ハリウッドの鬼軍曹によるハーレイ・クインの描写は完璧! 映画「スーサイド・スクワッド」をレビュー

「スーサイド・スクワッド」

やっぱり“悪カワ”ヒロインはキャプテン・ブーメラン!?

舞台裏のヤバさも話題となっている、DCコミックスのヴィランが集結する映画「スーサイド・スクワッド」。今回は本作を一足早く鑑賞してきた感想をお届けします。

極力ネタバレは控えていますが、気になる方はご注意ください。

ストーリーと予習

本作は「フューリー」や「エンド・オブ・ウォッチ」など、ハードな作風で知られる「ハリウッドの鬼軍曹デヴィッド・エアー監督の作品ということで、一体どんな地獄が待ち受けているんだ!と身構えていきましたが、(エアー監督の作品にしては)予想よりライトな作品でした。

もちろん人命の大安売りで人はポンポン死んでいくし、グアンタナモ収容所を彷彿とさせる残酷なシーンなどもありますが、そういった描写に対しての劇中での反応は比較的軽く、ストーリーも複雑だったり重苦しくかったりすることはありません。あまり血は出ないので、むしろ残念という人はいるかも?

同じDCEU(DCの映画世界)の「マン・オブ・スティール」のようにコンスタントに回想が入るわけでもなく、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」での幻覚シーンのような(「一体何が起こっているんだ!」的なワクワクはあれど)いったん観客を置き去りにしていくシーンもないので、非常に見やすい構成の映画です。

時系列的には、「バットマン vs スーパーマン~」の後に位置する物語ですが、それほどつながりが濃くはないので、予習一切なしで、「スーサイド・スクワッド」単体で見ても十分楽しめるでしょう。

あえて予習をするのであれば、エアー監督の「フューリー」を観ておくと監督の作風を感じられて楽しいかも。なぜなら、「スーサイド・スクワッド」は「腕は立つが頭がオカシイ連中に編入させられた男が、戦いの中で狂人たちと信頼を築いていきながら、酒を酌み交わし決戦に挑む」という作りが「フューリー」に似ているからです。

全体を通してマーベルの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の影響を受けていることが感じられる作品にもなっています。そっくりな構図のシーンがあるわけではないものの、キャラクターの導入の仕方や各場面での音楽の使い方などから、アライグマと木のコンビがぼんやりと脳裏によぎるレベルで似ています

実はどちらの映画も(そして原作コミックも)1967年の戦争「特攻大作戦」の影響を色濃く受けているので、似てしまうのは仕方がないのかも……?

キャラクター

スーサイド・スクワッド

なんといっても本作の売りでもある多数のキャラクターは、それぞれに割かれている時間に差はあるにせよ、魅力的に描かれています。

おそらく一番注目を集めているハーレイ・クインは、コミックや予告編でのイメージ通りの“異常に”楽しいキャラクター

完全に狂ってはいますが、恋に一途な女の子といった表情や行動は本当にかわいい。本当はイイ子なのでは……?と思ってしまうシーンもありますが、とはいえ怖いですし、お近づきにはなりたくないでしょう……。そんなキャラクターをマーゴット・ロビーが見事に演じています。

精神科医だったハーレイがジョーカーのカウンセリングを担当したことで、彼との恋に狂っていく……というアニメとコミックのオリジン・エピソード「マッド・ラブ」に、新しい方のコミック版のオリジンを混ぜたような誕生秘話が語られ、そこに関しても過不足はありません。直接的なコミックの再現もいくつかあり、ファンならきっと満足できるはず!

ただ、言ってみればジョーカーのデートDVによって誕生したという、原作通りなもののヒドいオリジンがほとんどそのまま描かれるので、アメリカで批評家たちがそこを問題視したのもよくわかります。個人的には、デートDVのパートはなくても良かった気も……。

また、撮影現場でのクレイジーすぎるエピソードもあって注目を浴びているジャレッド・レトのジョーカーは、顔見せ以上の登場シーンがあり、メインのストーリーにも絡んできます。

その性格は「ダークナイト」で描かれた混沌の体現者というよりは、ティム・バートンの「バットマン」での残酷で予測不能な犯罪王を、メキシコの麻薬王などを参考に現代的にアップデートしたという雰囲気です。

個人的に一番気になっていた「ウィル・スミスはたとえ悪役をやっても、いつものウィル・スミスなのではないか?」問題ですが、やはりウィル・スミスはウィル・スミスという結論に至りました。

好みとしてはドラマ「アロー」のデッドショットの方が、原作にも雰囲気が近くてカッコいいと思いましたが、いつものウィル・スミスの通り、ワルでも愛嬌のある、カッコつけたがりなキャラクターとなっています。

そして何度か熱く(?)紹介してきたキャプテン・ブーメランは、憎みきれない小悪党という雰囲気が最高に悪カワに描かれています。あと、ピンクのユニコーンは本当に好きな模様。冒頭でヒーローに捕まる役とかにピッタリだと思うので、今後いろんな作品に顔を出してほしいところです。

そんなキャラの濃い連中の中で個人的に気に入ったのは、狂人集団とともに命がけのミッションに送り込まれる兵士たち。彼らはほとんどセリフもなく、名前が呼ばれることすらありませんが、上官のリック・フラッグの命令に忠実に従い、悪党を最後までサポートしていきます。

誰に感謝をされるわけでもなく、ただひたすら世界を救うために頑張る姿を静かに描くという軍人の描写は、やはりエアー監督ならではと言えるかもしれません。

特にクリント・イーストウッドの息子のスコット・イーストウッドはカッコ良かった! ちょっと見つけづらいかもしれませんが、劇場でご覧になる際にはぜひ注目してみてください。

凄まじい能力を持ったキャラクターがどんどん登場する映画ですが、人物像自体はかなり人間臭く、神々の戦いにも見えた「バットマン vs スーパーマン~」とは対照的に、自然と主人公たちに感情移入できたのも、個人的には「スーサイド・スクワッド」で気に入ったポイントです。

アクション

元アメリカ海軍の潜水艦乗りで、軍事・警察関係の友達がたくさんいるというエアー監督だけあって、(役者たちは厳しいトレーニングを積んだという軍人系のキャラクターのアクションは、動きがかなり本物っぽくってカッコいい!

一方で、そういった動きはあまりスクリーン映えしないもの。さらには、他のキャラのアクションもリアルではあるものの、やや地味な印象を受けたので、アメコミ映画にしてはややカタルシスに欠けると感じる人もいるかもしれません。

キャプテン・ブーメランが、基本的にブーメランを近接格闘武器として使っていたのもちょっと残念なところ。エアー監督的には、ブーメランはリアルじゃなかったのか……?

とはいえ、炎を操る「エル・ディアブロ」のコミックでの設定を反映した大活躍など、派手なシーンもあるのでご安心ください! あれは劇場でまた見なければ……!

音楽

個人的に大きく期待していた音楽もワルな連中の雰囲気が出ていて、これまでのDCEUの中では一番グッときました。特に良かったのはtwenty one pilotsの「Heathens」(動画はFueled By Ramen)より。

さらに、もはや懐メロの領域に入っているこの曲(リンク先ネタバレ)が「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でいうところの、The Runawaysの「Cherry Bomb」的な使い方がされており、印象的なPVを思い出すし、場面が歌詞の内容ともマッチしていて最高でした。

一方で、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でも使われている、ある曲を使用しています。特に必要性を感じなかったシーンなので「なんでわざわざこの曲を……?」と感じました。

***

総じて、画面はほとんど夜だけど気軽に楽しめる娯楽映画として作られており、「DCEU作品はもう疲れたよ……」という方や「アメコミは詳しくないけどハーレイ・クインやキャプテン・ブーメランは気になる!」という方も、観に行く価値のある作品です。ぜひ肩の力を抜いてお楽しみください!

映画「スーサイド・スクワッド」は9月10日(土)全国ロードショー。

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNEENTERTAINMENT LLC

source:映画「スーサイド・スクワッド」公式サイト, YouTube1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9

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