「WWE LIVE」に見た、映像配信サービスと生観戦の今

Shinsuke Nakamura

YeaOh!

先日、両国国技館で開催された世界最大のプロレス団体「WWE」の日本公演「WWE Live Japan」。今年は前売り券が発売後すぐに売り切れるなど、過去の日本公演の中でも、熱量が高かったように思います。それはなぜか?

Kinshasaキンシャーサー!

新日本プロレスから移籍した中邑真輔選手とThe Club(ザ・クラブ)の3人、そしてNXT(過去にBABYMETALがテーマソングに選ばれたこともあるWWEの看板番組の1つ)でのデビュー以来、いまだに無敗のASUKA選手ら、日本人スーパースターたちの初凱旋だったというのも大きな理由ですが、彼らを生で観たい!という気持ちをブーストさせたのは、やはりWWE専門の映像配信サービス「WWEネットワーク」の存在でしょう。

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160716wwelive2.JPGベッキー・リンチと対戦し、ベルトの防衛に成功したASUKA

190以上の国で8100万人が利用しているNetflixをはじめ、定額の配信サービスの普及により、映像コンテンツの消費の形が大きく変わった昨今、会場での生観戦とテレビでの観戦が主な楽しみ方である、スポーツ・エンターテインメントの世界にも変化が起きています。

Bleacher Reportが取り上げたプレスリリースによると、2016年4月時点でのWWEネットワークへの加入者数は182万人(アメリカ国内が139万人、海外が43万人)で、1年間で39%の増加。対応する国がじょじょに増えてきているため、テレビ放送での視聴からWWEネットワークでの視聴へ、世界規模でファンが移行していると考えられます。

160716wwelive4.JPGザ・クラブのフリに応えてダンスを披露するWWEの絶対的トップ、ジョン・シナ

WWEネットワークでは月額9.99ドル(約1,232円)で4,000時間以上のライブラリー、年間12回のペイ・パー・ビュー(大きな大会はこの形式)の生放送、そして何より中邑真輔選手をはじめとした日本人スーパースターが活躍している番組「NXT」の生放送などが視聴可能です(アメリカ版はさらに番組数が多い)。

筆者の家では常に垂れ流しになっていますが、一生楽しめそうなほど膨大な量のアーカイブがあり、これまではスポーツ専門チャンネルにて数週間遅れで放送されていたPPVが生で、そしてNXTも生で見られるので、ファンであれば加入以外の選択肢はありません

そこに中邑選手などを追いかけて「NXT」を見るべく契約した、新しいWWEファンも加わったため、結果的に今回の来日公演には新しいファンが訪れ、高い盛り上がりにつながったと考えられるわけです。プロレスはもともとテレビで見て、会場へ行きたくなるエンターテインメントだったので(2000年以降は違うと思います)、この流れはすごく自然でしょう。

160716wwelive9.JPGWWE世界ヘビー級王者、「狂犬」ディーン・アンブローズ

プロレスをはじめ、スポーツ・エンターテインメントへの映像配信サービスの影響力を感じさせる出来事として、ディズニーがWWEネットワークやメジャーリーグの映像配信のプラットフォームを制作している、MLB Advanced Mediaの株の3分の1を35億ドル(推定)で取得したというニュースがありました。

Bloombergによると、これは視聴者が減ってきているディズニー傘下のスポーツ専門チャンネル「ESPN」が、映像配信サービスの重要性を考慮した判断とのこと。これだけ膨大な金額が動く、つまり観客が動くのが映像配信サービスなのです。

先日開催された、総合格闘技団体UFCの「UFC 200」の放送の中でも「インターネットがUFCを救った」といった言葉を耳にしましたが、UFCも独自の映像配信サービスを持っており、その恩恵を受けています。UFCは約40億ドルで売却されましたが、その金額からわかるコンテンツの価値の高さもまた、配信サービスの時代だからと言えるかもしれません。

アメリカは長年テレビ大国で、テレビこそがビッグマネーの生まれる場所でしたが、オンラインコンテンツの増加と映像配信サービスの台頭によってそれが変化し、映画やドラマだけでなくスポーツ・エンターテインメントもまた、その影響を大きく受けています。

力道山がテレビという新しいメディアを通じてプロレスを広めたように、アメリカではテレビがプロレスを大きなビジネスへと変えたように、映像配信サービスによってプロレスは今進化の時を迎えているのかもしれません。ニュー・デイ、ロックス! てな具合に。

「WWE LIVE」に見た、映像配信サービスと生観戦の今 2「萌え」担当のWWE・タッグチーム王者、ニュー・デイ

source: WWE, WWELive日本公演 特設サイト, WWE Network, Netflix, Bleacher Report, YouTube

スタナー松井