東京五輪開催を前に甦る! 映画「AKIRA」のサントラがハイパーハイレゾ化

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個人的には2曲目の「Battle Against Clown」が1番好き。というかジョーカーが1番すき。

ジブリだけではありません。「宇宙戦艦ヤマト」、「機動戦士ガンダム」、「王立宇宙軍 オネアミスの翼」、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」などなど、日本発のアニメは名作ぞろい。その中でも世界的に人気を博し、数多の人にインパクトを与えた作品があります。

それが「AKIRA」(1988)です。原作コミックもカッコいいのですが、映画版もえらくカッコいい。冒頭のバイクのアクションシーンでココロつかまれちゃった方もいるのではないでしょうか。

全世界アニメランキングのなかでも上位に入る「AKIRA」

Time Out New Yorkが2016年3月に公開した「The 100 Best Animated Movies Ever Made」によれば、「AKIRA」は14位。日本の作品では「千と千尋の神隠し」("Spirited Away"、2位)、「となりのトトロ」("My Neighbor Totoro"、3位)に続いてのランクインです(「魔女の宅急便」や「エヴァンゲリオン」、「攻殻機動隊」より「マインド・ゲーム」が上位というあたり、かなりシヴいランキングですが、嫌いじゃない)。

またGoogle日本語入力で「さんを」を変換すると「さんをつけろよデコ助野郎!」が表示されるほど、「AKIRA」の影響は多岐にわたっています。

その「AKIRA」のサントラがハイレゾ音源化するというじゃないですか。当時のアナログのマスターテープをデジタルリマスターするのかな?と思ったら、100kHzにいたる超高周波成分を別の音源からもってくるというワザを採用するというじゃないですか。なにその融合、AKIRAっぽい

今回ギズモードは、ハイレゾ音源となって甦った「AKIRA」のサウンドの試聴会にお邪魔し、そして作曲者である山城祥二さんに制作秘話などをインタビューしてきましたよ!

ハイパーソニック・エフェクトの思想をとりいれた「AKIRA」の曲

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人間の聴力は20kHzまでといわれていますが、その可聴域を超える周波数成分の音を身体で受け止めることにより、人間の生理心理活動にポジティブな影響を及ぼすという知見があります。その名も「ハイパーソニック・エフェクト

「AKIRA」の楽曲を紡ぎ出した芸能山城組、「交響組曲AKIRA」の作曲者である組頭・山城祥二さんは、大橋力さんという名でハイパーソニック・エフェクトを研究している脳科学者という一面ももっています。

古くから超高周波を含む自然性の高い熱帯雨林の環境音やガムランの楽器音が(そしてCDより超高周波を記録しているLPレコードのほうが)脳深部の血流を増大させたり、脳波のα波を増大させる効果があると提唱しているんですね。

そもそも「AKIRA」の楽曲からしてガムランやジェゴグ、ケチャを取り入れているんですよね。「AKIRA」の曲で、ガムランの音に触れた方も多いのではないでしょうか。

熱帯雨林の超高周波サウンドをMIX

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民族音楽と現代音楽を融合させた芸能山城組。今回発売される「Symphonic Suite AKIRA 2016(ハイパーハイレゾエディション)」はCDマスターと、DVDオーディオマスター(96kHz/24bit)の音源に熱帯雨林で収録した環境音の超高周波成分をMIXすることで、ハイパーソニック・エフェクトを持つ音源を創り上げたといいます。

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とはいっても、

・基幹脳活性化に効果的な超高周波成分の再生は容易ではない
・基幹脳を活性化する超高周波は40kHz以上、特に80kHz周辺
・業務用を含む市販品(スピーカー)に適切なものはない

ことから

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50kHz~130kHzくらいまではフラット、200kHzまでもしっかりと空気音振動を発することができるスーパートゥイーターを開発してのミキシングだったそうですが...。じゃあ、一般の家庭じゃ、ハイパーソニック・エフェクトの正確な体験はできない...?

ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ!」と金田に言われたかのような衝撃。うん、「AKIRA」です。実に「AKIRA」なコンテンツだ!

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ともあれ、このオーディオシステムが組まれた東京都内にある山城さんの拠点、スタジオ・テラにて「Symphonic Suite AKIRA 2016(ハイパーハイレゾエディション)」を試聴させてもらいました。

余計なことは考えず、ココロをフリーにしないとハイパーソニック・エフェクトの効果はでにくいとのことでしたが、アップサンプリングしたCDの音と比較するに音の粒立ちや、クリアさが違うことに気がつきます。

シンセサイザーが刻む細かなピッチの音もアタックがクッキリ。その上で響きの良さにもうっとり。100年以上前に鋳造された青銅楽器の余韻もずっと残っているかのよう。

過去にCD版とDVDオーディオ版(Symphonic Suite AKIRA 2002)を聞き比べた時のことを思い返すと、CD版はディフォルメを効かせてインパクト重視DVDオーディオ版は音のグラデーションをより深くした高解像版。しかし勢いは低域の力感がわかりやすいCD版のほうが上だったような。

「Symphonic Suite AKIRA 2016(ハイパーハイレゾエディション)」はゴリっとしたパワー感を出しつつも解像度を高めたミキシングで、両者の特性を両立させている様子。

個人的には1番好きなサウンドです。スタジオを出るころには、モニターサウンドとは異なりますが、100kHzの領域まで鳴らせるスピーカーを導入しようかと考えている自分に気がついてしまいました。

山城祥二さんに聞く「AKIRA」のサウンド

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試聴会と合わせて、「Symphonic Suite AKIRA」がどのように生まれたか、制作秘話をお聞きしてきましたよ。1988年当時に大友克洋の世界の音を生み出すために芸能山城組はどのようにアプローチしたのか、など貴重なお話がたくさんありました。それでは、どうぞ。

***

ギズ:AKIRAの楽曲はサウンドモジュール方式という、曲をパーツごとに分けたうえで繋げていく方法で作られたと聞きました。

山城:まずAKIRAの映像を見せてもらう前に、作曲や音楽監督をやるかやらないか、という話になったんですよね。サウンドモジュールという方式はこのことに起因していますね。というのも「大友さんの作品の音楽」というのは、まともな音楽ではダメだろうという印象がありまして、凶暴性だったりという幅広い表現が必要になると考えました。

ただ、それを全編作りこんでいくとなると、物理的にその時間がなかったんですよね。

それで、いわばインダストリーとしての合理化を考えたのです。いろいろな組み合わせで多様な表現ができる、プラモデルではないけれど、合体したり分解したり...。そういうことができないか、と考えたわけです。

実際に私たちが使ったガムランなんかは、劇中で鉄雄がおかしくなっていくシーンなんかで使いたいと思っていて、一方でもっとシンフォニックなところでも他の楽器や合唱と一緒に使いたい、とも思いました。で、シンフォニックに使うとなると、合唱は人間の声だからどんな高さでも出せますけど、オルガンなんかはそうはいかないでしょう。そうなるとやっぱり体系を整然と分ける必要がありました。

しかも私たちが使ったのはバリ島から取り寄せたガムランでしたから、チューニング自体が独特なんですよね。だから、そのガムランの音を基準にして、その他の音をいわば従属させるかたちで整理・調律しました。それで、同じ系統だったら、接点が同じになるモジュールみたいなものに仕立てたのです。少し乱暴な組み合わせをしてみても音楽としての破綻がないように、という工夫をしてみたわけですね。

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山城:もうひとつ大事だったのは、大友さんが「音を先行させて、それに合わせて絵を描きたい」と仰っていたことです。そうなると、作曲家が絵を見て、それに合わせてきっちり音を作る、というのができないわけですよね。そこで、できている音自体がある種の柔軟性をもっていて、たとえば音楽の一部を抽出しても、一部を取り除いても破綻しない、という処理ができたらいいと思ったんですよ。これでかなり大胆なことができるんじゃないかと思いました。

たとえば、「Requiem」の「祭の回想」の部分。大詰めのもっとも複雑な部分を最初につくって、そこの一部を引っこ抜いて展開したのが「Kaneda」なんです。そういった意味ではとても戦略的に作っていました。これが功を奏したのか、思いっきり暴れたような音楽が、実は安定したかたちで作れたんですよね。

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ギズ:「金田」という曲がこの「AKIRA」のサントラの「主題」そのものになると仰っていましたね。そして、山城先生がその当時抱いていた「未来」というものを表現したそうですが、その「主題」や「未来」というものはどのようなものですか?

山城:やはり、いったん壊してしまってそのあとにつくる未来、ということでしょうね。「破壊」が大きなテーマになっていることは間違いないでしょう。だから、最後のシーンで、光の玉が(金田の)手の中に...ってなるでしょう。そこでなにかを感じさせきゃならない、と思いましたね。

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ギズ:少し話が変わりますが、ガムランだったり、ジェゴグだったりという楽器を使っているにも関わらずとても"日本"って感じがするんですよね。そういったマテリアルを使いながらもより日本的に、という意識はありましたか?

山城:もちろん、強くありましたね。日本人ですし、日本に住んでいるわけですし。どこかでなにが流行っているとか、アメリカではこうだ、イギリスではこうだ、だからこうしよう、という考え方には正直反発していました。あとサウンドを聞いて、すぐ日本人だってわかるようなものにしたかったというのもありましたね。とても新しいものでありながら、とても懐かしいものでもあり続けるようなものに、ということも意識しました。

ギズ:今改めてAKIRAが劇場で上映されて、そしてこの音で楽しめたら素晴らしいと思いますね。

山城:そうですね。難しいかもしれませんが、ぜひとも実現できたら、と思いますね。

「Symphonic Suite AKIRA(ハイパーハイレゾエディション)」の発売は今日から!

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「Symphonic Suite AKIRA 2016(ハイパーハイレゾエディション)」はPCM、DSDのハイレゾ音源として販売されます。DSD版は11.2MHz対応という、とてもリッチなデータも用意されています。購入はこちらのページから可能!

このクオリティに対応しているUSB DACは限られますが、聴くならもっともハイエンドなデータの再生にチャレンジしたいところ。iFi AudioのiFi nano iDSDなら2万円台ですし、この機会にDSD対応PCオーディオ環境を作ってはみませんか?

なお海外では後日、アナログレコード版もリリースされるとのことです...ほしい!

「Symphonic Suite AKIRA 2016ハイパーハイレゾエディション(交響組曲AKIRA 2016)」/芸能山城組

発売日:2016年7月16日
価格:
WAV/FLAC(192kHz/24bit):3,400円(税抜)
DSD5.6MHz:3,900円(税抜)
DSD11.2MHz:4,900円(税抜)
ストア:HD-Music, e-onkyo music, mora, groovers

ビクターエンタテインメント

1. 金田 Kaneda
2. クラウンとの闘い Battle Against Clown
3. ネオ東京上空の風 Winds Over Neo-Tokyo
4. 鉄雄 Tetsuo
5. ぬいぐるみのポリフォニー Doll's Polyphony
6. 唱名 Shohmyoh
7. ケイと金田の脱出 Exodus From the Underground Fortress
8. 回想 Illusion
9. 変容 Mutation
10. 未来 Requiem

source: 芸能山城組, Victor Studio

(武者良太)