次世代交通システム「ハイパーループ」、誰が何やっていつできそうなの? まとめます

実験成功やら、スロバキアから受注やら。

夢の音速特急といわれる次世代交通システム「ハイパーループ」の公開実験が成功しました! でもこれ、SpaceXのイーロン・マスクCEOがやってるような気がしてたけど、この実験はそうじゃないんですよね。じゃあ今回実験を成功させたのは、誰なんでしょうか? どういう技術が使われてるんでしょうか? それにここ1週間、ハイパーループ関係で別のところからも大きめの発表があり、誰が何やってるんだか…とこんがらがりそうです。

なので、この記事ではハイパーループ関連のプレイヤーごとに、現状をアップデートしてまとめます。これ以外にもハイパーループ的な技術を開発している大学とか、小規模なスタートアップとかがありますが、まずは以下4つの組織がコアと言っていいと思います。

Hyperloop Transportation Technologies

いつから?:2013年8月、イーロン・マスク氏は、真空のチューブの中を最大時速760マイル(約1220km)で走る浮上式鉄道について白書を発表しました。サンフランシスコからロサンゼルスまで30分で移動できるという夢の高速鉄道のアイデアに、ネット上は騒然となりました。10月にはHyperloop Transportation Technologies(HTT)が設立され、マスク氏のアイデア実現を誓いました。

誰が始めたの?:このプロジェクトは、Jumpstarter社によるJumpStartFundでのクラウドソースプロジェクトとして開始しました。JumpstarterのCEO、Dirk Ahlborn氏が、HTTのCEOでもあります。

社員は?:なし。でも、クラウドソースされた520人がストックオプションと引き換えに仕事をしています。

お金の出どころは?:HTTでは、プロジェクト参加者から出資を募っています。2015年末までに上場するという話だったんですが、延期されて2016年以内ということになっています。

誰がからんでる?:エンジニアリング企業のAECOM、真空技術を提供するOerlikon Leybold Vacuumが関わっています。またカリフォルニア大学ロサンゼルス校の建築学部は、1学期を使ってハイパーループ乗車体験をデザインするカリキュラムを実施しました。

この1週間の発表:HTTは、ローレンス・リバモア国立研究所のRichard F. Post氏が開発した「インダクトラック」という技術をライセンスしました。この技術の要素は、トラックのデザイン伝導体も、用途によるバリエーションに関しても、Post氏が特許を取得していて、HTTはそれを独占的に利用できるんです。

技術的優位性:ポイントは、受動的磁気浮上です。インダクトラックの特徴は、粒子加速器でも使われているハルバッハ配列という手法で磁石を並べていることです。それは乗り物用に実用されたことはありませんが、仕組みとしては可能なはずです。Post氏は、これによって磁石が自分の50倍の重さを持ち上げられると計算し、スムースな移動ができると考えました。HTTは特に、マスク氏が当初考えていたように貨物ではなく人間の輸送にフォーカスしているので、これが適しているはずです。

実現できそうな証拠:カリフォルニア州北部のクエイ・バレーで、5マイル(約8km)のテストトラックを建設する許可が降りています。ベースの技術という意味では、インダクトラックのテストバージョンはもう10年も前にできていました

最初に実現しそうな場所:スロバキアです。HTTはスロバキア政府と契約し、旅客用ハイパーループをいくつかの都市で建設することになっています。

専門家の意見:「HTTが使っているシステムは非常にクレバーです」物理学者のStephen Granade氏は言います。「優れている点はいくつかありますが、まず浮上システムには電力を使いません。車両は永久磁石を使い、日本の超電導リニアのように冷却した超電導磁石を使うのではありません。トラックには受動的コンダクタが埋め込まれています。このシステムでは列車を浮かせるために電力を使わないので、必要に応じたシステムの拡張がより容易になります。」

Hyperloop One

いつから?:2014年、Hyperloop Technologiesとして立ち上がり、2016年にHyperloop Oneと名前を変えました。

誰が始めたの?:Shervin Pishevar氏と、元SpaceXエンジニアのBrogan BamBrogan氏が、ロサンゼルスにあるPishevar氏のガレージで創業しました。CEOのRob Lloyd氏はシスコの元プレジデントで、Hyperloop Oneには去年から参加しています。

社員は?:160人います。

お金の出どころは?:Hyperloop Oneはテストトラック建設費用として3700万ドル(約40億円)の出資を受けています。それとは別に最近8000万ドル(約87億円)増資もしていて、その一部はフランスの鉄道システムSNCFによるものです。

誰がからんでる?:エンジニアリング企業のAECOMやArup、Systra、トンネル技術を持つAmberg Group(スイス)、ドイツ鉄道、Systra(フランス)などです。また有名建築家のビャルケ・インゲルス氏も協力しています。取締役会には元ホワイトハウス首席補佐官のJim Messina氏、Xプライズ財団創設者のPeter Diamandis氏も加わっています。

この1週間の発表:Hyperloop Oneは、その推進技術をフルスケールで公開実験し、成功させました。テストトラック上の「スレッド」が約2.5Gの加速度を出し、砂の上で停止しました。まだブレーキはできてないんです。

技術的優位性:スピード、少なくとも開発のスピードが速いです。Hyperloop Oneは後発ながら、プロトタイプと最初のテストトラックができるまでに16カ月しかかかっていません。今はラスベガスにテスト施設があるのに加え、ロサンゼルスの工場も拡張中で、これからチューブも開発されます。2015年には、Hyperloop Oneはまず貨物にフォーカスし、次に人間を対象にすると発表がありました。その方が進めやすいからです。

実現できそうな証拠:こちらでご覧ください。

最初に実現しそうな場所:ストックホルムとヘルシンキ、ポートオブロサンゼルス、スイスでフィージビリティ・スタディが進んでいます。

専門家の意見:Hyperloop Oneは「浮上テスト施設」を構築済みで、それが動いている様子はFacebookページでも見られますEngineering.comには、エアベアリングを真空に近い状態でテストしたことについてのインタビューもあります。ただ前出のGranade氏いわく、Hyperloop Oneが浮上方式に何を使うかはまだわかっておらず、それまではシステム全体を評価できません。「以前、彼らはエアベアリングを使おうとしているように見えました」と彼は言います。「The Engineering.comの記事では、彼らは磁気浮上方式も調査していたようです。私も、彼らがその方向に行くと見ています。受動式磁気浮上方式は、エアベアリングに対していろいろメリットがあります。」Granade氏はHyperloop Oneに対し、テスト成功後もいくつか疑問を持っています。「彼らは今、リニアアクセラレーターとモーターのテストをしていますが、他のサブシステムはどうなっているんでしょうか? 浮上サブシステムのどこにあるんでしょうか?」

MIT Hyperloop

いつから?:2015年です。MIT Hyperloopは、今年Texas A&M大学とSpaceXのスポンサーで行われた、ハイパーループ車両コンセプトの設計コンペで優勝したチームです。

誰がやってる?:マサチューセッツ工科大学(MIT)のメカニカルエンジニアリング部門、航空学・宇宙航行学部門の教授陣です。

社員は?:なし。MITの学生28人がチームに入っています。

お金の出どころは?:スポンサーがたくさんいます。そこにはHyperloop Oneも入っています

誰がからんでる?:アドバイザーにはMagplane Technology, Inc.のCEOであるBruce Montgomery氏、Magnemotionのテクノロジー担当バイスプレジデント、Tracy Clark氏がいます。

この1週間の発表:5月13日、ポッドのデザインが発表になりました。

技術的優位性:と言いますか、MITですからね〜。

実現できそうな証拠:設計コンペの一環で、今年夏にSpaceXのテストトラックでポッドをテストすることになるはずです。デルフト工科大学やウィスコンシン大学、バージニア工科大学、カリフォルニア大学アーバイン校もそのテストに参加する予定です。

最初に実現しそうな場所:MITのポッドデザインはSpaceXのテストトラックと連携して進んでいるので、SpaceXのコンセプトに包含されることになりそうです。ただ現状では、リアルに応用される予定は見えていません

専門家の意見:今あるのはポッドのデザインだけですが、MITのチームはハルバッハ配列の磁石を使って車両を浮かせることもしています。Granade氏は、この方式にはいろいろな利点があると言います。「1980年代、物理学者のクラウス・ハルバッハが粒子加速器で使うためにこの配列を編み出しました。が、ハルバッハ配列は今はどこにでもあり、多くは冷蔵庫にくっついています。」とGranade氏。「冷蔵庫の磁石は、ハイパーループと同じ理由でハルバッハ配列になっています。ハルバッハ配列では1列の磁石を同じ方向に並べた場合の2倍の磁場が得られ、片側はほぼ磁場がなくなるのです。」

SpaceX

いつから?:2002年創業です。

誰が始めたの?:起業家のイーロン・マスク氏

社員は?:5,000人、ただしそのほとんどはハイパーループとは無関係

お金の出どころは?:SpaceXにはGoogleと投資会社のFidelityが出資していますが、ハイパーループ関連の資金はマスク氏自身が出しているのではと思われます。

誰がからんでる?:テストトラック建設には、エンジニアリング会社のAECOMが選ばれています。

この1週間の発表:特にありませんが、Hyperloop Oneのテスト成功に対しては、マスク氏が「私の援助なしで成し遂げたことだ」とツイートしています。

技術的優位性:火星を目指してる会社なので、多分かなり優位性はあるんじゃないでしょうか。

実現できそうな証拠:2015年、マスク氏はテストトラックの建設を発表しました。当初はテキサスかと思われましたが、その後「カリフォルニア州ホーソーンにある本社に隣接した1マイル(約1.6km)のテストトラック」ということになりました

最初に実現しそうな場所:マスク氏はSpaceX自体にハイパーループを作らせるつもりはないようです。ただ、テストトラックは作っているわけで…。

専門家の意見:Granade氏は、マスク氏が当初提案したエアベアリングを使う方式に懸念を表明しています。「彼の手法では、車両の前側から空気を吸い込んでいました。でもチューブの中には空気が少ないはずだし、車両の空気抵抗を減らすには、極力空気を車両の空洞に入れないようにした方がいいんです」とGranade氏。「エアベアリングを動かすには圧縮空気の容器が必要になり、それが余分な重量になるし、受動式磁気システムに比べてかなりうるさくなります。」先日マスク氏は、車輪のアイデアが好きだと言っていたのですが、どうなるかはまだわかりません。

source: SpaceXHTTPR Newswire、Google特許検索(123)、Ars TechnicaAskmarEurekAlertEngineering.comYouTube

Alissa Walker - Gizmodo US[原文

(miho)