壁もテーブルもグラスも全部、氷でできたアイス・バーが砂漠の真ん中で営業中

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ラスベガスのマンダレイ・ベイにあるMinus 5 Ice Barのインテリア。中にあるものはグラスに至るまで全部が氷で作られています(Images: Minus 5)

暑い日々が続きますが、ここで幻想的な氷の世界に潜入!

ここは、120トンの透明な氷で作られたバー。壁やテーブルに椅子、そしてラスベガスのスカイラインのレプリカや「ゲーム・オブ・スローンズ」のファン用の鉄の玉座といった彫刻にいたるまで氷でできています。ラスベガスにあるMinus 5 Ice Barの中に入るのは、まるで実写版のディズニー「アナと雪の女王」の一場面に足を踏み入れるようなものです。 

エルサだったら、氷点下の店内もさぞ居心地がいいことでしょう。でも私たちが氷製のグラスで出される特製カクテルを味わうとなると、防寒のためにパーカーや手袋、帽子を身につける必要があります。総支配人のRupert King氏いわく、「飲み物はオンザロックではなく、インザロックと言いたいんです」とのこと。毎晩、北のオーロラにインスパイアされたLEDのライトショーも開催されるそうですよ。 

アイス・バーがカタチになるまで

Minus 5の代表取締役であるNoel Bowman氏が同バーの着想を得たのは、ある冬にヨーロッパにある季節限定のアイス・ホテルを訪れたときでした。そこは、建物全体が氷のブロックでできており、温かくなると溶け出し、毎年建て直されていたのです。そのホテルには小さなバーがあり、それの常設バージョンを作ったらイケてるんじゃないかと彼は思ったそうで。そうして彼はそのアイデアをマンダレイ・ベイに売り込んだのでした。「彼らを説得するのに一年ほどかかった」とのこと。

Minus 5の最初の店舗は、ボトル・サービスがついたVIPバーというものでこぢんまりとしていました。しかしBowman氏はすぐに、典型的なナイトクラブというよりも斬新なアトラクションというコンセプトのほうがうまくいくと悟りました。そして、新たに改装されたアイス・バーでは、平均して30~45分ほど滞在する利用客たちがドリンクを飲み、氷の彫刻を眺め、Facebookに載せるための写真を撮影してもらうのです(バーに携帯は持ち込めませんからね。その理由はのちほど)。

人工的な氷の世界のバーは大人気観光スポットになりました。Bowman氏はいわく、今や、ベガスと気候の異なるニューヨークにもMinus 5の店舗があるとのこと。「冬の真っただ中、寒風が吹きすさんでいては外よりもアイス・バーの中のほうが暖かいこともある」 

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防寒のために毛布、手袋、パーカーや帽子が提供されます

氷にまつわる、あれこれ

バーの氷すべてを維持するという技術的な挑戦は注目に値するものです。問題になりえるのは、熱よりも湿度なんだとか。ヴァージニア州リッチモンドにあるThe Tin Panの共同経営者兼チーフ・カクテル・メーカーであり「Craft Cocktails at Home」を執筆したKen Liu氏は、Minus 5のような氷点下の場所では空気中の湿気はゼロに近いと指摘しています。米Gizmodoに「それによって温度の感じ方が変わるかもしれません」と語ってくれました。「ベガスに建てたのには、それなりの理由がある」と言うBowman氏によれば、湿気が低いのは機器にとっては非常に良いことなんだとか。「ここはとても乾燥しているし、冷却システム内に湿気が入ってしまうと部品や機械が凍ってしまうので、湿気はシステムに損傷を与えかねないんだ」とのこと。

Minus 5の冷却システムはニュージーランド製で、外気温度や周囲の熱、収容人数と彼らが発する身体の熱などのさまざまな要因を考慮すべく、完全にコンピューターで制御されています。防寒具やグローブ、そしてバーの中での携帯電話のような電子機器の使用禁止も少しは役に立っているのです(90台の携帯は結構な量の熱を発しますからね)。しかし利用客はMinus 5では氷を触りたくなるし、温かいコートを脱ぎたくなるもの。「一度コートを脱いだら、体熱が逃れてしまう」とBowman氏。 

さらに昇華の問題もあります。氷点下という状況では、時間がたつと氷は蒸発してしまうのです。「冷凍庫に大きな角氷を入れたとして、長い間それを放置すれば、なくなってしまいます」とLiu氏。「そのため家具が氷で作られていると、ゆっくりと消えていってしまうのです」

「まずは@Minus5IceBarに行く。あとは帰りたくなるまで、そこにいること」

Bowman氏はその問題を認めています。利用客が手袋を外して彫刻を触ると特に氷は溶けやすいもの。そのため、できる限りすべてが元の状態を保てるよう、地元の氷彫刻家が氷の手入れをしています。特に擦り減りがひどいセクションは作り直され、さらに2年ごとにバー全体が溶かされ、新鮮な氷で建て直されるのです。

氷の作り方も重要になってきます。Liu氏によると、急激に凍らせて氷を作ると結晶がやみくもに形成されてしまい、濁った氷ができてしまうとのこと。水が急激に膨張すると、できあがる氷には線やヒビが入ります。不純物も氷を濁らせてしまいますが、Liu氏いわくそれに関しては過剰なミネラル分よりも気泡が原因なんだとか。そういったわけで、余分な空気や気泡を入れない工程を使って、Minus 5の氷は適温の蒸留した水から作られるのです。   

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Minus 5の複雑に彫られた氷の彫刻と、氷のカクテルグラスで出されるカクテル

氷点下という空間でのカクテル作り

氷点下という環境では、充実したカクテルのラインナップを用意するのも大変です。アルコールの凍結温度は他の液体よりも低いので、それは問題じゃありません。しかし、氷のグラスでは塩が溶けてしまうので、マルガリータのフチに塩を飾れません。缶が暴発してしまうので、炭酸はNGです。新鮮なレモンやライムは凍ってしまうので、昔ながらの添え物のことは忘れてください。フルーツ・ジュースが使われるのですが、20分毎に振ってあげないとみぞれっぽくなってしまいます。 

これでは提供できるカクテルの種類が限られると思うかもしれませんが、King氏によると、最近のフレーバー・ウォッカが増えたことに恵まれ、これまでよりも幅の広いドリンクを提供できるようになったとのこと。「アブソルートとそのフレーバー・ウォッカ6種に、グレイグースとそのフレーバー2種しかなかった15年前には想像できませんでした」と振り返ります。つまりMinus 5のほとんどのカクテルがウォッカベースですが、利用客は好きなアルコールをリクエストできるそうですよ。

このバーの看板カクテル「スノーフレーク」はMinus 5版のセックス・オン・ザ・ビーチ。チェリー・ウォッカ、ピーチ・スナップスホワイト・クランベリー・ジュースとオレンジ・ジュースを合わせています。もう1つの「アイス・マン」はピニャ・コラーダをアレンジして、ココナッツミルク、パイナップル・ジュースにラズベリー・ウォッカをシェイクしています。ミント風味のモヒート・ラムのおかげで、氷点下の環境でバーテンダーが新鮮なミントの葉を混ぜる必要のないフローズン・モヒートもあります。そしてバーカウンターの外にある冷蔵庫に保存されているビールも、トレードマークである氷のグラスで飲めますよ。「街で唯一、飲むのに時間をかけるほどビールが冷えてくるバーと言えるのを誇りに思います」とKing氏。

「氷の女王のための玉座」

氷で作ったグラスを扱うときは、グラスを破損しないためアルコールを含むすべての液体が適切な温度でなくてはなりません。そのため、アルコール類はアイス・バーに持ち込まれる前に別の冷蔵庫で保管されます。「もし氷でできたグラスに温かすぎる液体を注いだら、ヒビが入ってしまいます」とKing氏。ちょうど角氷にぬるい炭酸をかけたら割れるようなものです。

そして分厚いコートと手袋を身につけた状態でカクテルを作るという難題もあります。Minus 5が工程を効率化したのはそのためで、ドリンクを作るのにバーテンダーが触れるのは多くても4つのアイテムのみになります。例えばウォッカ、割材、そして2種類のジュース、あるいはウォッカと2種のジュースなど。King氏いわく、このおかげで利用客を待たせずにドリンクを提供できるそうです。「カクテルを待つよりも、バーでカクテルが出来上がるのを待って体の芯まで凍えるほうが悲惨ですからね」

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気温が上がってきたから今だからこそ、俄然興味が出ます。日本にもできないかな。

Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文

(たもり)