半無響室、スモークテスト…ダイソンの羽根のない扇風機がうまれるテストファクトリーがすごい

半無響室、スモークテスト…ダイソンの羽根のない扇風機がうまれるテストファクトリーがすごい 1

すごい。毎週300万ポンド(約4.8億円)も研究開発に投資しているってすごい。毎週って。

ダイソンから誘われて、シンガポールまでハイエンドドライヤー「Dyson Supersonic」と、新型コードレス掃除機「Dyson V8」のお話を聞きにいったギズモード取材班。そのメディアツアーの最後にDOPL(Dyson Operations Pte.Ltd,)テストファクトリーも見学させてもらいました。

このDOPLテストファクトリーはエアマルチプライヤーシリーズ専用の開発施設で、様々なテストルームが集まっています。新しい技術の開発と既存の技術の改善に、施設全体で取り組んでいるんですね。

冒頭の写真の場所、Acoustic Test Chamberはごらんのとおりの半無響室。壁、天井の音の反響を抑えた上で前後左右上下、計10台のマイクを半球状に配置して動作時の音量と周波数帯を計測します。もちろん低騒音になったからといってパフォーマンスが下がってしまっては意味がありません。試作パーツ単位で計測、組み上げて計測して、全体のノイズ量を減らすと共に、耳障りな周波数帯のノイズの低減にも力を注いでいるとのこと。それこそ若いエンジニアもテストに参加。モスキート音とされる周波数帯もチェックしています。

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空気中からPM0.1という、目に見えない有害粒子やアレルゲンまで取り除いてくれる空気清浄機能は、CADR Smoke Testでテストします。

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こちらは米国家電製品協会(AHAM)が定めた世界基準CADR(クリーンエア供給率)に準じたテストルーム。実際にタバコの煙(0.09~1μm)、ホコリ(0.5~3μm)、花粉(0.5~11μm)を部屋内に散布して実機を稼働。1分間でどれだけ有害な粒子を集塵できたか(清浄な空気を送り込むことができたか)を計ります。

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計測データはリアルタイムで確認可能でした。

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VOC Test Cubeでは、シックハウス症候群の原因になるともいわれているVOC(揮発性有機化合物)など、空気中に含まれるさらなる有害物質の除去性能をテストします。タバコの煙からはアセトアルデヒド、アンモニア、酸性ガスが生成されるので、それらのガスのスモークをテスト機材内に満たした状態からテストを行います。

なおシンガポールは屋内でのタバコの喫煙はアウト。罪に問われます。そのためこの部屋を作るときには役人さんとの交渉が大変だったそうですよ。

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テスト時に使われる検知管式測定器は1本1ドル。1回のテストで3種類×20本=60本消費するそうで、テストってコストがかかるんだなー、とビックリ。

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フィルターを装着した状態でどれだけの空気を吸い込めるのか。エアフローのテストが行われるのがPrimary Flow Test。試作機が仕上がったときに、一番最初にパフォーマンスを調べるのがこのエアフローの値だそうです。

ISO規格にマッチしたこのテスト機材はイギリスで作られます。実はシンガポール、マレーシア、イギリス3カ所の開発施設で同じ精度のチェックが行なえるとのこと。空気の魔術師たるダイソンが、空気の吸い込み効率をどれだけ重要視しているか見えてきました。

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Total Flow Testでは、吹き出した空気の動きと強さを計測します。特にエアマルチプライヤーシリーズは本体背後にある空気を巻きこむのが特徴となっているため、吸った空気量よりも多くの空気が流れてきていることを確認するのが重要だそうです。また全体的に均等の空気量であることもチェックされます。

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吹き出し口の前面にぶら下げらされたセンサーラインを上下かつ前後に動かしてチェック。風量の強さだけではなく、ユーザーがどのように感じるかといった視点でもデータをとっていきます。

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Relative Humidity Chamberは加湿機能のチェックに使われるテストルームで、金属で覆われた部屋の中に24個のセンサーを配置。部屋全体がムラなく変化していくかどうかを見ていきます。

またEnvironmental Control Performance Test Chamberという、ファンヒーター機能をテストするテストルームもありました。加温のテストは、本体前に置いた1つのセンサーの結果だけでいいそうですが、部屋全体がどのように暖まるかも重要視しているためここでは25個のセンサーを用いて温度変化を計っています。

いずれも、本体の背後にもセンサーを置いていたので、空気全体の流れのチェックも行なえるのでしょうね。

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羽根のない扇風機というキャッチコピーで一躍有名になったエアマルチプライヤーは安全性が高い、風量が多い、風ムラがなく肌当たりが優しいといった反面、初期モデルは音がうるさいと指摘されることがありましたが、二代目では本体内に特殊な空洞をもたせることでノイズ(特に耳障りな高周波)の低減に成功。さらに空気清浄機能付モデル、加湿機能付きモデル、ファンヒーター機能つきモデルといったように新たな魅力を持つ高機能ファンへと進化しました。

今回案内役をつとめてくれたJames Evon D'Souzaさん(左)と、Jean-Baptiste Blancさん(右)いわく、

「空き時間ってないんです。何度もいくらでも、標準規格のテスト基準を超えた状態でもテストしないと」

その日々の積み重ねが、ダイソン製品のブラッシュアップにつながっているのでしょう。

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ジェームス・ダイソンさんは「テストという行為には興味を示している」とのこと。また「机上の論理が知りたいのではなく、スピリットとアイディアが大事」でもあるということ。とにかくチャレンジが大事という姿勢。ダイソンからは問題解決のためのグッドなテクノロジーが今後も輩出されていくのでしょうね。

source: ダイソン

(武者良太)