ネタバレはそんなに悪いモンじゃない

※本文後半は映画「ユージュアル・サスペクツ」のネタバレを含みます。

映画やTVドラマや小説に関わらず、作品を鑑賞する楽しみを奪うと考えられているネタバレについて、米GizmodoのOuellette記者が考察します。

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ネタバレが忌み嫌われているのは周知の事実。ミズーリ・タイガースの元選手マイケル・サムが「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のネタバレをうっかりツイートしたとき、ネットでは炎上騒ぎになりました。最近では、恨みを持つ元恋人に毎週わざと「ゲーム・オブ・スローンズ」のネタバレを送る女性の記事がありました。

でも、私たちは冷静になったほうがいいかもしれません。というのも、好きな番組はネタバレでより楽しくなると判明したからです。カリフォルニア大学サンディエゴ校の心理学教授、Nicholas Christenfeld氏による過去5年ほどの研究が伝えようとしているのはそういうことです。

Christenfeld教授はネタバレについての最初の研究の成果を、2011年にPsychological Science[PDF]に発表しています。

Christenfeld教授の共同研究者、Jonathan Leavitt氏は、参加者に異なるジャンル(皮肉的なドンデン返しがある、ミステリー、そして文芸作品)の短編小説を3つ読んでもらい、読み終わった後にどのくらい気に入ったか評価してもらう実験を行ないました。小説のなかにはネタバレされていないもの、ストーリーが始まる前に結末をばらすもの、そしてネタバレがストーリー中に組み込まれているものがありました。実験の結果、ほとんどの参加者たちはネタバレされた小説のほうを「より楽しんだ」と回答したのです。 

Christenfeld教授は2年後にScientific Study of Literature[PDF]で論文を発表しました。このときの実験では、結末をネタバレされた参加者たちはストーリーを読み終える前に楽しんだ度合いを評価しました。これには、より楽しく感じられたのが結末を知っていることのみに起因しているのかを測る意図がありました。しかしそういうわけじゃなかったんです。というのも、ネタバレされた結末に達する前、ストーリーの途中で楽しみ具合を評価するように求められても、被験者たちはネタバレされていないストーリーよりもネタバレされたほうを楽しく感じていたからです。

しかしネタバレをストーリー中に組み込んだ場合は、そうはいきません。単に話の展開が悪くなるだけです。

ネタバレはそんなに悪いモンじゃない 1

じゃあ何が起きているのか? ネタバレのおかげでプロットに注意を払い過ぎることから解放され、それによって本や映画、TV番組のより豊かな側面にフォーカスできるとChristenfeld教授は考えています。つまり初回(もしくは2回目)の視聴時に見逃してしまったキャラクターの成長や、感覚に訴えるような描写もしくは細かなディテールのことです。

教授に言わせれば「(カリフォルニア州の)ビッグサーを通ってカリフォルニア州道1号線を運転していたとして、その道をよく知っているなら周りを見渡して景色や波で戯れるカワウソたちを眺めることができる」。しかし、その道のりを運転するのが初めてだと道路のカーブに集中しなければならないので、風景の細部を見逃してしまうということです。

Christenfeld教授はその良い例として、最後のシーンまで悪役カイザー・ソゼの正体が明かされない、1995年の映画「ユージュアル・サスペクツ」を挙げています。

※ネタバレ注意※

カイザー・ソゼの正体はケヴィン・スペイシー。でも、このネタバレを知っているからといって、この映画を観る楽しみが台無しになることはないと教授は言います。

ある芸術作品についての知識があると、その作品をもっと楽しめるということだ

Christenfeld教授は、動画の中でこう語っています。「『ロミオとジュリエット』を観に行くとき、エンディングを気にする人はいないでしょう。誰もがその結末を知っているからです。ロマンチックなストーリーをハッピーエンドかどうか心配しながら観たり、探偵がちゃんと解決するかどうかを本当に気にしながら観たりしている人はいません。映画はエンディングがすべてではないのです。現に同じ映画を何度も楽しんで観る人がいますよね。観るたびにその楽しみは深くなるんです」。

好きな映画やTVドラマを繰り返し見るのを楽しむ者として、教授が言っていることはわかります。でも次に観たときに楽しいのは、初めて観たときに自分が驚いたこと思い出すからでもあるんです。言い換えると、何度も観ることでより豊かで深い鑑賞を得られるようになっても、初めて観るときには特別な何かがある。「ゲーム・オブ・スローンズ」のこれまでのシーズンを繰り返し鑑賞するのを楽しんでいたとしても、ロサンゼルス在住の身としては最新エピソードが放送された日の晩は、東海岸の視聴者からのネタバレを避けるためだけにツイッターを見ませんからね。 

Christenfeld教授は、これを興味深い論点だと認めてくれました。「我々の実験においてネタバレされたストーリーのほうが好まれた理由は、被験者がネタバレなしで初めて読んだときのノスタルジックな記憶が思い出したからではありません。なんせ、彼らがそれを初めて読んだのは実験のとき(つまり、ネタバレされたとき)だからです」と教授は言います。「一度ストーリーを読んでしまったら、それはネタバレされたことになります。しかし、もし何度も繰り返し読んでいれば、そのうち1回は、再びネタバレされていないような気分で読むことができるというわけですね」

ネタバレはそんなに悪いモンじゃない 2

さらに実験を行なえばこの側面は調査できます。被験者たちが繰り返しの読書体験を最大限に楽しめるよう、読書の間隔を十分にあけて何度もストーリーを読めばいいのです。Christenfeld教授はこれを「やってみる価値のある実験」だと述べました。結果を楽しみに待つとしましょう。

source: University of California, San Diego

Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文

(たもり)