AI時代、AppleはBlackBerryになってしまう?

AI時代、AppleはBlackBerryになってしまう? 1

AIでUIが土台から変わる、そのときAppleは追いつけない、それを思うと心配でおちおち眠れない、という著名開発者マルコ・アーメントさん(Tumblrのウォズ)のブログ記事が最近ちょっと話題でしたね。

かつてスマートフォン市場はResearch In Motion(RIM)のBlackBerryのひとり勝ちでした。そこにiPhoneが現れてゲームのルールを根こそぎ変え、RIMは2008年の絶頂期から株価が95%下がって1350億ドル(約15兆円)を失い(上図)、見る影もないまでに凋落しました。

RIMは当時最高のモノを作っていなかったわけではありません。Webをスマホに乗せる契約がキャリアからとれるとは思っていなかったし、それを前提とするOS作ってAPI出してApp Store立ち上げて…というグランドデザインもなかっただけ。でも2007年のiPhoneデビューをRIM創業者マイク・ラザリディスが自転車漕ぐのも忘れて愕然と見入った段階でもう勝負はついていたのです。あれから経営交代したって事業転換したってもう手遅れでした。

あれから10年。Amazon、Facebook、Googleはいま莫大なお金をAI、ユビキタスアシスタント、音声UIに投じています。次のUIはキーボードでも、タッチですらない、「目に見えない」UI。そう信じて賭けている。もし彼らの賭けが当たったら、Appleどうなっちゃうんだろう。今度は一朝一夕には追いつけない。Siri買収したりYelpと数年契約したり、そんな小手先の対処じゃ全然間に合わなくて、BlackBerryのように時代に取り残されちゃうんじゃないか、というんですね。

「サービスは下手」と言われるAppleですが、iPhoneアプリ開発者のマルコさん曰く、iMessage、プッシュ通知、iCloudみたいな単純なものは割と上手にこなしているのだそうですよ? 本当に苦手なのはビッグデータサービスとAIで、基本的なものはともかくとして、検索、関連度解析、分類、自然言語のクエリ処理とかいう高度なものになるとウェブ列強には遠くおよばず、特にGoogleとの差は広がるばかりです。

なのに差を縮めるため何かしてる気配は一向に見えてきません。ビッグデータのAI開発事業は規模が大きいので、もしやってたら自走車よりかなり目立つので噂になってなきゃおかしいのに。現状のままでいいと思ってるんだろうか、とヤキモキヤキモキするマルコさんなのでした。

AI部隊の増員はしている。でもネックはプライバシー

実際どうなのかというと、ロイターの昨年の報道では、AI部門はそれまでの数年で3,4倍に増員してるということでしたから、Appleがまったく何もしてないというのは当たりません。むしろAIと名のつくPh.Dは狂ったように採用しまくってると言った方が正確です。昨夏の調査段階ではAIの機械学習の専門家を少なくとも86名は募集していました。

ただ、AIの専門家の間では「プライバシー保護方針が厳し過ぎて、機械にフィードするデータがない」ことでAppleは敬遠されているらしいのです。

ユーザーのニーズを先読みする機械。これを育てるには膨大なデータの餌を日夜フィードしてやらないといけません。餌が多ければ多いほど先読みの精度は上がっていきます。ところがAppleの場合、ユーザーの個人情報保護のためクラウドに情報は上げないで端末で保存している部分が大きく、餌が圧倒的に足りないのです。元社員の話によると、一番データを長く保存できるSiriですら半年間で、ほかのサービス(Apple Mapsなど)に至っては15分ぽっきりというケースも。これではディープラーニングの研究分野(GoogleもAppleも注力してる)では、とても勝ち目はないんですよね。本気で追いつきたいと思うなら技術のことよりもまず、そのプライバシー保護方針を曲げないと、というジレンマに晒されています。

みんなの反応

さて、マルコさんの記事への現地の反応ですが、Webの重鎮マーク・アンドリーセン(Netscape創業者で現在はFacebook、eBay、HP取締役)は「Appleは安泰だろうけど一理ある。むしろ控え目にすぎるほどだ」とツイートし、Quoraのアダム・ダンジェロCEOは「RIMと違ってAppleは2000億ドル(22兆円)ある。AIが重要になったらガンガン使うんじゃないか。見ものだね」とツイートしています。確かに22兆円あれば買えないものはこの世にない気もしますわなぁ…。

一方、ジェフ・ベゾス(Amazon Echoが当たって自信回復)が投資してるBusiness Insider Blogは、「金で買えないこともある。Appleは次のMicrosoft(Nokiaを買収しても低空飛行)になるんじゃないかな」と書いてます。そう、凋落といえばRIMよりNokiaなんだった…時流とは残酷なもの…。

iPhoneも1月でデビュー10年。10年の収穫を元手に未来の頭脳を買って次の10年につなげないと、という節目なのかも。

source: Reuters, marco.org

(satomi)