太陽フレアで人類滅亡…ならぬ、生命の起源だった? NASAの研究

太陽フレアで人類滅亡…ならぬ、生命の起源だった? NASAの研究 1

巨大なエネルギーが窒素を生み出したのかも。

巨大な太陽嵐が地球を襲うと、地球全体が停電であらゆるテクノロジーが止まり、我々は暗黒時代に戻ってしまうかもしれません。幸いそんなことはめったに起こらないんですが、40億年ほど昔には、そんな激しい現象がわりと平常運転でした。でもそれは世界の終わりを意味するのではなく、むしろ生命の始まりだったかもしれないんです。

Nature Geoscienceに掲載された新たな論文では、そんな興味深い結論が導き出されています。その研究が根拠としたのは、これまでNASAのケプラー宇宙望遠鏡が捉えてきた若い星の観測結果です。若い星では爆発的な活動が活発で、スーパーフレアでものすごい量のエネルギーを放出しています。それに比べたら、最近の太陽系の太陽嵐なんて小雨みたいなものらしいです。

NASAの研究者、Vladimir Airapetianさんの研究は、もし40億年前の我々の太陽がその若い星たちと同じくらい活発だったとすれば、それが地球に生命をもたらした可能性があることを示しています。Airapetianさんのモデルによると、太陽スーパーフレアが我々の大気と衝突して化学反応を起こし、温室効果ガスなど生命に必要な物質を生み出したと考えられるのです。

「地球は40億年前、深い凍結状態にあったはずです」Airapetianさんは米Gizmodoに語りました。40億年前というのは、カール・セーガンとジョージ・ミューレンが問題提起した「暗い太陽のパラドックス」の時期です。セーガンらは、「40億年前の太陽は現在の70%ほどの明るさしかなかった(そのため地球全体の気温は氷点下だった)」とされるにもかかわらず、地球上に液体の水の兆候があったという矛盾を指摘したのです。「(これを説明するための)唯一の方法は、何らかの方法で温室効果が起きていたことを証明することです」とAirapetianさんは言います。

もうひとつ黎明期の地球に関して不思議なのは、DNAやRNAといったタンパク質形成に必要な窒素がどうやって集まったのかということです。太古の地球の大気は現在と同様、主に不活性な窒素(N2)で構成されていました。「窒素フィクサー」と呼ばれる特殊なバクテリアがN2を分解してアンモニア(NH4)に変える方法を編み出しましたが、初期の生物にはこれができなかったんです。

NASAの新たな研究は、これらふたつの問題に鮮やかに答えています。この研究は数年前、AirapetianさんがNASAのケプラーデータベースで星の磁気運動について調査していた頃に始まりました。彼は、太陽のようなG型主系列星が若い時期にはダイナマイトのように、原子爆弾100兆個分にもあたる圧倒的なエネルギーの波を頻繁に放出していたことを発見しました。人類が経験した最も強力な太陽嵐は1859年のキャリントン・イベントと言われるもので、世界中で停電を起こしましたが、大昔の地球が受けた衝撃はそれをはるかに超えています。

「それはクレイジーな量のエネルギーです。私自身もほとんど把握できないほどです」コーネル大学の宇宙生物学者、Ramses Ramirezさんは米Gizmodoに語りました。彼は研究には直接関わっていませんが、Airapetianさんには協力しています。

Airapetianさんはすぐ、この発見にもとづいて太陽系の初期の歴史をひもとけそうだと気づきました。そこで彼が計算したところ、40億年前の太陽は1時間に数十回ものスーパーフレアを放出していた可能性があり、1日1回以上地球の磁場をかすめていたのです。「基本的に、地球はつねにキャリントン・イベントを超える攻撃を受けていたのです」。

Airapetian氏は数値モデルを使い、古代の太陽スーパーフレアの地球への影響を示しました。それによると、太陽スーパーフレアは地球の磁気圏を劇的に圧縮するほど強くなり、また太陽の荷電粒子が地球の極近くの磁気圏に穴を空け、大気圏に入って窒素や炭素、メタンと衝突を起こしていたと考えられるのです。「つまり、粒子が大気の中で分子と相互作用を起こし、新たな分子を作り出していたのです…連鎖反応のように」Airapetian氏は言います。

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太古の地球に太陽スーパーフレアによるエネルギー粒子が降り注ぐイメージ(Image via Vladimir Airapetian)

これら太陽と大気の相互作用によって、二酸化炭素の300倍もの温暖化効果をもたらす亜酸化窒素が発生していきました。Airapetian氏のモデルでは、十分な量の亜酸化窒素があれば、地球の温度が相当高まったことが示唆されています。太陽嵐がひっきりなしに起こることでもうひとつ生まれたのはシアン化水素(HCN)で、これも地球表面に生命体の構成要素をもたらすのに役立った可能性があります。

「従来、窒素生成の要因は、雷や隕石だと思われてきました」とRamirez氏は言います。「この論文の一番クールなところは、誰も太陽嵐を(生命誕生の原因として)見る気がなかったということです。」

スーパーフレアで生成された分子たちが生命誕生の起爆剤として十分だったかどうか、その見極めは生物学者の手に委ねられます。そして、その調査はすでに始まっています。東京工業大学地球生命研究所などの研究チームは、Airapetian氏のモデルを使って、太古の地球環境をシミュレートする新たな実験を進めています。この実験でアミノ酸とRNAの元となるものが生成されれば、太陽フレアが生命誕生に貢献したというアイデアを強力に後押しするはずです。

Airapetian氏のモデルは、地球の生命の起源だけでなく、火星に生命が存在したかどうかという問題にも光を投げかけます。40億年前、火星に届く太陽の放射線は地球よりさらに少ないはずにもかかわらず、液体の水があったらしいのです。この研究はさらに、我々の太陽系をも超える影響がありそうです。

星のハビタブルゾーンを成立させるものが何なのか、我々はまだ探り始めたばかりです。現在のハビタブルゾーンの定義は、中心になる星の明るさだけを考慮しています。でも星の爆発活動を考慮に入れることで、系外惑星の大気形成とか、強い温室効果の可能性についても理解を広げられるかもしれません。

「この研究を突き詰めれば、星のエネルギーが生体物質を作り出すほどの現象を起こせるのかどうかがわかるでしょう」とAirapetian氏。「それがなければ、生命の存在は奇跡です」。

source: Nature Geoscience

Maddie Stone - Gizmodo US[原文

(miho)