「星座の導きのもとにマヤ文明はありません。ただの畑だよ」中学生の研究について大人が検証

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「新発見」って、いつも落とし穴と隣りあわせなんですよね。

星座の位置とマヤ文明の古代都市の場所が対応していることに気づき、衛星写真から「失われたマヤの都市」をメキシコに発見した、カナダの15歳の少年William Gadouryくん。カナダ宇宙庁やニューブランズウィック大学のリモートセンシング技術の専門家の後押しもあり、功績のメダルをもらったりサイエンスジャーナルへの寄稿や国際会議にも招待され、一躍有名になりました。

しかし、ほかの専門家たちからは「ありえない」という指摘が。少年が主張した「失われた都市」の場所を衛星写真で見てみると、その特徴が今は使われていないトウモロコシ畑のようだというのです。それに、マヤ文明の人々はたしかに天体のことに詳しかったけれども、星の位置で居住地を作る場所を決めたりはしなかっただろうというのが彼らの主張です。

リモートセンシングの誤用

「若い少年の努力は褒めたいですし、マヤ文明やリモートセンシング技術にこんなに若い人が興味を持ってくれることは嬉しいです」と、南カリフォルニア大学ドロンスライフ校の文化人類学者でリモートセンシングの専門家Thomas Garrisonさんは言います。「ただし、リモートセンシングにおいては実際の現地を知っていることが必要なのです。つまり、衛星写真を見るときにはそこに何が写っているはずなのかをまず知っていなければなりません」

今回のケースにおいては、長方形の土地やその中で二次的に成長している植物の様子から、明らかな焼き畑(Milpa)の跡だとGarrisonさんは指摘します。Milpaは、ナワトル語の「トウモロコシ畑」に由来する言葉で、主にメキシコのユカタン半島(今回、失われた都市があると主張されていた場所)、そしてメソアメリカ全体で使われた穀物の耕作システムです。

「おそらく10〜15年ほど休耕しているのでしょう」と、Garrisonさんはギズモードに語りました。「このことはマヤの低地に行ったことのある人にとっては、当たり前のことなのです。この若い学者が、大学レベルの探究によって次の発見を重要なものとすることを願っています。発見すべきことはまだまだあるのですから」

Garrisonさんはギズモードに、グアテマラにある似たような特徴の土地の写真を見せてくれました。このMilpaは最近になって耕作放棄されたそうです。

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Image by Thomas Garrison

星座と都市を結びつけるのは突飛すぎる

テキサス大学オースティン校にあるメソアメリカセンターの文化人類学者David Stuartさんもこれに同意しましたが、彼のFacebookへの書き込み(現在は削除済み)はGarrisonさんよりも厳しいものでした。

彼は少年の行ないを「ジャンク・サイエンス」としたうえで、「こんなふうにパターンを認識するのは、ロールシャッハテストみたいなやり方だ。だって土地がどこにでもあるように、星だってどこにでもあるんだから」と指摘しました。「Google Earthで見た正方形のものは、人工だし、古い休耕地、もしくはMilpaだ」

ではマヤはどこに住んだか?

スロベニアにある人類学と空間の研究施設のIvan Sprajcさんも、マヤの都市と星の位置が関係しているという考えは「まったく」ありえないとしています。

「マヤの人々が天体に精通しており、特定の星や星座(アステリズム)に興味を持っていたことは私たちもよく知っています」と彼はギズモードに語りました。「しかし、星座がマヤの居住地を示しているというのはおかしいですね。マヤの星座というのはほんのわずかしか特定されていませんし、そのわずかなものについてもいったいどの星がいくつで各星座を構成しているのかわかっていないのです」

そのため、Sprajcさんはマヤ文明の都市と星座のあいだに関係があると結論付けるのは不可能だと言います。さらに、人類学者たちは中央ユカタン低地におけるマヤの居住地の位置に影響した環境的な要因をいくつか知っているのです。例えば、小さな湖が近くにあることなどです。この湖は「Aguadas」として知られており、カルスト地形環境下では唯一の水源でした。また、マヤの都市もやや高い位置で、 集約農業に適した「Bajos」とよばれる湿地の端に作られています。

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グアテマラのMilpa(Image by Fabian Hanneforth)

マヤは天文学の何を見ていたのか

「マヤにとって天文学が重要でなかったと言っているわけではありません。反対に、彼らは空に対する鋭い観察眼を持っていました。日食のサイクルを知っていましたし、金星やほかの惑星の会合周期の重要な瞬間を予測することができたのです」

Sprajcさんは、天文の知識は建築や都市計画において重要な役割を果たしたのだろうと言います。ただし、それは(星座ではなく)地平線上の観察に基いたもの。つまり、天体、特に太陽が昇り、そして沈む大切なポイントにおける現象です。これは重要な建物の向きを決定したり、それぞれの位置関係にも影響力を持っていました。

最後にSprajcさんは、少年がグアテマラ北部にあると主張しているマヤの都市の座標が、実際にはメキシコのカンペチェ南部であることを指摘しました。そしてGarrisonさんやStuartさんと同じく、衛星写真に写っていたものは古いMilpaだろうとしています。古いと言っても数年前に耕作放棄された土地で、「100年も前のものではない」とのこと。

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以上の専門家たちの意見に基づくと、カナダの少年が発見した緑の四角い土地は、おそらくマヤの建造物ではありません。でもGarrisonさんが言ったように、本当の判断をするためには現地に行ってみるしかないということも忘れてはいけません。

Gadouryくんの情熱やクリエイティビティは絶対に賞賛し続けられるべきです。しかし、彼に協力したカナダ宇宙庁や、研究を裏付けたというArmand LaRocque教授の責任は重いでしょう。

Top Image by Google Earth, CSA

George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(斎藤真琴)