映画「貞子 vs 伽椰子」白石晃士監督にインタビュー:裏テーマは「Jホラーをぶっ壊す」

貞子 vs 伽椰子

「見終わった時にテンションが上がる映画」を目指した作品。

人間だけでなく悪魔をも巻き込んだ(?)、世界最恐の怨霊を決める闘いが繰り広げられる映画「貞子 vs 伽椰子」。

今回は本作を手がけた白石晃士監督に、ホラーアイコンの頂上対決を描く上でこだわった点主演の山本美月さんと玉城ティナさんの魅力続編の可能性などについて、お話を伺いました。

白石晃士監督

白石晃士監督

――本作の製作が決まる前の「貞子 vs 伽椰子」のエイプリルフール企画は当時ご覧になっていたのでしょうか? また、本作の監督を任されるというお話が来た時の心境はいかがでしたか? その段階ではどういった作品にしたいと考えていたのでしょうか?

白石晃士(以下、白石):見ていました。「もし本当にやるなら私にやらせてもらいませんかね?」といったツイートをしたと思います。

監督の話が来た時はもう「よし!」と(笑)。特に最近の作品で言うと「貞子3D」がかなりお祭りな雰囲気で、内容もお祭りだったので、今回の「貞子 vs 伽椰子」はしっかりホラー寄りにしつつ、エンターテインメント性を押し出した、シリアスな作品にしたいと思いましたね。

――「リング」、「呪怨」シリーズに初めて触れたのはいつでしょうか? その当時はどのような感想をいだいたのでしょうか?

白石:「リング」はけっこう後追いで、レンタルビデオで見ました。「呪怨」も劇場公開版の前か後くらいの時期にビデオ版を初めて見たと思います。私はアメリカのホラーが好きなので、和製ホラーはあまり好んでは見ないんです(笑)。

でも、その頃には映画を作る側になっていたので、大ヒットしている、評判の高い日本産のホラー作品として一体どのように作られているのか?という風に考えながら見ましたね。

「リング」はホラーなんですけど巧みなミステリーの仕掛けがあって、やっぱり脚本がすばらしいです。原作ももちろん読みましたけど、そちらもすばらしかったですね。

「呪怨」は特にビデオ版の1作目が、いくつかの短編を時系列を前後させながら見せていて、その中から観客が何かを想像して立ち上ってくるものがあるという構成がすごく面白いと思いました。

――どちらの作品も当時の日本のホラー映画としては斬新な、幽霊の実体がもろに出てくる、ある意味幽霊がモンスター化した映画だと言われていますが、監督はどのように感じていますか?

白石:「リング」で言うと貞子はちょっとしか登場しませんし、なかなか登場しませんし、モンスター化していなかったと思います。「呪怨」はかなりもろに登場しますけど、出てきてもいつまでもいるわけではありませんよね。出てきたら襲って引っ込むというパターンなので、こちらもそれほどモンスター化はしていないんじゃないかなと思います。

本当にモンスター化したのは「貞子3D」じゃないですかね? 貞子が本当に4つ足のモンスターになって、バババッと迫ってくるのを見て、モンスター化したと感じました。

貞子

呪いのビデオを見た者を殺す貞子

――「リング」シリーズ、「呪怨」シリーズと本作では呪いの効果などの設定が若干異なりますが、これはどのような意図で変更したのでしょうか?

白石:特に「リング」に関しては呪いの法則がけっこう複雑なので、そういうところまでしっかり見せつつ、「呪怨」側の呪いの法則もしっかり見せつつというのはエンターテインメントの尺の中では煩わしいというか、余計なものだと考えました

貞子も伽椰子も噂が先にあるもので、「呪怨」では佐伯家という家族があの家に住んでいたという歴史があり、伽椰子の呪いが出来上がったわけです。今回の「貞子 vs 伽椰子」で言うと、これは裏設定ですけど、佐伯家というのは別になかったと考えていて、劇中にも「佐伯」という言葉も出てきません。あの家で死んだ家族がいて、女性と子どもの幽霊が出るという噂がある、という設定にしかしていないんです。由来はよくわからないけど、女性の幽霊と子どもの幽霊がいる家があって、そこに入ったら死んじゃうという、余計な情報を抜いた法則にしています

「リング」の貞子は本来、山村貞子という根っこのキャラクターがいて、そこからいろんなことが起きて呪いが成立するわけですが、「貞子 vs 伽椰子」では山村貞子という存在自体を省いています。超能力者がうんぬんといった話は完全になくして、貞子はなぜか「貞子」という名前がついている、みんながよく見る幽霊、幽霊のイメージそのままの髪の長い女性の怨霊が襲ってくるという、噂の中の存在です。

呪いのビデオ、VHSのテープはどうしても出したかったので入れました。もちろんただ出すだけではダメです。本作のメインターゲットである今の若い人は家にビデオデッキがありませんし、VHSを見ることってそうそうないですよね? でも「リサイクルショップに眠っている古いビデオデッキの中に入っていたVHS」という表現にすれば、彼らにとってはきっと得体が知れないので、恐怖表現として効果的だなと思いました。

もちろん「リング」の歴史という意味でもVHSテープを入れたい気持ちはありましたし、消えつつあるVHSの文化を映画の中に残したいという気持ちもありましたね。とはいえ「ビデオを再生して映っているものを見ると呪われ、電話がかかってきて、2日後に死ぬ」という程度にしか「貞子 vs 伽椰子」では踏み込んでいません。

どちらも呪われる法則だけを採用していて、歴史は完全に分断しているので、過去のシリーズとは違う世界の物語になっています。貞子に関しては、最初は「リング」と同じ7日間で脚本を書いたんですけど、それだと「呪怨」側の物語とのバランスがとれませんでした。

同じくらいのバランスで見せていると、「呪怨」では何かことが起きれば死なないといけませんし、日常ばかり見せているとタイトな尺の中ではつまらなくなってしまうので、いろいろと考えた結果、最初は3日になったんです。でも3日だと構成上の不都合があることがわかり、2日間へさらに短くして、両方の物語のバランスとか展開がちょうどよくなりました。しぼっていった結果という感じですね。

呪いのビデオ

猛威をふるう呪いのビデオ

――貞子側、伽椰子側のプロットは別々に書いて、時系列を合わせていったのでしょうか?

白石:そうではないですけど、別のエピソードが積み重なっていくような形にして、貞子側がある程度進んだら次は伽椰子側で、伽椰子側がある程度進んだら次は貞子側でと、本当に交互に見せていっているんですよね。だから短いエピソードの積み重ね風ではあるんですけど、作り方としてはおよその構成を決めたら順を追って考えていきました

伽椰子

家に入った者を殺す伽椰子

――貞子と伽椰子の2人を同じ世界観に突っ込むことに苦労はしなかったのでしょうか?

白石:かなり苦労はしました。特にどちらもワンピースっぽい服を着ていて、肌が白くて髪が長くてと、見た目が似ているので、そこの差別化を見た目や音などでつける必要がありました。

例えば、貞子がロングなストレートの髪の毛なのに対して、伽椰子は明確にボサボサな頭である。貞子のほうには汚れはあるけど基本的にはきれいな姿で血は一切付いていない。それに対して伽椰子は肌に血の汚れがたくさんあり、服にも血が乾いたような跡がたくさんあって赤茶けているなど、見た目の変化に持たせています。

でも、あまりにも映画の早い段階で2人が同時に画面の中に映ってしまってそれが連続すると、なんとなく見分けがつかなくなって面白くないので、やっぱり最後の最後にやっと対面するという展開にしました。

同じ画面に登場しなくても、交互に見せていたらどっちがどっちかな?ってなりますから、両方のキャラクターが立つように伽椰子はなるべく見せずに、貞子の印象を強めていって、かなり終盤に近づいたところで「さあ伽椰子が来ましたよ!」というバランスにはしています

伽椰子はなかなか出ないことで、いざ登場したときにインパクトがありますし、貞子は最初から出ることで見る人の中に、常に印象が残っているように作りました。貞子 vs 伽椰子&俊雄という1対2感が出ないようにも気をつけています

やっぱり一番意識したのは2人の目立ち具合ですね。両者を目立たせながら、きっちり対決するという空気を出すことと盛り上げることには気を使いました。

「貞子 vs 伽椰子」というタイトルを聞いた時に「見たい!」と思った人の盛り上がり、ワクワクを本編ではさらに上乗せで感じてもらえなければ絶対に見てがっかりしてしまいますよね。だからホラーとして作品は始まるんですけど、最後はゾッとして終わるというよりは、とにかくめちゃくちゃやって、テンション上がって、「なんか面白かったねぇ!」と盛り上がって会話がはずむような作品にしたいと思いました

やっぱり例えホラーでも、自分は元気になる映画が好きなんです。例えば「死霊のはらわた」とか、見ると元気になるじゃないですか? あんなに人が死んでるのにテンションが上がりますから。

俊雄

ちょっとサイズアップした俊雄

――アメリカのホラーがお好きだというのも、元気になるからでしょうか?

白石:そうですね。例えば「エルム街の悪夢」は怖い映画ですけど、やっぱり最後にはキメがあって、「よーし!」と自分はなるんです。「ゾンビ」だってエンターテインメントとして優れていますよね。最後はヘリで脱出して、この先どうなるかはわからないけど「よーし!」とテンションが上がる。そういった見終わった時にテンションが上がる映画を自分は常に目指しています。

――日本では見終わったあとに元気になるホラーは少ないように感じるのですが、監督はそういったジャンルを確立したいと考えているのでしょうか?

白石:「貞子 vs 伽椰子」の裏テーマに「Jホラーをぶっ壊す」というのはありました。

淡々とした展開や、引っ張って引っ張って引っ張って後ろにフワっといて怖い……みたいな、Jホラーの流れというのはずっとありますよね。もちろん、それはそれで人気があるので、今後も作られていいんですけど、自分はそれを地味だなと感じて、ちょっと物足りなくなってしまったんです。無理やりアメリカに合わせるわけではないんですけど、娯楽映画の構成としてバーン、バーンと見せていく映画を作ってきたいと思っています。

そういった作品が今は少ないですし、邦画は特に前例がないとプロデューサーが「OK、それやろう」とは言わないんですよね。だから今回は本当に良い機会、冒険のできる企画がもらえたので、今こういう構成の映画を作っておけば、自分も似た路線の作品が作りやすくなると思っています。アメリカのホラー、ジャンル映画を見て育って、そういった作品を制作したいけどなかなかできないという人たちはたくさんいるので、「貞子 vs 伽椰子」は他にもこういった作品が出てきたらうれしい、と思いながら作りました

本作はそういった責任を担う企画でもあったと自分では思っているので、潮流を変えたいという気持ちはかなり本気です。本作がヒットすれば、ある程度お金が必要でも、「こういうのもアリなんだ」とプロデューサーたちがOKを出してくれるようになると思います。

私も数百万円の規模であればやれてるんですけど、現状だと「貞子 vs 伽椰子」のような規模ではなかなか作れないですからね。

伽椰子を貞子の髪の毛が襲う

貞子と伽椰子がついに1つの画面に登場

――観客は見る前から勝敗を気にしてしまう作品だと思うのですが、結末は最初から決まっていて、製作の過程でそれがブレることはなかったのでしょうか?

白石:私が参加する前にプロットがあって、そこにも似たようなクライマックスの描写があったんですね。だから、▲▲▲▲▲しかないなというところに落ち着きました(笑)。

※結末のネタバレのため伏せさせていただきます。

――かなり物理的に×××××していましたよね(笑)。2人の激突も最初は静かなものの、終盤は物理的というか、非常に派手なアクション、SFやファンタジーのような描写だと感じました。監督は以前の作品でもそういった描写を入れていましたが、SF/ファンタジーな表現がお好きなのでしょうか?

白石:好きですね。本作に関しても最初に考えたのは、呪いによって◆◆◆◆◆が◆◆◆◆◆、◆◆◆◆◆ってモヤがかかった◆◆◆◆◆を◆◆◆◆◆が歩いているという、◆◆◆◆◆みたいなシーンで、その名残は完成版にもあります。

もとはもっとすごいイメージだったんですけど、「それは違うと思います」って言われて却下されました(笑)。たぶん予算的にも無理だったと思います。

※結末のネタバレのため伏せさせていただきます。

お祓い

ファンにはたまらないお祓いシーン

――貞子と伽椰子をぶつけるという策が上手くいくわけがないと思って見たのですが、作っている側としてはどうだったのでしょうか? また、霊媒師や霊能者を登場させたのにはどういった意図があったのでしょうか?

白石:まあノリだけの策ですからね(笑)。

本作は、要はミステリーではない、謎解きではないので、霊媒師や霊能者は自然な流れとして出ました。ブルース・リーの「死亡遊戯」じゃないですけど、ガツンガツンという見せ場を用意していくしかないと思ったんですね。霊能者が幽霊に挑んでいくというのは定番ではないにせよ、呪われたら霊能者には当然頼るだろうなと。

まるでGメン75

左から鈴花(玉城ティナさん)、有里(山本美月さん)
霊能界の異端児・経蔵(安藤政信さん)、経蔵の相棒の盲目の少女・珠緒(菊地麻衣さん)
まるで「Gメン75」

――いわゆる「VS映画」はいくつかありますが、何か参考にした、または好きな作品はあるのでしょうか?

白石:好きな作品はたぶんないですね。「フレディVSジェイソン」もあまり好きではないんですけど、それなりにバランスはとっていると思います。

反面教師としては、あの作品はホラーではなくなっていますよね。怪奇アクション映画としてはアリで、楽しいですけど、自分が好きな「エルム街の悪夢」の1作目にあったような、いつ夢の中に入ったのかわからないといった恐怖は希薄になっていますし、ジェイソンは最近のキャラ化されたジェイソンでしかないところがあって、ちょっと不満なところがあったんです。だから好みではありません。

どうしてもフレディがべらべらしゃべってしまうのもあって、ユーモア度もやや過剰ですよね。あと、夢の中に入って人間が全くいない場所で2人が対決する場面は、孤島で怪獣が対決しているのを撮るのと同じことなので、ちょっとテンションが落ちちゃうんです。まったく別世界の完全にSF/ファンタジーの世界だと関心が薄れてしまうので。

幸い貞子も伽椰子もしゃべらないので、「貞子 vs 伽椰子」では見ている人に「これはホラーだぞ」とわかるようにホラーテイストの体は保ちました。人間の視点を必ず介在させるようにしています。人間が見ている中で怪異が起こるというのはかなり意識しました。人間が見ていないところで怪異が起きている様子は見せていません

自分にとって他所事、安全な世界から異世界を見ているとならないように、必ず人間を介在させるというのは「フレディVSジェイソン」を反面教師にしましたね。バランスのとり方としては「貞子 vs 伽椰子」は「フレディVSジェイソン」よりも上手くいっていると思います。

玉城ティナさん

鈴花は呪われた家に入ってしまい……

――2人の怨霊の激突に巻き込まれる、主人公の有里を演じる山本美月さんはファイナルガールっぽさのある強さを感じさせる演技、そして鈴花を演じる玉城ティナさんは表情を通して恐怖を観客に伝える演技が素晴らしかったと感じたのですが、実際に撮影してみて、お2人の魅力はどういったところだと感じましたか?

白石:キャスティングの段階でお2人に会って、話などもしているので、2人のキャラクターを反映させた脚本にしようとは思っていました。

あくまでも私が対応した印象ですけど、玉城ティナさんは口数が少なくて、大人しくて、真面目で、すごく優しい方なんですね。だからそういう大人しさとか、あまり前へ前へと出て行かない感じを反映させました。もともと鈴花はそういうキャラクターではあったので、ベストキャスティングです。

山本美月さん

有里は呪いのビデオを見てしまい……

山本美月さんは芯の強さがもともとあってしっかりものだけど、ちょっととぼけているような愛嬌もあるという印象で、それも脚本に入れたいと思って、有里はそういう人物にしたつもりです。でも撮影を経ると、もっと過剰なキャラクターのほうが面白かったなとも思いました。あれだとまだ普通な子すぎる、山本さんだったらもうちょっと変な子をやらせたほうがいいとか(笑)。

これはホラーに限らず、コメディとかドラマにも使えると思うんですけど、芯は強いけどちょっととぼけた愛嬌もあって、やる時はとんでもないことをやらかしてしまう、でも表情は変わらず飄々と行動するというキャラクターが山本さんは合いそうです。本作でもそういった雰囲気はあるんですけど、今度ご一緒する機会があったら、もっとすごいことをやってもらおうと思います(笑)。

呪われた2人

2人の運命は……?

――続編が製作される可能性はあるのでしょうか?

白石:ユニバーサル、角川的にはやらないんじゃないですかね?(笑) よっぽどヒットしたらあるのかもしれませんけど、関わったプロデューサーが「こういうことがあるのもこれが最初で最後だと思います」と言っていたので、たぶん続編は難しいのでは?と思います。

違う方がやるかもしれませんし、実際のところどうなるのかはわかりませんけど、もし「貞子 vs 伽椰子2」を作るんだったら、やっぱりさっき言っていた「△△△△△な△△△△△が~」というのを実現させたいので、そこまでやらせてくれるのであれば監督したいです。それがマストな条件ですかね(笑)。

――あともう1人加えて、「貞子 vs 伽椰子 vs ●●」の3WAYマッチにするとしたら、誰を参戦させたいでしょうか?

白石:やっぱりエイリアンとか、あとは時代が合わないですけどレザーフェイスとかですかね。次元が違う存在か人間の殺人鬼と対決したら面白いと思います。レザーフェイス一家が「呪怨」の家に引っ越してきて……みたいな(笑)。そういうメンバーだと化学反応があって面白いですよね。

最終的には東宝さんにも参加していただいてゴジラやエヴァンゲリオンも出たら面白いですね、まあ庵野秀明さんのゴーサインは出ないでしょうけど(笑)。

「貞子vs伽椰子」は6月18日(土)全国ロードショー(4DX/MX4Dでの上映も決定!)。

©2016「貞子vs伽椰子」製作委員会

source: 映画『貞子 vs 伽椰子』, YouTube1, 2

スタナー松井