、デジタルフォームで人間の思考回路の再現を目指すものとのことです。以下は博士の説明。

エミュレーションは脳のしくみの小前提に依存しており、実現するには元の脳のモデルを作成するスキャン端末なんかのテクノロジー、適切な操作に必要なバイオの知識、パワフルな処理能力を備えたコンピューターがないと始まらない。今のままテクノロジーが進化すれば2070年ぐらいには実現するかもしれないが、これはかなり不確かな見通し。もしそんなエミュレーションが開発されたらら、医療、社会、経済は根底から変わる。たとえば人間はデジタルフォームでサバイブできるようになり、「人的資本はコピー可能」となる。高い技能・経験を備えた仕事の早いワーカーをビジネスの用途に応じて必要なだけコピーして使えるのだ。

となれば「賃金はどうなるの?」、「コピーは最終処分できるの?」っていう難しい問題も出てくるけどね、とArmstrong博士は語っています。

18. Weak AI(弱い人工知能)

最近はあんまり好ましくない言葉と思われているけれど、重要なキータームであることには変わりない、とNaam氏が推すのがこちら。「弱い人工知能」とは「頭の弱いAI」とか「気弱なAI」のことではなくて、パターン認識や情報処理能力といったAI業務はすべてこなすのだけど、自我の覚醒まではいかないAI」を指します。「グーグル検索、IBMのスパコンのワトソン、 自動運転車、自立飛行型ドローン、顔認識、医療診断、アルゴリズム取引のトレーダーはすべて『弱い人工知能』ね。AIと機械学習およびその関連分野のビジネスと研究の大多数はこの『弱い人工知能』なのね」とNaam氏。

19. Neural Coupling(ニューラル・カップリング=知覚カップリング)

2人(かそれ以上)の人間の脳をつなぐUI。そんなものができたら最高ですよね。実は今日すでに科学の世界では、人間の脳でほかの動物の四肢(この事例では尻尾)を動かすところまできているんですよ? 最初この技術は、麻痺していた手足の感覚を取り戻すリハビリ目的で使われそうですが、最終的には娯楽目的の使用も十分考えられます。すると人間同士は意識をつないで互いの体の部位を思いのままに動かせるようになります。

20. Computational Overhang(コンピュータのオーバーハング)

これは新しく登場したアルゴリズムがいきなり既存の処理パワーを遥かに効率よく使うようになる状態のこと。これが起こるのは、従来使われないでいた処理パワーが有り余っていたか、あるいはまた従来のアルゴリズムが最適な処理をしていなかったかの2通りが考えられます。「AGI(Artificial General Intelligence=汎用人工知能)」がらみで重要とされるキーワードです。以下はコミュニティブログのLessWrongに掲載された説明。

容易に入手可能なハードのほんの一部を使ってAGIが実現できる状態。この状態に入るとAGIは簡単にコピーして無数のコンピューターで動かせるため、知性爆発あるいはAGIの爆発的増加が引き起こされる。AGIはかつてないほどパワフルになり、人間存在がリスクに晒される。

一方、こちらは機械知能研究所(MIRI)研究員のLuke Muehlhauser氏の解説です。

ムーアの法則どおりコンピュータの処理能力が倍々で成長を続けても、人間風の汎用知能の解明は鬼のように難しい。汎用知能のソフトウェアが実現した暁には、「コンピュータ・オーバーハング」も実現しているかもしれない。これは安価な大量のコンピューター処理パワーでAIを動かそうというもの。AIはハードウェア全体でコピーされるため、AI人口は瞬く間に人類の人口を超える。

Top image via NEOGAF

George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(satomi)