Facebookは記者を捨て駒としか思ってない。中で働いた5人が全部語る

Facebookは記者を捨て駒としか思ってない。中で働いた5人が全部語る 1

Facebookで上位表示される人気急上昇トピ「トレンド」。あれってアルゴリズムで振り分けた後は人力で一心不乱にピックしてるらしいですよ? 辞めた元記者5人がその知られざる全容を米Gizmodoに語ってくれました。

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ジャーナリズムの救世主とも破壊者ともいわれるFacebook。毎週ここで記事読む人は6億人。マーク・ザッカーバーグCEOはデジタルニュース分野に独占体制を築く野望を隠しもせず、昨年の公開Q&Aでは「うちの全機能並みに配信スピードを上げれば誰もがニュースをもっと読むようになる」、「(記事を直にニュースフィードで配信する)インスタント記事をみんなの主要なニュース源にしたい」と言ってます。

すさまじいトラフィック流入力

時価総額37兆円のFacebookは今やトラフィック誘導のバズーカ砲です。出版社にとってのAmazonみたいなもので、ニュースサイトはどこもFacebookなしには生きていけません

この傾向を憂慮した名門コロンビア大学ジャーナリズムスクールのデジタルジャーナリズム研究センター所長のエミリー・ベル教授は昨年、「Facebookはいかにしてジャーナリズムを飲み込んだのか」という演題でケンブリッジ大学で講義を行ない、報道媒体から記事配信の自立性が奪われてしまったと嘆いています。もちろんQZのように「パニックしなくても大丈夫。配信チャンネルが増えるだけ」と前向きに捉えている媒体もあります。先月The New York Times、BuzzFeedなどから動画を買い取って直にサイトで配信することを明らかにしたFacebookも、これは地主とテナント両方にメリットがある提携関係なんだから、と強調に余念がありません。

でも同社が記者とその仕事をどう評価してるのか本当のところが知りたかったら、社内で極秘裏に編成した「トレンディング・ニュース」プロジェクトを見るのが一番なんじゃ…。そう思って、そこで「ニュースキュレーター」(社内の通称)として働いていた記者5人に話を伺ってみたんですが…暗くなってしまいました。Facebookは記者を「社外の使い捨ての駒」ぐらいにしか思ってなくて、みな「アルゴリズムを訓練するモジュールとして雇われた」みたいな気分だったと言ってるんです。

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Facebookは記者を捨て駒としか思ってない。中で働いた5人が全部語る 2Facebookの右上の”インターネットの一等地”に「トレンディング・トピック(和名・トレンド)」が登場したのは2014年1月です。今話題のトピを関連記事へのリンクを交えて紹介するコーナーで、ここの担当のため十数名の記者が契約で雇われ、ニューヨーク支社の地下から働くことになりました。

「2ヶ月半、会議室に缶詰だった」と振り返るのは元キュレーターのAさん(Facebookの守秘義務契約違反になるため全員取材は匿名が条件)。「ザッカーバーグがいつでも潰せるプロジェクトということだけははっきりしていました」

「あれは自尊心もなにもない仕事でした。人として扱われなくて。ロボット扱いでした」と別の元キュレーターは言っています。

ニュース媒体へのトラフィック誘導の実数は公表されていませんが、経験上、この欄に記事が採り上げられると数千単位でビューは増えています。それだけの影響力なのに、どう選ばれているのかは闇の中で一切公表されていません。

その流入先を決める記者は派遣で、ハッピーアワーもない

その辺のことを元記者に尋ねてみたら、キュレーターは大体が20代から30代前半で、東海岸のアイビーリーグか私大(コロンビア大学、ニューヨーク大学など)を卒業後、New York Daily News、Bloomberg、MSNBC、The Guardianといった媒体で働いていた経験者がメインで、Facebookを辞めてからはThe New Yorker、Mashable、Sky Sportsなどに再就職してるとのこと。

この少人数の若者で急上昇トピとリンク先の関連記事(超重要)を選んでいたのです。「選定は人力です。判定基準は特になくて、みなキュレーターの一存で決めてましたね」

記者は正規採用ではなく契約なので、制限付きの医療保険、6ヶ月勤続後は有給休暇、交通費支給はあるものの、正社員の福利厚生は一切なかったといいます。「会社は8PMからハッピーアワーなのに自分たちは働き詰めだった」、「社内のことからは置き去り。全然違う条件で雇われていた」とのこと。

なんだそんなちいさなこと!と思うかもですけど、ハッピーアワーで正社員が酒飲んでる間も地下室に缶詰でハムスターというのは結構きますよ…うん…。

記者は同社に人材を提供する「Accenture」の下請けの人材派遣会社の「BCForward」や「Pro Unlimited」から派遣されてきます。出社すると、アルゴリズムで人気順(エンゲージメント順)に選んだトピック一覧が渡されて、そこから人力で選定が始まります。

選び終えると、チームでトピックの見出しをつけ、記事概要を3つの文章にまとめ、一緒に掲載する画像やFacebook動画を選び、トピックの内容がわかる「最も確かな記事」(最重要)を選ぶ、という流れ。

「Twitter」は禁止語

見出しはなるべく中立な文章にし、Facebookにアップロードされた動画があれば動画だけ載せるように推奨されてました。関連記事はひいきの媒体(The New York Times、Time、Varietyなど古参の媒体)から選ぶようにも言われてたそうです。逆に日常的にスルーする媒体(World Star Hip HopThe BlazeBreitbartなど)もありました。潰すように明確に指示されたわけではないのですけどね。

見出しや概要には、Twitterという言葉は使ってはならないというルールでした。これには少し前にみな「Twitterが全部『ソーシャルメディア』に置き換えられている!」と異変に気づいて、TwitterCOOまでもが「名刺の肩書き、ソーシャルメディアCOOに変えようかな」とツイートしてます。

あと、キュレーターにはトピを「無効化」する(ボツにする)権限もあって、取材した記者たちはみな毎日のように権限を行使していたそうです。伝統的媒体が3社以上話題にしてなければボツとかいう基準はあるんですが、それ以外はグレーで、キュレーターはこれという明確な理由がなくてもボツにできました(権限悪用はなかったとみな言ってますが)。

2015年はじめ、トレンディング・ニュースが始動した当初は明確な職務規定もなく「全部ゆるゆる」で「業務の基本を教えられたあとは、もう実地だった」といいます。

履歴書の職歴に書いてはならない

そのうちノルマがきつくなって、どっかのコンテンツファームみたいな状態に。概要と見出しのノルマは通常1日20本で、1本書くのにかかる所要タイムまで測られました。「共有文書を見れば、全員の書くスピードがわかるんです。オフィス同士で競争させて毎日何本のトピを完了できるか様子を眺めてるようだった」

激務で燃え尽き症候群が蔓延し、「チームの当初メンバーは大体辞めていなくなった」、「みな[ジャーナリズム大学院の]新卒で腰掛け。クビになった人も約1名知ってるけど、大体は自分から辞めるか、報道媒体から引き抜かれていった」のだそう。

上司から契約記者たちには、Facebookで働いていたことは一切履歴書や公開用プロフィールに書いてはならないと言い渡されていました。「内情は極秘にしておきたい感じでしたね。文章もなるべく受け身で書かなければならなかったし。見出しがみんな宇宙人みたいな受動態なのはそのせいです」

まあ、これはLinkedInを検索すると結構みな書いちゃってますけどね…。

なぜ人力なことをひた隠しにするのか?

これは想像ですけど、たぶんフェイスレスにすることで、Facebookはバイアスのないニュースランキング処理という幻想を植え付けようとしてるんじゃないかと。ノンポリのマシンが100%記事を仕分けて選定してるっていう印象。これをとても大事にしているんだと思いますよ。

Benjamin Wagner編集長率いる同社メディア部門の成否は情報媒体としてのプラットフォームの信頼性にかかってます。新聞が1面の記事を選ぶみたいなノリで、トレンディング・トピックを人力で選んでるなんて知れたら、政治色ゼロの報道媒体というイメージが台なしですからね。

ただ、人力が永久に続くとは元記者たちも思ってなくて、「最終的にはロボに置き換えるつもりなんじゃないか」という印象を受けたとみな言ってます。どうしてそう思うのかというと、会議でも上司が「もっとプロセスを合理化しないといけない」と事あるごとに言うようになったから。そういうの見てると、ああ、自分たちは最初からマシンに置き換えられる運命で、そのマシンの調教のために雇われただけなんだな…と感じてしまうらしいんですね。「実験台にされた気分でした。アルゴリズムが賢くなれば、人間はお払い箱」

トレンディング・トピック専属チームの内情と今後について広報にも取材してみたんですが、「噂や憶測にはコメントできません。ほかの契約社員同様、トレンディング審査チームの契約社員にも正当な報酬としかるべき福利厚生は提供しています」というお返事でした…。

辞めた記者たちによると、残留組も編集部がいずれは廃止になりそうな気配を感じてるそうです。約20人いたチームが今年に入って少なくとも8人がクビになったきり、人員補充もないんだそうでして。「最初は最低1年の約束で雇われたのに、3ヶ月で6人もクビになりました。解雇理由の説明は一切なくて、ただ『人員削減だ』と言われておしまい」、「けっきょくは実験のひとつに過ぎない。ただ試験運用してエンゲージメントが増えるかどうか確かめてる。彼らが欲しいのはエンゲージメントだけなんだよ」と元記者たちは言ってますよ。

Facebookに上位表示されるトレンド記事は10億人のクリックを動かし、ニュースの未来(何をどの媒体で読むか)を動かす欄ですが、それを動かしているのは地下に缶詰の20代の若者と、その動きを学んだアルゴリズムだったというわけです。なんだか元キュレーターたちのこの言葉が身につまされますね…。

「彼らの手にかかればニュースもただのサイエンス」

「記者なんてアルゴリズムの奴隷ですよ」

Illustration by Jim Cooke

Michael Nunez - Gizmodo US[原文

(satomi)