中世騎士道の鑑はクソ重い甲冑で走り込みをしていたことが判明

中世騎士道の鑑はクソ重い甲冑で走り込みをしていたことが判明 1

中世フランス騎士道の鑑ブシコー元帥がまとった甲冑は26.18kg。米俵の半分近くあります。

もはやC-3POやブリキ男のカクカクした動きしか想像つきませんけど、ジュネーブ大学が元帥の訓練メニューを再現してみたところ、とてもあの格好からは想像もつかないほど激しい動きをこなしていたことがわかりました!

プレートアーマーは重過ぎて「落馬したら起き上がれない」とされますが、それが本当かどうかを確かめるため同大講師のDaniel Jaquetさんたちはレプリカを作って動作範囲とエネルギー負荷を計測し、先月の「Historical Methods: A Journal of Quantitative and Interdisciplinary History」に成果を発表しました

「現代人が思う以上に動けた」という話は中世研究者の間で前々から言われていたことですし、NYメトロポリタン美術館なんて1924年の段階でもう常識のウソを指摘する教育用映像を作ってます。でもデータで実証した研究が出てきたのはここ5年ぐらいの動き。

以下はJaquetさんたちが5年前に初期の研究成果をまとめた動画です(日本語解説)。

今回はその続編として、百年戦争期のフランス王国の大元帥ジャン2世・ル・マングル(通称ブシコー元帥)に焦点を当ててみました。元帥は1415年アジャンクールの戦いでイギリスに捕えられるまで輝かしい戦歴を残した名将です。この訓練メニューがなかなかスゴいのです。動画の翻訳でどうぞ。

[動画の翻訳]

(ブシコー元帥は)フル装備で馬に飛び乗った。心拍と持久力を鍛えるため、長距離走もやった。腕を鍛え、振り上げる動作に慣れるため、斧やハンマーを振り回した。梯子に手でぶら下がり、足を使わずに上まで登った。壁と壁の間が114cm以上離れており高さが塔ほどある場合、手と足だけで上までよじ登って降りてきた。

こうした鍛錬を日々続け、ブシコー元帥は無双の身体能力を身につけた。なんでもフルアーマーでスーブルソーまでできたものらしい。あまりにも強靭だったため、相手になる人を探すのもひと苦労だった。

いや~、スーブルソーってバレエのスーブルソー?と一瞬焦りましたが、動画では現代人が腕立て側転や宙返りしてますね。ぴょんぴょん飛び跳ねるっていうニュアンスでしょうか…。

しっかしこれだけの動きをこなすには相当の体力が必要そうです。そちらは英リーズ大学のGraham Askew准教授率いるチームが2011年に発表した研究論文が詳しいです。王立武具博物館から被験者をリクルートし、15世紀ロンドンで活躍したWilliam Martyn卿がまとった甲冑のレプリカを着せ、ランニングマシンで走らせて酸素消費量を図り、エネルギー消費量を計算してみた研究です。

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右:William Martyn卿、左:その甲冑のレプリカで走る現代人。image: Joy White

結果、フルアーマーで走ったり歩いたりすると通常の約2倍ものエネルギーを消費することがわかっています。「そりゃあれだけのものを被るんだから当たり前だけど、データで知るのはおもしろい」と、王立武具博物館の甲冑担当のThom Richardsonさんは論文発表当時のポピュラーメカニクス誌に、語ってますよ。

隙のない防備と自在な動きが確保できても、やっぱりアーマーは重さの配分がいびつなので(特に腕、足、脚)、どうしても普段よりエネルギーを消耗してしまうんですね。なんせ両脚だけで15~18ポンド(6.8~8.2kg)重い。動くたびに負荷がかかります。しかもフェイスマスクは目にスリットが細~く開いてるだけだし、胸は分厚いチェストプレートで覆われているので、酸素がほとんど中に通らない問題も。

今回のスイスの新研究でも、それを裏付けるデータが得られています。チームではこの被験者1名×レプリカ1着の概念立証から、着衣の影響もふくめ調査範囲を広げていく予定。

体力消耗は倍。完全密閉で酸欠。それを克服する訓練メニュー。思った以上に動けるようだけど、動かす中の人間は想像を絶する大変さだったということで。

source: Historical Methods: A Journal of Quantitative and Interdisciplinary History via Medievalists.net

Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文

(satomi)