マーベルで働くにはどうしたらいいの? 副社長のC.B.セブルスキーにインタビュー

CB

マーベルが求める人材とは?

いよいよ公開が迫った、キャプテン・アメリカがアイアンマンと対決するマーベルのヒーロー映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」。

そこで今回は、マーベルのバイスプレジデント(副社長)であり、国際開発&ブランド・マネジメントを担当するC.B.セブルスキーさんにマーベルの今後の日本での展開の戦略や、マーベルで働くために必要なことなどについて、お話を伺いました。

C.B.セブルスキーとは?

C.B.さんは幼い頃からコミックとマンガに親しみ、アメリカの大学を卒業後、4年間にわたり日本で生活。帰国後に編集社で働いた後、2002年に憧れだったマーベルに入社。ライター/編集者/タレントコーディネーターとして活躍します。

現在は、日本を含む世界各国の優秀なクリエイターを発掘してコミックに起用し続け、現在はマーベル・ブランドおよび事業の世界展開を担う、国際開発&ブランド・マネジメント部門バイスプレジデントとして世界各国を飛び回っている人物です。

日本のアーティストをコミックの表紙に起用した「マーベル・マンガ・バリアント」の仕掛け人の一人でもあります。

インタビュー

――「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の公開までの間にファンは何をして待っていたら良いでしょうか?

C.B.セブルスキー(以下、C.B.):これまでのマーベル映画をあらためてチェックするのも良いと思います。他の作品とつながるいろいろな小ネタを見つけられるはずです。ただ、他のマーベルの映画と同じく、過去の作品をすべて見ていなくても楽しめる作品にはなっています。

コミックを読むのも良いと思います。「シビル・ウォー」はタイトルからも分かる通り、本作に大きな影響を与えていますが、マーベルの映画はいつもそっくりそのまま原作を再現するわけではなく、変更を加えているので、ネタバレにはならないはずです。

特にエド・ブルベイカーの「キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー」を読めば、映画をより深く理解できます。ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズはかつてどんな人物だったのか? 彼にとってキャプテン・アメリカとは何なのか?ということが描かれたコミックです。キャプテン・アメリカの考え方もきっと理解できます

コミックに登場するウィンター・ソルジャーは前作の中心的キャラクターであり、本作のキーになるでしょうし、どちらも日本語版が出ているので、日本のファンの皆さんもぜひ読んでみてください(「キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー」はShoPro Booksから、「シビル・ウォー」はヴィレッジブックスから発売中)。


――マーベルの映画、コミックスなどのさまざまなコンテンツが世界中で愛されるのにはどんな理由があると思いますか?

C.B.:5歳のときから40年もの間、私はマーベルのファンですが、やはりマーベルの作品には心と人間味があるからだと思います。

コミックの表紙を見ると、スパイダーマンやキャプテン・アメリカがコスチュームを着て描かれていますが、それはあくまで外側にすぎません。ストーリーの中心はコスチュームの中にいる、ピーター・パーカーやスティーブ・ロジャースといった人間なんです。

たとえ彼らはコスチュームを着ていない時でも、人々を助けて善い行いをしたいという強い思いと能力を持ったヒーローです。特殊なクモに噛まれたり、超人血清を打たれたり、ガンマ線を浴びたりしていますが、それは彼らをヒーローとして活躍しやすくしているだけで、一番重要なのは彼らの心がヒーローだということでしょう。

そして、ヒーローは常に共感できる存在でないといけません。たとえばピーター・パーカーは、お金や女の子のことで悩んでいる高校生で、誰でもその状況には共感できますよね?

そんなヒーローとは別の生活の部分もまた、世界中の人々を惹きつけるんだと思います。


――そんなマーベルも他の国に比べると日本での人気は少し弱い印象があります。今後の日本での展開はどのようなものを考えているのでしょうか?

C.B.:私は日本でマーベルが弱いとは思っていません。ただ、時に日本でマーベル作品が苦戦を強いられるのは、日本には多様なエンターテインメントがあるからだとは思います。

マンガやアニメ、実写作品、ゲームなど、日本にはエンターテインメントの選択肢が本当にたくさんあります。しかし、そこに対してこそマーベルがマーケティングを仕掛けるべきでしょう。

マーベルのコミックや映画の主人公の多くはアメリカ人ではありますが、構造は日本のマンガやアニメに似ているんです。たとえば「新世紀エヴァンゲリオン」では主人公のシンジがスーツを着て戦いますが、アスカがシンジやレイに抱くライバル意識も描かれます。

マーベルの世界でも主人公がスーツを着て戦い、仲間と衝突することもあります。言い換えれば、どちらにも共感できる人間味があるわけです。そういった要素を日本の観客にも知ってもらいたいと思っています。

そして、マーベルには日本のマンガと同じくくらいたくさんのキャラクターとジャンルがあります。映画で言えば、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」はSF、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」はスパイ・スリラー、「アントマン」はコメディ、「ドクター・ストレンジ」は魔法ファンタジーといったように、いろいろとあるわけです。

マーベルの映画は、スーパーヒーローものというジャンルにくくられていますが、そこには別のジャンルも含まれているんだということを、日本の観客に伝えていくというマーケティング戦略が効果的なのではないかと考えています。


――マーベルといえばやはりその中心はコミックですが、映画からコミックに興味を持った人は何から読み始めると良いのでしょうか?

C.B.:実は日本だけではなく、アメリカでも映画から入ってコミックを読んでもらうことには苦労しています。マーベルのコミックは75年間も続いている世界が舞台なので、何から読み始めるか? と悩むのは当たり前のことです。

マーベルは作品を作る上で、常にコミックを愛するファンたちの意見も尊重しつつ、新規の読者が読み始めやすいようにバランスをとっています。中でも映画ファンがマーベルのコミックの世界に最初に触れるのにピッタリだと思うのは、先ほども挙げた「シビル・ウォー」でしょう。

今回の映画があるからオススメというわけではなく、キャプテン・アメリカやアイアンマンやスパイダーマン、X-MENなど、映画の登場キャラクターがたくさん出てくるからです。そして、同時にまだ映画に登場していないキャラクターも多数出てきます

映画で好きなキャラクターが初めて見るキャラクターと共演することで、そこから興味を持ち、各キャラクターの他のストーリーを読めば、マーベルの世界の広がりを楽しめるんです。また、「シビル・ウォー」はその前のストーリーを知らなくても読み始められるのも良いところだと思います。


――アニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」などのマーベルのキャラクターをつかったコラボレーション作品がありましたが、今後はどのような日本向けの企画が用意されているのでしょうか?

C.B.:まず、最近配信が開始された、ミクシィとディズニーとNHN PlayArtが共同開発したゲームの「マーベル ツムツム」が大成功しています。

そして、まだ知名度は低いかもしれませんが、大変気に入っているのがマンガボックスで連載中の「アベンジャーズ:ゾンビ・アセンブル」。日本のマンガ家によるオリジナルのストーリーが展開されているんですが、映画ファンとマンガファンの架け橋なっていて、本当に誇らしい作品です。

これから先のことは残念ながらあまり語れないんですが、日本人クリエイターによる日本向けのコンテンツが企画されています。おそらく今年の年末には発表できると思いますが、きっと日本のファンは喜んでくれるはずです。


マーベル

C.B.さんは「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」を大変気に入っており、
来日中に買ったという私物の「ディスク・ウォーズ」のフィギュアを持参。
トップ画像はキャップの盾をスパイダーマンに持たせているところ。

――アメリカではラーメン店とのコラボも実施していましたよね?

C.B.マーベルがニューヨークの一風堂と2日間のイベントを行い、大成功しました。一風堂の方々がマーベル作品の大ファンだったことから実現した企画で、アベンジャーズをイメージした特別メニューのラーメンを提供しました。

マーベルのファンとラーメンのファンがアッセンブルするという最高のイベントだったんです。まだわかりませんが、もしかしたら日本でも実施できるかもしれません。


――日本でマーベル主催のイベントをやる可能性はあるのでしょうか?

C.B.:現在日本では「海外マンガフェスタ」や「アメコミnight!」といったファンが集まるイベントはありますが、もう少し規模の大きなものも見てみたいですよね。

海外には「サンディエゴ・コミコン」のような大きなイベントもあれば、小さなコンベンションもたくさんあります。そこではマーベルだけではなく、他の会社や多くのファンが運営に関わっています。

なので、マーベルやディズニーだけでなく海洋堂やコトブキヤ、ホットトイズといったフィギュアメーカー、ShoPro Booksやヴィレッジブックスといった出版社などが一緒に実施するイベントを見てみたいです。やるとしたら、タイミングが重要となるでしょう。いつか実施できることを祈ります。


――コラボレーションといえば「マーベル・マンガ・バリアント」は素晴らしい企画でした。

C.B.:どの作品が一番気に入りましたか?


――難しいですが……スーパーログさんの「ロケット&グルート」ですね。

C.B.:あれは本当に素晴らしかった! あと、私は白浜鴎先生の「ドクター・ストレンジ」も大好きです。美しかった。


――今回の企画に参加したような優れた才能を持つクリエイターは、どのようにして見つけているのでしょうか?

C.B.:さまざまな方法を使っています。簡単なものとしては、TwitterやInstragramです。マーベルの作品が大好きなクリエイターはその愛を注いだ作品をアップしています。それをファンが見つけて私に教えてくれるんです。

他には、マンガやアニメをチェックしている日本在住の友人が、そのクリエイターがマーベルのファンだということを教えてくれ、そこからコンタクトを取るなんていう場合もあります。

インターネットの力ですね。15年前、クリエイターをスカウトするために日本へ来た時は、コミティアの会場などに直接足を運んで作品をチェックしていました。しかし、今ではインターネットを使って事前に作品をチェックし、それから直接会ったり連絡したりすることができます。


――マーベルはどんなタイプのクリエイターを求めているのでしょうか?

C.B.独自性のあるクリエイターを探しています。

アーティストは若いころからさまざまなアーティストの影響を受けます。日本で言うと、手塚治虫や大友克洋、浦沢直樹のような人を好きになって、絵を学んで行くことは多いでしょう。アメリカでも同じように、アーティストは別のアーティストから影響を受けて育ちます

しかし、マーベルで成功するアーティストとなるためには、他のアーティストから影響は受けても、今までにない独自のスタイルを確立するというのが一番重要です。

マーベルにはすでに、スティーブ・マクニーブンやクリス・バチャロといった素晴らしいアーティストがいます。しかし、彼らと同じように描くというアーティストは必要ありません。マーベルにデザインやストーリーを伝える力など、なにか新しい物をもたらしてくれる人を探しています


――では、マーベルのコミックのライターを志望する人はどのような活動をすると良いのでしょうか?

C.B.:日本でも、南アフリカでも、たとえアメリカ住んでいたとしても、マーベルのコミックのライターになるのはアーティストとして参加するよりも10倍難しいです。

アーティストはポートフォリオを見れば才能があるかどうか判断できますが、ライターは時間をかけて本や脚本などを読まなければいけません。

そしてアーティストは自分に才能があるかどうかは、自分の成長の過程で理解するはずです。私もアーティストになりたいと思って挑戦はましたが、とにかく下手でした(笑)。

しかし、ライターに関しては多くの人が自分は文章が上手でライターになれると思ってしまいます。クリスマスに実家へ帰ると、私の父ですら「なぁ、スパイダーマンの良いストーリーを思いついたんだが」と話を振ってくるほどです。

競争がすごく激しいので、マーベルのライターになるのは大変です、時間がかかります。さらに、日本のライター志望の人に向けて言うとすれば、マーベルでライターを採用する担当者は英語でしか連絡を取りません。なので、ライターになるにはまず自分の本が英語で出版され、その本を編集者に読んでもらう必要があります

読んでもらうのは簡単です。英語を使うことができてライター志望の人は、編集者にソーシャルメディアでコンタクトをとってみてください。Twitterが一番簡単でしょう。

アベンジャーズ担当のトム・ブレヴォートやスパイダーマン担当のニック・ロウに、「自分はライター志望で作品を見てもらいたい」ということを、自分のメールアドレスを添えて伝えてみてください。

作品を見てもらうのは簡単です。ただ、自分の才能を証明することは難しいんです。


――もしマーベルで働くとしたら、まず何が必要になるのでしょうか?

C.B.:マーベルには編集者やアーティスト、ライターはもちろん、弁護士や経理でも、世界各国から集まったさまざまな人がいます。そして、彼らに一番求められるのはマーベルを愛する気持ちです。

陳腐に聞こえるかもしれませんが、本当なんですよ。マーベルで仕事をするためにはキャラクターを理解し、愛する必要があります

愛があれば仕事につけるというわけではありませんが、働く人々をつないでいるのはマーベル、コミック、そしてエンターテイメントへの愛だということは知っておくと良いでしょう。私たちの仕事は人々に娯楽を提供することなので、仕事を楽しまなければならないというのもあります。


――C.B.さんはクリエイターのマネジメントも担当されていますが、才能を育てる上で一番大事なことは何でしょうか?

C.B.クリエイターが何を求めるのか? そしてマーベルが何を与えられるか?のバランスが重要です。

たとえばアーティストには、月刊誌を担当してもらうことを目標としています。マーベルのコミックのデザインやストーリーを伝える手助けをする人物に成長してほしいのです。

マネジメントの上で一番大事なことは、クリエイターとの信頼を築くことでしょう。マーベルが常に仕事を与え、良いお金を支払い、面倒を見ることで、クリエイターが常に締め切りを守り最高の仕事をして、作品だけでなくソーシャルメディアやコンベンションも通じて会社をサポートしてくれると信じるのです。


マーベルもマンガも大好きなC.B.さんが仕掛ける、これからの日本での展開が非常に楽しみですね。果たしてどんな企画が用意されているのか? 注目しておきましょう。

そして、マーベルで仕事をしてみたい!と思っている日本のクリエイターの皆様は、C.B.さんのアドバイスを参考に挑戦してみてはいかがでしょうか? マーベル・コミックのファンとして、日本のクリエイターが活躍する作品はもっと見たい!

映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は4月29日(金)全国ロードショー。

source: 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』公式サイト, Twitter1, 2, 3, 4, 5, BLISTER Magazine, Superlog, Amazon1, 2

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