酷評のApple Car予想デザイン。裏側にひそむ「アップル的」思想は正しかった?

酷評のApple Car予想デザイン。裏側にひそむ「アップル的」思想は正しかった? 1

「ありえない」と世界で話題沸騰中です。まあ正直言ってあんまりかっこよくはないですけど…。

アップルが電気自動車をこっそりつくっている、という話はすでに有名で、通称「Apple Car」は、2019年に発表、2021年に850万円前後で発売されるのではないかと金融アナリストが予測しています。

そのとおりならば、発表まではあと3年。待ちきれなかったんでしょう、カーメディアMotor Trendは大胆にも予想スケッチからレンダリングイメージまで作っちゃいました。

その外観がこちら。

酷評のApple Car予想デザイン。裏側にひそむ「アップル的」思想は正しかった? 2

なんで塗装をゴールドにした…?とは思わなくもないですけど、これはiPhoneやiPadを意識したんでしょう(むしろローズゴールドだったら、スズキの「ラパン」みたいで可愛いかも)。

どうしてこうなった

ネットの反応はおおむね否定的で、「どうしてこうなった」とか「紙ナプキンの落書きレベル」と各メディアも酷評です。

BuzzFeedのエディターは、Motor Trendの記事タイトルを「専門家が頭をつき合わせてつくった、もっとも可能性なさそうなApple Car」と、勝手に直してポストしてます。

上のポストで言及されているとおり、今回Motor Trendが発表した一連のイメージは、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインの学科長から教授、デザイナーたちを集めて議論し、つくりあげたもの。そうそうたるメンバーだったわけです。

なのに、なぜこんな予想が生まれちゃったのか。Motor Trendの記事から探りました。

Apple Carは、人にとっての何になるのか?

「もし自分がApple Carのデザインをするとしたら」という話し合いで、まずメンバーが重視したのは、クルマの見た目やスペックではなく、いかにアップルっぽくするかということでした。

“I would start from the inside out,” Bao says, “with usability coming first.”

「Apple Carはどんな見た目になると思う?」という司会者の問いかけに対して、フォルクスワーゲンのインターンDi Baoさんは、「内装から話しましょう、使いやすさが優先です」と答えています。

iPhoneがユーザーにとってもはや電話ではなくなったように、Apple Carは「クルマ以外のすべて」を担うようになると彼らは予想しました。そのために重視すべきは、万人に対する使いやすさ

つまり、身を縮めて乗り降りしなきゃいけないようなかっこいいスポーツカーはアップルからは出てこないと彼らは考えているわけです。

今回のスケッチを担当したデザイナーGarrett DeBryさんも、かつてジュネーブモーターショーでボルボが発表した「Volvo YCC」を重要なユースケースとして挙げています。

2004年 「Volvo YCC

Volvo YCCは、女性のみのデザインチームがつくった女性のためのコンセプトカー。ポニーテールでも乗りやすいようにヘッドレストが割れているなど、ユニークなアイデアがあります。

これを踏まえて、DeBryさんは「Apple Carのコアとなるのは、可能な限り使いやすいというユーザー体験だろう」と言っています。

自動運転はあたりまえ

酷評のApple Car予想デザイン。裏側にひそむ「アップル的」思想は正しかった? 3

運転させる気がなさそうなコックピットのイメージ

またDeBryさんは、人間が歴史の中で(毎日)30分を移動に費やしてきたことについて、こうも発言しています。

"Apple could sell this[car] as giving you a half-hour of your life back. "

「アップルは私たちの時間を30分かえしてくれるものとして自動運転車を売るだろう」、「これはタイムマシンなんだ」。

つまり移動中の運転が必要なくなればそのぶん、クルマの中で仕事をしたり睡眠をとったりということが可能になります(ほんとうにそのレベルで自動運転が完成するのか、まだ定かではありませんが)。

メンバーのひとりAkash Chudasamaさん(JPLインターン)も、「コンビニエンスこそが、新しい価値」だと指摘します。

この思想に則ったアップルのプロダクトとして、最近ではApple Watchがまさにそうだったと思います。Apple Watchを使い始めてから、常にiPhoneの通知を気にするあまり食事中でもディスプレイをオンにしていた生活から解放されました。まさにこれは、私にとって食事の時間をかえしてくれるものだったわけです。

思想ありきのデザイン

体験のデザインについて語り合ったのち、彼らはApple Carの見た目や素材にも言及しています。

酷評のApple Car予想デザイン。裏側にひそむ「アップル的」思想は正しかった? 4

乗り降りのイメージ。上開きのドアではなく、ルーフが上がるようなイメージだそう

まず車体の上部はぐるりとポリカーボネート製のウィンドウになっていて、広範囲でAR(拡張現実)のための投影が可能です。

酷評のApple Car予想デザイン。裏側にひそむ「アップル的」思想は正しかった? 5

アートセンター・カレッジ・オブ・デザインの教授Tim Huntzingerさんは、「トヨタのMe.Weコンセプトと、マーク・ニューソン(2014年にアップルに参画したと報道された)が手がけたフォードの021cコンセプトを融合させたような見た目になるのではないか」と言います。

2013年 「Toyota Me.We Concept」

1999年 「Ford 021c Concept」

"There’s a trend toward super-organic forms—and some can be timeless, but in five years we’ll know exactly when they were made. Apple’s really good at finding ways to ride that line between exciting without having a timestamp on them."

「(上記2つのコンセプトには)超有機的なフォルムというデザインのトレンドが見られます。タイムレスでありながらも、5年後にはそれがいつのプロダクトであるかを、私たちは言い当てることができる。アップルはいつもタイムスタンプをつけずに、エキサイティングでいられる境界に上手に乗るのです」とHuntzingerさんは、これがアップルの思想を反映したデザインであることを述べました。

とはいえ、アップルのトッププロダクトデザイナー、ジョニー・アイブは大のクルマ好きでも知られますし、蓋を開けてみたらめっちゃスピード重視の流線型スポーツカーだった…なんてこともあるのかも?しれませんけどね。

多方面から散々な言われようではありましたけど、Motor Trendがわざわざ有識者を集めて話し合い、スケッチからレンダリングまで作って、すごく真剣にApple Carに思いを馳せていたことにちょっと感動しました。

ただ、彼らの出したイメージが、はたして狙いどおり「アップル的」なものになったのかどうかは、3年後に出てくるであろうApple Carのみぞ知ること。本物のApple Carが、初代iPhoneのようにイノベーティブなプロダクトであることを期待して、気長に待つとしましょう。

source: Motor Trend 1/2Diseno-art

(斎藤真琴)