映画「死霊館 エンフィールド事件」ジェームズ・ワン監督にインタビュー。ホラー職人かく語りき

死霊館 エンフィールド事件

史上最恐の心霊ホラー映画との声も多かった「死霊館」よりも、さらに恐ろしいシーンが多く、長く、巧みな続編「死霊館 エンフィールド事件」。

今回はホラーの楽しさがこれでもかとつまった本作を手がけた、ジェームズ・ワン監督にインタビューして参りました。

超大作「ワイルド・スピード SKY MISSION」を経て、DCコミックス映画「アクアマン」の製作も決まっている監督の、映画への愛と職人っぷりが伝わってくる言葉の数々をどうぞ。

ジェームズ・ワン監督

ジェームズ・ワン監督

――本作は「死霊館」の続編ですが、監督が考える理想的な続編映画とはどういった内容でしょうか? また、ご自身がお好きな続編映画(2に限る)はなんでしょうか?

ジェームズ・ワン(以下、ワン):難しい質問ですね(笑)。

「死霊館」は非常に評判が良く、多くの観客が愛してくれたので、続編への期待に応える作品に仕上げなければいけないというプレッシャーはかなりありました。

ホラーというジャンルは特に続編が多いですが、ホラーだけに限らず、一作目で観客が感じてくれた思いに沿うものを作るというのが、良い続編の一番の条件だと思います。ただ、そういった観客の期待を裏切らない、良い続編を作るのは非常に難しいことで、自分にとっても大きな挑戦でした。

それでも、過去には映画の神様たちが生み出した、1作目を見ていなくてもまったく問題がない、本当に素晴らしい内容の続編映画はあります。たとえば、自分が子どもの頃に見て感動したのを覚えているのは「エイリアン」の続編、ジェームズ・キャメロンの「エイリアン2」です。

大人になるにつれて1作目の「エイリアン」の偉大さもわかり、大いにリスペクトするようになったのですが、「エイリアン2」はとにかくユニークで、単体の映画としても十分に面白い作品だと思います。今でも自分のオールタイムベストの1つで、心から愛している映画です。

あとは比較的最近の作品だと、サム・ライミ監督の「スパイダーマン2」も好きですね。

映画「死霊館 エンフィールド事件」ジェームズ・ワン監督にインタビュー。ホラー職人かく語りき 1

派手な恐怖シーンも満載

――本作は実話ベースの映画ですが、衣装やセット、とり憑かれたジャネットの声など、事実の再現度の高さには驚きました。一方で、映画として面白くするためのフィクショナルな描写も当然入っているわけですが、リアリティーをつきつめる部分と映画的な演出の部分のバランスは、どのように決めているのでしょうか?

ワン:自分の趣向としては、もう少し誇張された、常軌を逸したようなものが好きなんですね。それが「インシディアス」を作った理由で、要するに自分の欲求を満たしたんです(笑)。

「死霊館」はそれに比べると、もっと地に足がついた作品にする必要があるので、やりすぎないようにはしています。一方で自分の映画作りの中で観客が好んでくれる要素、コマーシャルな感性も入れないといけません。

明確な線引きの基準は言い表せないのですが、リアリティーが保てる限界を超えないようにしながらも、映画としての強度やインパクトが失われないようにしたり、クライマックスがちゃんと盛り上がるようにしたりと、自分という映画の作り手が思いつく、映画に必要なすべての基準は超えるように気をつけています

きわどい線の上を歩くかのような作業なので、常に自分に問いかけながら、良いバランスを探りながら作りました。

映画「死霊館 エンフィールド事件」ジェームズ・ワン監督にインタビュー。ホラー職人かく語りき 2

本編を最後まで見るとわかる、驚きの再現度の高さ

――本作は前作のジョン・R・レオネッティから、大ベテランのドン・バージェスへ撮影監督がかわりましたが、初めて彼と仕事をしてみていかがでしたか?

ワン:前作の「死霊館」を含め、自分の作品の多くはジョン・R・レオネッティが手がけていて、彼は驚くべき撮影監督なのですが、今回はどうしてもスケジュールの都合で依頼できなかったので、初めてドン・バージェスと働くことになったんです。

ジョン・R・レオネッティとの関係性は自分の映画製作において非常に大きいので、正直なところ今回は彼がいないという点で少しはらはらしました(笑)。しかも、観客が期待している続編映画だったので、過去に一緒に仕事をしたことのない、新しい撮影監督と上手く映画を作れるのかどうか、余計にナーバスになったり、不安になったりしたんです。

ドン・バージェスがロバート・ゼメキスとさまざまな名作を手がけた生ける伝説のような人物だというのは知っていましたし、彼の過去作は大好きだったので、実際に会った時は彼の寛大さに感動しました。本当にクールな人だったんです(笑)。

なので、最初の会議からドンには「本作は続編でありながらも単独で楽しめる、1作目よりさらに上のレベルの映画にしたい」といった自分のアプローチを伝えました。

ドンの愛さずにはいられない素晴らしいところは、彼にはロバート・ゼメキスと数々のクリエイティブな作品を手がけたという背景があるので、どんなにクレイジーなカメラワークのアイディアを出しても、静かに「うーん、考えてみよう」と言ってくれるところです(笑)。

自分が1作目で確立した領域の中で、どうやって面白く映画を語るか?の方法を、コンスタントに彼と一緒に考えました。ドンのそういった姿勢は素晴らしいですし、彼との現場は本当に楽しかったです。

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怨霊に襲われる子どもたち

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圧巻の演技を見せる、ジャネット役のマディソン・ウルフ

――前作以上に子どもたちの演技が印象的だったのですが、子どもたちに演技をさせる上で気を配っているのはどういったところでしょうか?

ワン:本作は子どもたちが呪いの被害に遭う「エンフィールド事件」という、70年代後半に起きた実際の出来事をベースにした映画なので、前作以上に子どもたちのキャラクターが重要な役割を担っています。特にジャネット・ホジソンはそうです。やっぱりキャラクターを信じられないと映画の他の要素も信じられませんし、エモーションも生まれませんからね。

そこで、純粋さと映画でジャネットが直面する状況をくぐり抜けられるだけの強さ傷心を表現できる、優秀な子どもの役者を見つける必要がありました。この条件を満たす子どもを見つけるのは困難なので、才能にあふれた女優であるマディソン・ウルフに出会えたことは幸運だったとしか言いようがありません。

彼女は若いですが、経験があり、さらには持って生まれたものもあって、他の役者ではできないクオリティーの演技をします。監督としては、マディソンとはパトリック・ウィルソンやヴェラ・ファーミガと話すのと同じような感覚で話せますし、大人の役者たちと同じようにディレクションしても、彼女は問題なく理解して実践してくれるので、映画作りが本当に楽になるんです。マディソンは本作の軸だと、少なくとも自分は思っています。

でもマディソンのように若くて、さらに才能もあるという役者はあまりいないので、これは非常にレアなケースです。通常、子どもの役者をディレクションする際は、彼らのありのままを撮影する必要があります。たとえば、人を楽しませることが好きな明るい子どもを撮影したい場合は、そのような人柄の子どもの役者を起用しなければいけません。ありのままにキャスティングするのが一番上手くいきます

経験上、子どもたちにパフォーマンスの質を上げるために説明して、それを理解させるのは難しいです。彼らにはあまり経験がありませんし、若いから理解できないこともあります。歳を重ねたり、演技を重ねたりすることで学ぶことは多いですからね。だからこそ、マディソンは才能を持って生まれたユニークな存在だと感じました。

映画「死霊館 エンフィールド事件」は7月9日(土)新宿ピカデリーほか全国公開。

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source: 映画『死霊館 エンフィールド事件』公式サイト, YouTube

スタナー松井