五輪の選手たちは下水の中を泳ぐことに。どうすれば生還できるのか?

2015年のグアナバラ湾

選手たちが競うことになるグアナバラ湾(2015年3月)

もう化学防護服でやってもらったほうがいいのでは…。

リオ・デ・ジャネイロの水が汚水や死体不衛生なのは既に周知の事実ですが、もう間もなく世界のトップアスリートたちが、国際競技の名のもとにその中で泳がなければならないのです。

観客にとってもアスリートたちにとっても気になる大きな疑問は1つ。今回のリオ、どれだけの大惨事になるのでしょうか?

この質問を、米GizmodoのMaddie Stone記者が医者や疫学者の中でもリオの水質に詳しい方々に投げかけてみましたが、総合的な意見としては、かなり深刻なようです。多くの人が水を介した病気にかかり、中には深刻な症状を持った人も出ると予測されています。しかし、出場する競技が水の中で行なわれる選手は、いくつかの基本的な注意を心がけるだけで、大きなリスクを回避できるそうです。

アメリカなら閉鎖レベルの汚染

リオの水路の不衛生に関しては、過去1年間あらゆるメディアが劣悪な環境を報道してきました。

現代的な下水路が無い状況で、過密な居住区から流れてくる人間の汚物により、水は黒くヘドロのようになって浜辺すら覆い尽くしてしまっています。委員会がどれだけ「選手の健康を危険には晒さない」と強調しても、Associated Pressによる16カ月にもわたる取材によれば、リオの水は病気を誘発する有機物が常に存在していると判明しており、危険はもはや避けられない状況であると言えます。

「微生物学的に言って、この水は生汚水と同じです」と語るのは、APの水質検査を行なった、南ブラジルにあるUniversidade Feevaleのウィルス学者であるFernando Spilkiさん。

Spilkiさんの行なった検査はさらに恐ろしいことを明らかにしており、リオの水にはロタウィルスが大量に存在していることが分かりました。このウィルスは嘔吐や下痢に始まり、さらに痙攣、脳炎、髄膜炎など深刻な症状を引き起こします。また検査結果によると、水の糞便性大腸菌のレベルが非常に高く、これらは赤痢A型肝炎コレラ腸チフス、その他多くの病気の可能性を秘めています。匿名という条件で話した疫学者は、同様のレベルの糞便性大腸菌が米国の海で検知された場合、その海は閉鎖されるとしています。

Spilkiさんだけでなく、リオデジャネイロ連邦大学の微生物学者であるReneta Picaoさんは、競技が行なわれる海岸を含めたリオの5つの海岸で、複数の薬品に耐性を持つ危険なバクテリアを検知しました。Picaoさんは米Gizmodoに対し、このバクテリアは珍しいはずなのに、海岸の水からいとも簡単に発見できてしまったことに驚いたと語りました。

感染の可能性:99.999パーセント

どう考えても、もっとも安全な策はリオの海をすべて避けることですが、五輪の出場選手たちはそうもいきません。では、選手のうち何人くらいが病気になり、リスクを回避するにはどうしたらいいのでしょうか?

まず知っておかなければならないのは、水に少しでも触れれば感染はほぼ決定的であるということです。Spilkiさんのデータを元にリスク分析を行なった水系病原体の専門家であるKristina Menaさんによれば「危険な有機物のレベルがあまりに高すぎるため、水に入るアスリートは全員感染する」とのこと。「水との接触がわずかであっても、感染の可能性は99.999パーセントです」と、絶望的な結論を述べました。

しかし、感染するからといって、必ずしも全員が深刻な症状に見舞われるわけではありません。それにはあらゆる要素が絡んできます。例えば患者の健康状態や過去の感染記録、そして即時の接触レベルです。特に薬品に耐性のあるバクテリアについては、子どもや老人、そして免疫不全の人により危険があるでしょう。また選手も含めた健康的な成人の場合、病気に対する抵抗力は、リオで猛威を振るう病原体に過去晒された経験があるかどうかによります。衛生的に問題がある場所で育った選手は、綺麗な水で生きてきた選手より病気に強い可能性はあります。しかし、ウィルスは突然変異が速いうえ、場所によって大きく異なるため、一概に言えることではありません。

それに、言ってみれば下水道で泳いでいるような状態では、免疫力がどれだけ強固であっても、すべての病気から身を守ることはできません。Menaさんは「リスクの軽減とは、接触を最小限に留めること」だと言います。

それは例えば、飲み込まないよう極力努めたり、目に入らないようタイトなゴーグルをつけたり(あるいは頭をつけること自体を避けるか)、頻繁にシャワーを浴びるということです。また、出た後に目をこすらないようにし、消毒薬をふんだんに使って手を清潔に保ち、傷などは即座に洗って保護します。種目によっては、オールのハンドルやボートを漂白したり、ビニールのスーツやグラブの着用が必要になるかも知れません。

とにかく、水との直接的な接触を極力避けることがリスクの軽減に繋がります。

感染したらすぐ病院へ

それに関連して、ペンシルバニア大学の感染症の教授であるNeil Fishmanさんは、抗生物質の予防投与に注意を促しています。抗生物質が効くかどうかは病原体の種類によるうえ、ウィルスに対しては効果がありません。そのため、「予防として抗生物質を投与するのはデメリットのほうが大きい可能性がある」と発言しました。また、抗生物質は人間が本来持っている微生物群のバランスを大きく崩すことがあるので、クロストリジウム・ディフィシレのように、そういったチャンスを狙って増殖する菌に対して抵抗力が弱くなってしまいます。

「恐らく唯一の策は、感染直後に素早く治療を行なうことです」とFishmanさんは言います。

Picaoさんは、もし傷口が感染したように見えたら、患者は即座に主治医に連絡し、多剤耐性菌に感染したかも知れないと伝えるべきだとしています。

まとめてみましょう。もしあなたが、選手として、あるいは地獄絵図を外野から見るための観客として今月リオに向かう場合、水との接触したらほぼ確実に下痢、またはそれ以上の症状が待っています。水との接触が避けられないのであれば、最小限に留めるようにつとめ、シャワーを頻繁にあびて、帰宅後は即座に診察を受けましょう。運がよければ、トイレで泳いだことにより鋼鉄の度胸が得られ、ありとあらゆる病気に耐性のついたスーパー免疫を獲得し、現代的な衛生技術に深い感謝の気持ちが芽生える…かも知れません。

選手の皆さんが無事に帰還できるよう祈っております。

image by Antonio Scorza / Shutterstock.com

Maddie Stone - Gizmodo US[原文

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