IoTによって時代遅れの火力発電所が復活してしまうという皮肉

IoTによって時代遅れの火力発電所が復活してしまうという皮肉 1

テクノロジーの恩恵、そう来たか!ですよ。

イタリアの公益事業会社であるA2Aは、2014年にトリノ近郊のチバッソ火力発電所を閉鎖しました。

イタリアに限らず、火力発電は世界中の電力供給を長年支えてきました。しかし古い施設の多くは他の発電所や発電方式に比べて効率性が劣るので、時が経つにつれて順に廃止されます。

しかし近年では古い発電所に最新のIoT技術・クラウド技術を導入することで施設の延命に成功しているようです。チバッソ発電所もそのひとつ、閉鎖から2年が経った後の2016年に再稼働することになりました。

A2Aのバイス・プレジデントであるMassimiliano Masiによると再開の理由は、クラウド・ベースの技術を導入したことで、休止状態から2時間以下でフル稼働できるようになったためだそうです。以前は3時間もかかっていたところが大幅に短縮されたことで、常に変動する電力の需要に柔軟に対応できるようになったわけです。電力供給量が常に変動する再生可能エネルギーの導入が進んでいる現在では、短い時間でフルに稼働できることは大きなメリットなんですね。

風力や太陽光による発電はどうしても供給量は変動してしまうので、その隙間を効率よく火力発電で埋められるようになること自体は素晴らしいんですが...問題は温暖化ガスの排出量が多い石炭による火力発電所も延命されつつあることなんです。

MIT Technology Reviewのレポートによると、General Electricが去年秋には天然ガスによる火力発電を効率化するデジタル発電所システムを発表。この6月には同様のシステムを石炭用にも発表しました。IoT技術が旧型の石炭・火力発電所を延命することは電力会社にとってはメリットがあっても地球温暖化対策としては問題にしかならないと懸念されています

ガス火力発電の効率はこのデジタル・システムによって33パーセントから49パーセントに大幅に向上されるようですが、石炭による発電はそこまで向上は見られず、温室効果ガスは3パーセントしか削減されません

石炭を使用する火力発電所を減らすのは先進国の間での共通目標となっています。イギリスの気候変動・エネルギー政策に関する専門家団体であるE3Gが発表したこちらのG7・石炭発電所削減の成績表(単位:ギガワット)では日本を除いたすべての国が2010年から2016年の間に多くの新規建設を廃止(グラフ灰色)、現存する石炭発電所も大幅に停止(グラフ薄緑色)していることが分かります。グラフの黄色い部分は新規建設予定を示しています。これから増える部分ということですね。

IoTによって時代遅れの火力発電所が復活してしまうという皮肉 2

発電効率がIoTによって良くなるのはいいけど、石炭発電を延命するのは違うでしょ、と指摘されているわけです。

もちろん、中国やインドは今後も石炭による火力発電所を増設する予定ですし、今建てられる発電所は30年から40年は稼働し続けるわけです。存在する以上は効率が良いものであることに越したことはないわけですが…。

ちなみに日本で石炭発電所が一気に新規建設予定されているのは、2011年の東日本大震災によって多くの原発が停止し、エネルギー政策を見直すことになったためです。しかし49カ所の新しい石炭火力発電所を新設して2800万kw分の電力を増強するという日本政府の計画は、発電所が廃止される分を補うレベルを「191%超過し、6兆〜8超円の「座礁」資産を生み出」し、「電力会社が未払いの負債を支払う能力を低下させ、納税者や公共料金納付者が負担しなければならない座礁資産を生む」。さらに「二酸化炭素の排出や人間の健康を害する大気汚染によって、重大な負の外的影響を引き起こす」と英オックスフォード大学のスミス企業環境大学院の論文で猛批判されています。

source: MIT Technology Review, GE, E3G, 「日本における座礁資産と石炭火力・環境関連リスク・エクスポージャーの分析報告書(2016年 5月)」(英オックスフォード大学)

(塚本 紺)