世界中のスゴいヤツを見つけ出す、SXSW映画部門のディレクターにインタビュー

SXSW TOKYO SCREENING WEEK

超巨大イベントの未来は?

アメリカ最大規模のフェスティバル「SXSW」の映画部門が、「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」として日本に上陸しました。

今回は本イベントに併せて来日した、SXSW映画部門のディレクターであるジャネット・ピアソンさんに、SXSW映画部門の成り立ちや狙い、今後の展望などについて、お話を伺いました。

ジャネット・ピアソン氏ジャネット・ピアソンさん

――「SXSW」はどのように成り立ち、そして何を目指しているのでしょうか? また、今回の「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」の開催に至った理由はなんでしょうか?

ジャネット・ピアソン(以下、ピアソン):SXSWは1987年に音楽のカンファレンス、ショーケースとして始まり、非常に人気を博して、1994年に映画とインタラクティブが追加されました。そして、音楽と映画とインタラクティブが同時にプレゼンテーションされる、10日間のイベントとして行われるようになり、非常にユニークでクリエイティブな、さまざまな可能性を探るイベントになっていったんです。

SXSWには中心となるものがいくつかあり、その1つがミュージシャンから映画監督、ニコラス・ケイジからイーロン・マスクに至るまで、さまざまな業界の関係者が登壇するトークセッションやパネルディスカッション、インタビューなどが行われるカンファレンスです。そこでは、新作や新製品のプレゼンテーションがあったり、今後の方向性などが語られたりします。

それとは別に映画祭があり、非常に力強い低予算の映画からハリウッド映画のプレミアまで、幅広い映画をカバーした内容です。音楽のショーケースでは、約4日間に渡って多数のバンドが演奏を披露します。さらには、多くの会社が自社の製品や作品をアピールするトレードショーもあり、非常に幅が広いイベントです。

全体としての主な目的は、才能の人材の発掘さまざまな業界の人々をつなげるネットワークを作る場、そして学びの場を作ることにあります。

本当か嘘かは定かではありませんが、「世界の生の音楽が集まる場所」と呼ばれる、テキサス州のオースティンで開催されるので、安くておいしい食事と穏やかな気候の中で楽しめるイベントです。

今回の「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」では、SXSWでプレミア上映してきた作品、私たちが非常に気に入っている作品を日本人の観客の皆さんと共有できる場であり、皆さんに「SXSW」の存在を知ってもらいたいという場でもあります。そして、日本の映画ファンや映画関係者と会うことで、皆さんが何に興味を持っているのか?を知るきっかけにもなると考えています。

「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」が実現したのは、汐巻裕子さんがSXSWの面白さ、熱さを日本の観客に紹介する場を作りたいという熱意を形にしてくれたおかげです。

――現在に至るまで、日本の作品はそれほどSXSWの映画祭で上映されていませんが、それはなぜでしょうか? また、どういった映画が選ばれる傾向にあるのでしょうか?

ピアソン:まず、言語が英語の映画により焦点をあてているということがあります。他の言語の映画のパーセンテージが低いのは主にその影響で、観客の多くが興味を持っているのが英語の映画だからというのが一番の理由です。

そして、非常に競争率が激しいということもあります。2,500本の長編の応募に対して上映されるのは130本、さらに5,000本の短編の応募に対して上映されるのは110本です。そこにはMVなども含まれています。それぞれの作品に特有の役割があり、純粋な映画、エンターテインメント映画、音楽映画、ドキュメンタリーなどなどジャンルもさまざまです。

もっといろいろな国の作品を増やしたいと思ってはいるものの、役割やジャンルごとに選ばれる映画の数は本当に限られているので、全世界の映画をカバーするのは現状だと難しいです。

日本の映画にはもちろん興味はあるのですが、私たちは頻繁に旅ができるわけでもないので、 人を知ったり、人間関係を作ったり、人材を発掘したりがあまりできません。見つけ出すという作業もなかなかできないのですが、作品の送付は常に歓迎しています

「ミッドナイト」というカテゴリーがあって、そこでは10本の作品しか選ばれないのですが、ホラーやスリラー、アクションなどのジャンル映画の中でも特にクレイジーなものを上映しています。2016年には、日本のゾンビ映画の「アイアムアヒーロー」が観客賞を受賞しました。

他にも日本の作品だと、「We Are X」(X-JAPANのドキュメンタリー映画、以下トレーラー参照)も2016年に上映しました。「We Are X」は自分にとっては何もかもが新しい作品ですごく面白かったです。YOSHIKIが実際に会場へ来て、演奏もしてくれたんですが、彼には独特の繊細さがあって、全く別世界から来た存在に見えました。映画を上映した劇場で演奏も行えたので、すごく良いイベントになったと思います。

選出に関しては主観的な部分もあるんです。長編部門のプログラマーが3人、短編映画のプログラマーが1人いるんですが、彼自身の趣味趣向はどうしても選ぶ際に入ってしまいます。選ばれた人は人生が一変するかもしれないということも考えて、非常に真剣に取り組んではいますが、それでも自分たちが何に興味を引かれるのか、誰に才能があるのかという判断にはどうしても主観が入ってしまうと思うんです。

例えば音楽映画に関して言えば、すごく良い作品がたくさんあっても、その中から15本しか選べません。そして、上映作品にはジャンルの幅広さが必要なので、コメディー、ホラー、感動作などなど、多様性を持たせることで抜け落ちてしまう作品は出てきてしまいます。

映画の製作側からすると、入って当たり前という作品、洗練された内容でスターが出ている良作が入らない、逆に生々しい原石のような作品が選ばれることもあるので、時に混乱を生むのも事実です。どんな作品が選ばれるのかは、科学じゃないんですよね。

批評家たちが何を見ているか、観客が何を望んでいるか、業界が何を求めているかなど、いろいろなことを念頭において選んでプログラムは決まっていきます。ゴールは1つではないということです。

――テクノロジーの進化によって生まれた、VOD(ビデオ・オン・デマンド)や映像配信サービスの普及で映画業界は明らかに変わったとお考えでしょうか? また、それがSXSWに与えた影響はあるのでしょうか?

ピアソン影響は大きいですし、大きく変わってきています

VODが出てきた時には、これこそがインディペンデント映画の希望だと言われて、多くの映画製作者が希望を持ちましたが、あまりにも多くの製作者がVODに殺到したため、オプションとしてはあまり良くなかったと言われるようになりました。そして、NetflixやAmazonなどの配信サービスが出てきたら、今度はそこへ売ろうと人々が集まりましたが、全ての映画で上手くいくわけではないということがわかりました。

このように、今はとにかく毎年何かが変わる、そして、そのスピードが速すぎて順応できる前に次の変化を迎えてしまうというのが繰り返されている状態だと思います。

さまざまな可能性の活かし方を考えているインタラクティブな人々がいて、一方ではインタラクティブな人々と一緒に新しいアイデアの実現を模索し、作品に活かす方法を考えている映画の製作者たちがいます。さらには、ミュージシャンも含めたDIYな、自分たちのキャリアを自分たちでコントロールして、新しいツールは何なのか、それをどうやって使うべきなのか、遅れをとらないようにはどうするべきなのか、自分の役割はどこなのかを理解しながら、新しいものを生もうとしている人々がいます。

彼らがお互いに学び合い、一緒にやっていくことで、面白いものが生まれるということに自分はすごくワクワクしますし、SXSWはそれが実現するレアな場だと思います。

おそらく、SXSWはエピソディック(ドラマシリーズ)のプレミア上映の部門を作った、初めての映画祭で、多くの才能のある人々がドラマへ参加し始めていることがわかっていたために実施されました。彼らの多くはもともと映画の現場にいたわけですが、より長いストーリーを語るためといった理由からドラマの現場へ動き、活躍の場を広げたんです。私たちは常に、このような新しい、クリエイティブな仕事をする人々へ注意を向けています

ただ、さまざまな変化は起き続けているものの、今現在はインディペンデントの映画の現場で働いて稼ぐことは難しいです。とはいえ、中にはすごく上手くやって、成功する人もいます。

たとえば、デスティン・ダニエル・クレットンは「ショート・ターム」で大好評を得て、次につながりました。また、同作で女優のブリー・ラーソンもブレイクして、「ルーム」にキャスティングされてアカデミー主演女優賞を受賞しています。彼らに関しては、発掘されたことが成功へ直接的につながりました。

エピソディックの上映は2012年に始めたのですが、その時にプレミアを行ったのは「GIRLS/ガールズ」という作品です。製作・監督・脚本・主演のレナ・ダナムは、SXSW史上最も有名になった1人なのですが、日本ではほとんど知られていなくて驚きました(笑)。その後、2013年に「ベイツ・モーテル」のプレミアがあり、2014年にエピソディックの部門が作られました。

――他の映画祭と比べてコメディーを大きく扱っているという印象があるのですが、実際に重点は置いているのでしょうか?

ピアソン:コメディー映画やスタンドアップコメディーは取り扱っていて、何年か前から大々的にはやっているので、SXSWは音楽と映画とインタラクティブとコメディーの祭典です。

セス・ローゲンは以前から、「SXSWは世界中で唯一、コメディーを真剣にとらえている映画祭だ」と言ってくれています。去年、彼は8月公開の映画「Sausage Party(原題、以下の予告編参照)」を、3月開催のSXSWのためになんとか見せられる状態にして持ってきてくれました。セスは、SXSWがコメディー映画にとって非常に重要な場だと認識しています。彼はSXSWのコメディーの楽しみ方を、すごく愛してくれているんです。

――今後も大々的に扱うジャンルは増やしていくのでしょうか?

ピアソン:すでにスポーツ、スタイル、フードなどはここ数年扱うようになっていて、ちょっとわかりづらくなってきちゃったんです(笑)。加えて、エコロジーや教育、ジャーナリズムなどなどのカンファレンスも存在するので、本当にどんどん多様なイベントにはなっていますね。

SXSW TOKYO SCREENING WEEK

「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」は、7月16日(土)から22日(金)までの期間限定で、新宿シネマカリテにて実施中です。

source: SXSW TOKYO SCREENING WEEK, YouTube1, 2, 3

スタナー松井