2度目の重力波観測に成功!ついに「重力波天文学」の新時代へ

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これまで聞こえなかった宇宙の音が、次々と飛び込んできます。

アメリカのLIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)が、史上2回目となる重力波の直接観測に成功したことを発表しました。重力波の存在は100年前にアインシュタインが予言していましたが、ようやく2015年9月に初めて実現したばかりです。今回発表されたのは、それから3カ月ほど後、2015年12月26日に重力波が検知されたことです。これだけ短期間に2回も観測できたっていうことは、我々はもう重力波天文学という新たな学問の時代に突入したと言ってもよさそうです。

2回目の重力波観測

LIGOが初めて観測した重力波は、地球から約13億光年の距離にあるふたつのブラックホール、それぞれ太陽の29倍と36倍の質量をもったものの合体によって生まれたものでした。

一方2回目に観測されたものは、ふたつのブラックホールが合体した結果であることは共通していますが、1回目よりやや小規模なものでした。今回のふたつのブラックホールの質量はそれぞれ太陽の8倍と14倍、地球からの距離は14億光年でした。合体後には太陽の21倍のブラックホールが形成され、残る太陽1個分の質量が重力波エネルギーとして放出されました。

この発見は6月15日(現地時間)、米国カリフォルニア州サンディエゴで行なわれたアメリカ天文学会で発表されました。これに関する論文は、Physical Review Lettersへの掲載が承認されています。

「ふたつ以上(の重力波)が見られたという事実だけでも非常にエキサイティングです」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授で、Advanced LIGO構築プログラムを率いたDavid Shoemakerさんは言います。「これで、『うへー、本当に?』という見方から、『イエス、この道具は使える』に変わるでしょう」

重力波って何でしたっけ?

ちょっと待って、重力波って何でしたっけ?という方のために、ざっとおさらいしておきます。

宇宙にある非常に重い物体が激しく衝突すると、それは衝撃波を生じ、池にできるさざ波のように時空を渡っていきます。重力波と呼ばれるその波は非常に微かで、振れ幅は原子の直径の10億分の1ほどしかありません。でもその波は我々の周りに常にあって、それを観測することで、従来の電磁波を通じて見ている宇宙とはまったく別の宇宙が見られます。電磁波が宇宙のビジュアルだとすれば、重力波はその音楽だとも言えます。

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2015年9月14日に検出された重力波の信号(Image by Caltech/MIT/LIGO Lab)

ただ20世紀の時点では、それは仮説でしかありませんでした。非常に小さな波を検知するにはものすごく精密な設備が必要で、数km離れた鏡の間にレーザーを走らせたLIGOでさえなかなか成果を出せずにいました。LIGOが最初に稼働したのは2002年でしたが、何年間も決定的な結果は得られずにいました。でも2010年から2015年にかけての大幅なアップグレードでLIGOはAdvanced LIGOとなり、感度が3倍に向上しました。その後Advanced LIGOがデータ収集を開始してから間もない2015年9月、ついに重力波観測に成功したのです。

「最初の観測は非常に大きな出来事で、本当に驚きました」。Shoemakerさんは、9月14日未明にLIGOの検知器で波形を検知したときのことをこう振り返ります。

「最初はテストだと思いました」。今年2月、ルイジアナ州立大学の物理学教授でLIGO LivingstonのスポークスパーソンであるGabriela Gonzalesさんもこう言います。「数時間も経つと、テストではないことがわかったのです」

テストではないとわかっても、LIGOのチームは検証に数カ月を費やし、ありとあらゆるノイズや人的エラーの可能性を排除していきました。

2回目の成功の意味

最初の検出からたった3カ月でやってきた2回めのシグナルには、また別のハードルがありました。「対象の距離は同じくらいでしたが、質量が軽かったため、シグナルがもっと弱かったのです」とShoemakerさんは説明します。「ノイズになりうる、飛行機や雷、地震、人間がハンマーを落とした音、あらゆるものにより注意する必要がありました」

ただ、より小規模な衝突による重力波には検出に有利な点もありました。それは動きが遅いということです。12月26日、2回めの重力波がLIGOの検知器を通るのにかかった時間はまる1秒間で、1度目が一瞬だったのに比べるとずっと長かったのです。

この事象の間に起きたことを記録できたという意味で、これは非常に大きな意味があります」とイタリアにある重力波検知器のVIRGOを運営するヨーロッパ重力観測所(EGO)所長のFederico Ferriniさんは語りました。

2回目のシグナルは非常に長かったため、ひとつのブラックホールがもうひとつのブラックホールの近くで回転していることも観測できました。LIGOでの検知範囲の中で約50回ほどの回転でした。回転の分析から垣間見えたこの天体の歴史からは、このブラックホールが元々は中性子星で、その後、角運動量を増してブラックホールへと崩壊していったことが推定できました。でもその形成の歴史とダイナミクスをより深く理解するには、より多くの衝突するブラックホールのペアを分析する必要がありそうです。

そして、重力波検知器がちゃんと使えることがわかった今、その分析は可能です。

「1回目は、夢の実現でした。2回目が起きたからには、これからももっとあるでしょう。つまり我々は、本当に重力波天文学の時代に突入したのです」(Ferriniさん)

この2回だけでも、LIGOはすでにブラックホールの質量の分布や合体の頻度といった重要な知見を得ています。最初の観測の前には、太陽の30倍のブラックホールが存在するかどうかさえ誰にもはっきりわからなかったのです。2回目に検知された重力波源のブラックホールも、これまでX線で検知してきた太陽の数倍程度のブラックホールに比べれば巨大です。これからも続くであろう重力波によって、これまでの理論をさらに精緻化していけることが期待できます。

重力波はまた、光をまったく出さない天体の観測に使える初めての道具となります。「重力波は他のものとほとんど干渉しないので、発生源から我々のところまでまっすぐにやってくるのです」とShoemakerさん。「その結果、(ブラックホールや中性子星のような)天体の深い内部の動きを、電磁放射線では見られないような形で観測できるのです」

またはPhD Comicsが書いているように、「今まで耳が聞こえなかったのに、ある日突然聴覚がよみがえったようなもの」なんです。

今後の展開

これから数カ月、数年間でどうなっていくかというと、まずAdvanced LIGOの最初の観測活動は1月に終了していて、今はさらなる改良が加えられているところです。次の観測は今年秋に始まる予定で、感度は若干ながらさらに向上し、より広い範囲の宇宙空間からの重力波が聞き取れるようになります。すばらしいことに、私たちが住む3次元宇宙では、検知器の感度を2倍にすれば検知できる空間は8倍に広がるんですよ。

また、ヨーロッパでもLIGOに近い感度を発揮する検知器Advanced VIRGOが、今年中に稼働開始する予定になっています。下のインタビュー動画にVIRGOのスポークスパーソン、Fulvio Ricciさんが登場して語っているように、世界の反対側でも検知器が動き出せば、より正確に重力波源の位置特定ができるようになります。「数千km離れた場所に3つの観測地点を持てば、空の三角測量がより正確になり、(推定範囲を)数百平方度から数十平方度に狭めることができます」とFerriniさんは言います。

つまり将来的には、重力波源の方向に望遠鏡を向けたら、その発生源を特定できるかもしれないということです。

「これからより多くの検知と分析をして、ブラックホールの出どころについて解明できればとても面白いでしょう」とペンシルバニア州立大学の物理学者でLIGOのコラボレーター、Chad Hannaさんは言います。「重力波を検出できるようになった今、我々の銀河や宇宙に関するまったく新しい発見をもたらす情報源となっていくでしょう」

研究者は成功の次を見据える

最後に、米GizmodoのJennifer Ouellette記者が行なったLIGOとVIRGOの研究者へのインタビューでは、重力波観測にまつわる当事者視点のストーリーが聞けました。LIGOのエグゼクティブ・ディレクターのDavid Reitzeさんは、「1回目は『ラッキーだっただけかも』という感じでしたが、2回目になるともう『我々は観測所』という感じで、これからももっと検出できることでしょう」と実感を語っています。

Live AAS: Catching gravitational waves

Gizmodoさんの投稿 2016年6月15日

今回2回目の重力波検出は12月26日、クリスマスの翌日という微妙な日付でした。でもReitzeさんによれば、何らかの兆候があれば祝日でも誕生日でも再優先で駆けつける人たちがいてくれたために、このタイミングでの検出が可能になったそうです。

Ouellette記者は、重力波検出を宇宙空間で行なうプロジェクトLISAをどう捉えているかも聞いています。LIGOのReitzeさんやVIRGOのFulvio Ricciさんは、LISAは低周波数での重力波検知を得意としていて、より高周波を対象とするLIGOやVIRGOとは補完しあう位置づけになると言っています。

さらに今後の希望として、LIGOのReitzeさんは超新星の、Gabriela Gonzalezさんはパルサーの観測をあげています。超新星やパルサーからも重力波が発生するとされていますが、これまで観測された重力波の発生源は2回ともブラックホールの合体でした。観測に成功したからといってそこにとどまらず、研究者の人たちはもうそのずっと先を見ているんですね。

重力波検出に取り組んでいるのはLIGOだけでなく、VIRGOやLISA、日本のKAGRAなど複数のプロジェクトが進んでいます。彼らがときに競い合い、ときに協力しながらそれぞれの精度を高めていくことで、重力波検出はこれからもっと(良い意味で)当たり前になっていきそうです。これまで聞こえなかった宇宙の声がどんどん聞こえるようになって、宇宙の謎の解明も、ますます進んでいきそうです。

Image by The SXS (Simulating eXtreme Spacetimes) Project

Maddie Stone - Gizmodo US[原文

(miho)