ボディカメラを装着した警官は暴行を受けやすいことが発覚

ボディカメラを装着した警官は暴行を受けやすいことが発覚 1

そしてカメラは常にオンじゃないと効果なし。

欧米では警察官と市民の間の暴力事件を減らすために警察官がボディカメラを装着している地域が急速に増えています。世間ではボディカメラ・テクノロジーが普及することで警官の責任が明確になり、それによって市民の安全が向上すると広く信じられています。が、実はその安全向上の根拠となるデータはとっても少ないんです。

警察のボディカメラに関するデータとしてもっとも参照されてきたのはカリフォルニア州リアルトにおけるもの。リアルトで行なわれた調査結果はボディカメラが有効である”根拠”として引用され、政府による多額の投資につながりました。しかしこれはリアルトという、警察官が30人しかいない人口たった10万人の地域におけるリサーチで、調査のためにコントロールされた条件下だったことを忘れてはいけません。この分野、結論に至るにはまだまだデータ不足なんです。

このデータ不足を解決するためケンブリッジ大学の犯罪学者たちと研究施設であるRAND Europeは英国と米国の8つの警察隊と協力をして調査をしました。結果はEuropean Journal of CriminologyJournal of Experimental Criminologyで発表されています。

参加した警察にはカリフォルニア州のベンチュラとリアルト、北アイルランド、ケンブリッジシャー、ウェスト・ミッドランズといった地域が含まれています。この調査では合計で10回のテストを行ないました。

調査に参加した合計2,122人の警察官たちはシフト毎にそれぞれ2つのグループにランダムに分けられました。ボディカメラを付けるグループと付けないグループを比較することで、ボディカメラが与える影響を調査したんですね。

合計で200万時間以上の勤務時間がこの調査の対象となりました。彼らの行動範囲を考慮すると、トータルで200万人がこの調査の範囲における合計人口となるそうです。リアルトでの実験に比べるとまさに桁違いの規模ですね。

ボディカメラをつけた警察官たちは市民と何らかのやり取りをする場合はすべて撮影するように指示され、撮影を開始する際は口頭でそれを伝えなくてはいけませんでした。

検証で明らかになったのは、ボディカメラを装着している警察官は暴行の被害に遭いやすいというもの。対応している相手が警察官に対して攻撃的になるという頻度が、ボディカメラを装着している場合は15%も高まったそうです。犯行の一部始終が撮影されている状況で、警察官に暴行を加えようなんて思わなくなるのでは...という予想を裏切る結果に専門家も驚いているようです。これには論文でもより注意深い調査が必要だと述べています。

研究者たちが考える理由にはボディカメラを付けていることでその警察官が「安全な(おとなしい)」人物だと認識された可能性がある、もしくは既に緊張状態が高まっている市民と警察という関係にさらに監視カメラが入ることでより激化してしまった可能性がある、としています。またカメラという証拠があるため、警察官が受けた暴行の報告数が増えたのかもしれません。なるほど奥深いですね。

また、全地域を総じて検証した場合、カメラが装着されていることによって警察官の武力行使が抑制されているという効果は見られなかったそうです。これも驚きです。地域ごとに分析すると、カメラ装着によって警察官の武力行使が減少したところもあれば、逆に増加したところもあるとのこと。増加している地域については研究者も「謎である」と言っています

1つの説としてケンブリッジ大学の主任調査官であるBarak Arielは次の可能性を述べています。

カメラと事前通告という組み合わせによって、やり取りが撮影されているということが人々に知られます。それによって関わった人々の振る舞いが変わってしまいます。例えば、もしも警察官がやり取りが始まってしまってから途中で撮影を始める、と通告した場合、それが刺激を与える結果となり武力行使につながるということもありえます。

確かにカメラがあるほうが相手が攻撃的になり、その結果警察官が武力を行使せざるを得なくなるというのは理解できます。

さて、この調査においては、ボディカメラをつけた警察官たちは市民と何らかのやり取りをする場合はすべて撮影するように指示され、撮影を開始する際は口頭でそれを伝えなくてはいけませんでした。しかしこのルールにもかかわらず多くの警察官たちは自分たちの判断で撮影を中断することがあったそうです。研究者たちはこの点についてさらに調べてみたそうです。

カメラを途中で切っていた場合と、ルール通り常にオンにしていた場合とで何か違いはあるのか?ということですね。

すると面白い事実が出てきたんです。

警察官がルールを守ってカメラを常にオンにしていた状態だと、カメラを装着していない状態と比べて武力行使の頻度が37%減少していたとのこと。しかし警察官が自分たちの判断で撮影を止めたり開始したりしていた場合には、カメラを装着していない警官グループと比較して、武力行使した警官の割合が70%も高くなっていました。

警察官が自分の判断で撮影を中断した場合、その間に警察官が武力を行使する傾向が高かったとのこと。カメラがオンの時とオフの時を比べるとオフの時により武力が行使されるわけですね。これは納得のデータです。

このため、研究者たちはカメラが常にオンになっていることの重要性を強調しています。またカメラの存在が逆に警察官に対する攻撃的な行動を高めるという証拠が出てきた今、「デバイスをどのように利用するのか、という点に注意しなければいけない」と注意を喚起しています。

いくつかの地域ではボディカメラを使用するのは良い考えではないかもしれません、そしてそれを確かめる方法はこういったテストを異なる場所で実施し続けることです。アイオア州で成果が出た方法が東京で上手くいくとも限らないからです。

とArielは今後の調査継続の必要性を述べます。

現時点では世界中で無統制な状態の社会実験が行なわれています。熱狂的な市民による議論や政府の支出がそれを支えています。ちゃんとした根拠というものは、新しいテクノロジーの採用になんとか遅れをとらずに証明されているにすぎません。

現在の世の中は、本当に効果があるテクノロジーなのかどうか、科学的なデータが出揃わないまま、どんどん取り入れられているということですね。

image by Chris Yarzab

source: European Journal of Criminology and Journal of Experimental Criminology

George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(塚本 紺)