映画「ファインディング・ドリー」アンガス・マクレーン監督にインタビュー:挙げていったらキリがないくらい日本の作品が好き

ファインディング・ドリー

監督はロボットアニメが大好き。

記憶を長く保てないながらも、元気とガッツで勢い良く未来を切り開いていく熱帯魚、ドリーが自分の過去を求める旅へと挑む、ピクサーのおさかなメメント映画「ファインディング・ドリー」。

今回は「ファインディング・ニモ」の続編でもある本作を手がけた、アンガス・マクレーン共同監督にインタビューして参りました。

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――前作では実現できなかったことで、本作では技術的に実現できたことがあれば教えてください。

アンガス・マクレーン(以下、マクレーン):まず、本作のような水の表現は13年前にはできませんでした。そして、照明に関しても繊細な「反応」の描写が可能になったので、水やガラスに光が当たったときの反射や屈折の表現が今回はできました。

キャラクターの細かい表情や動かし方に関しても、一作目ではできなかったことが実現できているので、フルアップグレードだと言っていいと思います。そもそもコンピューターそのものが13年前とは比較にならないくらい進化しているので、本作はその恩恵を受けていますね。

視覚的に扱う言語としては「ファインディング・ニモ」で作り上げた世界があり、それを伝えなければいけなかったので、意識的に技術の進化を控えめに見せるという努力はしました

全体的な色彩は「~ニモ」の時と共通していますし、遠くから見ると、それほど大きな違いは感じられないと思いますが、よく見ると本作は前作に比べて映像やキャラクターの描き方が複雑になっていますし、スケールも大きくなり、リッチさも増しています。

同じ世界観を保ちながらも、新しい技術をどのように使うのか?という選択は「トイ・ストーリー」シリーズでの経験が活きました。

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幼いころのドリー

――本作はドリーが主人公ということで、彼女の記憶にまつわる物語が展開しますが、何か参考にした作品はあるのでしょうか? また、欠点のあるキャラクターが主人公のストーリーを作っていく上で、どういった点に気をつけたのでしょうか?

マクレーン:ドリーは短期間で記憶が抜け落ちてしまうというキャラクターなので、とにかく試行錯誤の連続でした。

ストーリーが進む中で、ドリーが忘れていること、彼女が知っていること、彼女が学習することをどう描くか?というのが、本作の一番の挑戦だったと思います。彼女が学習していること、彼女が覚えていること、そして彼女がゴールを忘れないこと、といった要素をどの程度扱えばいいのかを考えながら、彼女が何に駆り立てられて行動しているのかを伝えなければいけないということを意識しながら作りました。

何か他の作品を参考にしたというよりは、自分たちが扱っている要素を1つ1つ見ていきながら、どのように表現していけば上手くいくのか?の試行錯誤が大きかったです。

たとえば、ドリーが忘れる描写が多すぎると、観客が彼女より情報や知識を持つことになってしまいます。そういったフラストレーションがたまる展開にならないように気をつけました

本作はドリーが自身の欠点、短所と向き合いながら、じょじょに自信を持ち、成長していくという物語なので、彼女が迷子にならずに目的を達成する姿を描くというのが前提です。

これを語るために、ドリーの周りにも欠点や短所を抱えながらも、それぞれの方法で向かい合っているキャラクターたちを登場させました。たとえばニモは前作で、「幸運のヒレ」を彼自身のやり方で切り抜けているので、映画の序盤ではドリーより先へ進んでいます。ドリーは彼らとコミュニケーションをとることで、旅を続ける勇気を持って、成長できるんです。

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カモフラージュの能力で自由に姿を変えられる7本足のタコ、ハンク(左)

――監督にはレゴビルダーとしての一面もありますが、立体とアニメーションでは作る時の楽しさは異なるのでしょうか?

マクレーン:まず、レゴは自分1人で行う挑戦だというのが映画とはまったく異なります。それによる苦労はもちろんありますが、映画とは違い、自分1人ですべての要素を把握していますし、すべてをコントロールできるので、自分にとっては充電のためにやる、映画のデジタルな世界と比べると、物理的な行為です。

ただ、繰り返しの作業や何かを積み上げていくというレゴの経験が、映画製作に教えてくれることはあります。たとえば、映画はストーリーボードから始まり、何度も何度もいろいろな工程を繰り返し、それをふまえて完成しますし、作り上げていく過程で完成形を見出していくというところや、抽象的な、優美な物語の解決策を見出すというところも、レゴ作りと共通している考え方です。

物理的なものを組み立てていくことと、物語を組み立てていくことは異なりながらも共通しているところがあると、両方の経験を積んでいく中で思うようになりました。

私は常にシンプルで、すっきりとしていて、なおかつエレガントな完成形を目指すという姿勢で映画にもレゴにも取り組んでいます。

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視力が弱く、すぐ慌ててしまうジンベエザメのデスティニー(真ん中)と
頭をぶつけてエコロケーションの能力が使えなくなった(と思い込んでいる)ベイリー(左)

――「機動戦士ガンダム」がお好きとのことですが、どういったところが心に響いたのでしょうか? 他に日本の作品で好きなもの、ご自身の映画製作に影響を与えたものがあれば教えてください。

マクレーン:「機動戦士ガンダム」はメカのデザインが好きです。ガンダムに限らず、ロボットものを中心に、日本のアニメのデザイン全般に影響を受けました

日本の作品を好きになったきっかけは、自分でもよくわからないんですが、父が黒澤明監督の作品と三船敏郎主演の「宮本武蔵」三部作にすごく入れ込んでいたので、幼い頃にそれを横で見ていた影響はあるかもしれません。

その後、自分の成長期である70年代後半から80年代になって、日本の作品がたくさんアメリカへ輸入されてきたので、その頃からロボットもののアニメを見るようになりました。

ガンダム以外では、「グレート・マジンガー」、「マジンガーZ」、「闘将ダイモス」、「超時空要塞マクロス」、「新世紀エヴァンゲリオン」、「フリクリ」、「20世紀少年」、「PLUTO」なども好きです。

あとはデザイン、キャラクター、ストーリーすべての面において「カウボーイビバップ」はすごく好きですね。もちろん、宮崎駿監督の作品もはずせません。特に「となりのトトロ」と「魔女の宅急便」、「ルパン三世 カリオストロの城」は特別です。

実写映画だと黒澤明監督や三池崇史監督の作品、山田洋次監督の時代劇三部作などですかね。挙げていったらキリがないくらい、日本の作品は好きですし、影響を受けていると思います。

「ファインディング・ドリー」は7月16日(土)全国ロードショー。

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source: 「ファインディング・ドリー」公式サイト, YouTube

スタナー松井