人間の脳には「自動運転」が備わっている(ただしスマホながら運転では効かない)

人間の脳には「自動運転」が備わっている(ただしスマホながら運転では効かない) 1

運転中にボーッとして我に返り「よく事故んなかったなー!」となることありますけど、あれって無意識でも運転できるオートパイロット機能が脳に備わってるんだそうですよ? ただそれがスマートフォンをいじりながらだとまったく使い物にならなくなるんです。ヒューストン大学のIoannis Pavlidis教授とテキサスA&M交通研究所のRobert Wunderlich所長が率いる最新の調査で明らかになりました。

2014年、アメリカではスマホメールのながら運転で3,179人が亡くなり、43万1000人がケガを負っています。こういった注意力散漫がどう運転に影響するのかを見極めるため、調査では三大原因とも言うべき「スマホメール」、「ボーッとした運転」、「怒りの運転」に焦点を絞って、それぞれの運転に与える影響度を調べてみました。

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image: Thomas R Machnitzki

運転を補正する「第六感」

すると驚くべきことに、考え事や怒りは従来思われていたほど運転には影響がなく、むしろ運転能力が(ある程度)「改善される」ケースさえ見られたのです。これは人間の脳のある部位が「第六感」として働き、運転から注意が逸れるのを防いでくれるからだと研究班は見ています。

ただ、この超ありがたい第六感の認知プロセスもスマホのながら運転では完全にイカれてしまうのでした。スマートフォンの怖さが改めて示されたかたち。

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現実そっくりな運転シミュレーターでハンドルを握る被験者(Image: Malcolm Dcosta)

Scientific Reportsに掲載されたこの調査では、被験者59人に以下4つの状態を与えながら、運転シミュレーターで高速道の同じ区間を1回ずつ計4回運転してもらいました。パターン化しないように、4つの順番はぐじゃぐじゃに変えて。

①ふつうの状態

②難しい問いに答えながら(数学のややこしい問題など)

③頭にくる問いに答えながら

④スマートフォンでメールを打ちながら

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ドライバーの心理状態は熱探知などで検出した(Image: Jessie Villarreal)

運転者の心理状態は熱放射撮像などのバイオフィードバック機器で常時追跡し、運転への影響をチェックしました。従来の諸研究と違い、交感神経系の反応に直接的・間接的に関わる変数も考慮しているため、運転と感情や思考、スマートフォン操作についてのここまで包括的な研究はそうないものと思われます。

結果、3つとも「ハンドルはおぼつかなく」なったんですが、車線からはみ出したり、危ない運転に至るのはスマホメールのときだけでした。考え事しながらの運転と怒りながらの運転では「ハンドルがおぼつかなく」なりながらも、ふつうの運転のときよりもシャッキーンと直線軌道を描いて運転したのであります。人間の神秘ですのお。

なぜこんなパラドクスが起こるのか?

研究班が一番に疑っているのは、「前帯状皮質(ACC: anterior cingulate cortex)」の働きではないかということです。

Pavlidis教授曰く、ACCには注意力散漫を補う働きがあり、必要に迫られると自動的に起動するのだそうな。運転の場合は、ハンドルが左に大きく逸れると同程度の力で右に補正し、右に大きく逸れると同程度の力で左に補正します。こうしてACCで脱線が相殺されるので、やたらと真っ直ぐな運転になるんですね。驚くべきことに、そうして忙しく補正している間も、人間はそんなこととは露知らずボーッと運転してるのでした。

「言うなれば『オートパイロット』みたいなものが、みんな備わってるんだね」とPavlidis教授は取材に答えてくれました。

しかしながらACCが正常に機能するには、目と手の連携がうまく働かないといけません。スマホメールを打ちながらだと、そのフィードバックのループが切れてしまう。だからACCが起動エラーになり、ハンドルが大きく逸れても、そのまんまノーチェック。隣の車線まではみ出してブッブー馬鹿野郎!と怒鳴られて初めてハッとなる、というわけです。

「考え事してても、カッカしてても、第六感で人は安全に保たれるんですね。少なくとも運転軌道という意味では。スマホメールがここまで危険なのは、その第六感を台無しにするからです。自動運転車が出れば解決する問題かもしれないけど、ここで重要なのはそこじゃなく、人間には自動運転システムが備わっていて魔法のように働いてくれるんだけど、それさえも壊れる状況はあるってことですね」(Pavlidis教授)

もっとも、感情や思考にとらわれているときにダッシュボードに手を伸ばしたり、身体を使う行動をととると、「その途端、『補正機能』はエラーになります。もともと感情や思考によっておぼつかなくなっているハンドルさばきが放置され、危ない車線はみ出しになってしまう」と教授は釘を差していますよ。

もちろん感情で運転がまったく乱れないと言ってるのではありません。乱れることは乱れます。ただ邪魔や怒りが一定レベルを超えるまでは、運転能力にマイナスに響かないということです。少なくとも今回の調査結果ではそう出ました。

Pavlidis博士とWunderlich所長は今度は路上運転で調べ、注意力散漫が危険レベルに達すると警報が出るシステム「stressalyzer」の開発につなげたいと考えています。

top image by Pixabay

source: Nature

George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(satomi)