その日、人類は思い出した...。マンハッタンの水害は深刻な問題

その日、人類は思い出した...。マンハッタンの水害は深刻な問題 1

壁つくるっきゃない。

2012年、ニューヨーク州とニュージャージー州をおそった「スーパーストーム・サンディ」、皆さん覚えていますか。ニューヨーク市だけでも8万8000軒もの家屋を破壊し、44人の命を奪ったストームです。それが、気候変動によって、今後もストームの被害はより頻繁に、そしてより大規模になると考えられています。

科学誌「Nature」に今年3月に発表された論文では、南極の氷の融解だけをとっても2100年までに海水面を1メートルほど上昇させるだろうと予測されています。ニューヨークでは、2030年までに水面がなんと30センチは上昇するだろうと、ニューヨーク市の対策本部の責任者であるDaniel Zarrilliさんは考えています

30センチなら...まだ歩ける!と思うかもしれませんが、海と川に囲まれたマンハッタンにとっては、かなり深刻な問題なんです。道路が通れなくなると交通問題が起きますし、洪水保険の値段も高騰します。洪水被害が起きやすい地域の住宅は価格が急落し...と連鎖的に大きな被害を生み出すことが予想されます。

海水面の上昇で土地が失われる、洪水被害がさらに大きくなる、これが大都市ニューヨークで待ったなしの問題となっているんですね。そこで2012年から急ピッチで対策が練られてきたわけですが、国からの180億円(1億7600ドル)の資金援助も追加され、来年には川岸の一部に鉄筋コンクリ―トの壁を建設する計画を立てています。これはマンハッタンの下半分をぐるりとUの字に壁で囲む通称「BIG U」計画の第一弾となっています。

マンハッタンを囲む...鉄筋コンクリートの壁...!

ただし高さ3メートルだそうです。某漫画のような、巨人が覗く「壁」を妄想した人はすぐに忘れて下さい。

もちろん、あまりにも壮大な計画ですし、単純に壁を建てたら全てが解決するわけではありません。この壁はウォール街は守ってくれても、クイーンズやブルックリンは守ってくれませんし、さらには長期的な海水面上昇の対策にはならないと指摘されています。来年予定されているロウワー・イースト・サイドの壁計画も、「全てが上手く行けば」実現するだろうとDanielさんも慎重に発言しています。本当にマンハッタンの下半分が壁で囲まれることになるかどうかは、かなり怪しいかもしれません。しかし、何もしなければ多くの地域が水没・洪水被害に遭うこともまた事実。なかなか難しい状況です。

この計画が通称「BIG U」と呼ばれているのは、サンディの後、都市開発機構が開催したデザインコンペで入賞したデザイン「BIG U」が基となっているからです。コンペに提出されたデザインを見ると、ただ壁をどかーんと建てるのではなく、壁を美観の一部に、都市機能の一部にするためのアイデアが色々と模索されているのが分かります。

その日、人類は思い出した...。マンハッタンの水害は深刻な問題 2

海岸線をぐるりと周る新しい地下鉄の路線を作ってしまうなんてこともできるかも?

その日、人類は思い出した...。マンハッタンの水害は深刻な問題 3

上の画像では壁をどうやって活用するか、いくつかアイデアが並べられています。壁の内側に店舗スペースを作る、壁の裏側に降りられる滑り台にする、駐輪場にする、両側に座れるベンチにする、と自由な発想が見られます。

近隣住人の反対や高額なコスト、そして水害対策としての効率性など、すでに批判の的になっているマンハッタンの壁計画。果たしてどうなるのか今後に注目です。

source: MIT Technology Review, Nature, Rolling Stone, The New York Times, Rebuild by Design,

(塚本 紺)