映画「バイオハザード:ザ・ファイナル」ポール・W・S・アンダーソン監督にインタビュー

バイオハザード:ザ・ファイナル

本当に最後?

最新作ではVRに対応する人気ゾンビサバイバルゲームの同名実写映画シリーズ「バイオハザード」の最新作、「バイオハザード:ザ・ファイナル」が12月23日(金・祝)に公開されます。

今回はシリーズの全作品に関わり、本作でもメガホンを取った、ポール・W・S・アンダーソン監督に話を伺いました。

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――いよいよシリーズの完結編ですが、企画や製作においてのポイントになったのはどういったところでしょうか?

ポール・W・S・アンダーソン(以降、アンダーソン):物語の面でいえばハイブ、そしてラクーンシティ、つまり1作目の地に戻るということ、そしてアリスが自分の正体をついに知るということがポイントになりました。

製作に関して言えば、アフリカで撮影するという選択をしたことです。アフリカで撮影すれば、単純に場所として素晴らしいだけでなく、エネルギーやスペクタクルな部分もクリエイティブなかたちで注入できるのでは?と思いました。

――監督ほど同じシリーズに長い期間関わっている人は少ないかと思うのですが、シリーズを続けていく中で一番意識したこと、楽しかったこと、難しかったことは何でしょうか?

アンダーソン:確かにひとつのシリーズに同じ人がここまで関わっている例はあまりないと私も思います。「バイオハザード」シリーズに参加し続けたのにはいくつか理由があるんです。

多くのシリーズものは作り手が変わることで、そもそもの作品が持っていた成功の理由やビジョンが崩れてしまうことがよく起こります。実際に私も「モータル・コンバット」と「エイリアンVSプレデター」で体験していたので、「バイオハザード」に関しては最後までやり通したいと最初から強く思っていました。自分のキャリアの中でも何かすばらしい記念碑的なシリーズ作品を残したいという思いがあったからです。

ミラ(・ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリス・アバーナシー役)もまれな例ではないでしょうか? 同じシリーズの主役を6本も続けた俳優はなかなかいません。私と彼女が一緒に作っているというのも、シリーズが成功している理由ではないでしょうか。私は脚本も書くし、監督もするし、ミラという俳優と仕事をすることも大好きで、一緒に楽しんでいるので、作り続けることができたんだと思います。

ミラは私の監督作のうち7本に出演していますが、彼女は間違いなく私のミューズです。他の人とも映画を撮りますが、ミラとタッグを組むたびに新たにエネルギーを感じますし、新しいチャレンジがあります。

また、ゲームがそもそも持っていた終末的な世界観というのが、若いころから大好きです。私は英国出身ですが、英国のティールームを舞台にしたロマンティック・コメディを撮るよりは、よっぽどこういった廃墟のような場所で撮る作品のほうが好きです(笑)。映画を作る理由が「『バイオハザード』が大好きだから」というピュアなものだったから継続できたのだと思います。

――本作がシリーズの“最後”とのことですが、なぜ今回で完結させることにしたのでしょうか? 監督がシリーズで描きたいことはすべてやりきったということでしょうか?

アンダーソン:いくつか理由はあるんですが、やはり6本のシリーズを手掛けたということは、いわば3部作を2回できたわけで、それは非常に大きな達成感があります。すべてのものは終わらなければならないわけで、このシリーズが強いうち、皆さんに愛されているうちにスペクタクルな形で終わらせたかったんです。

それに加えて私はこの15年、アンブレラの真の目的、レッドクイーンの正体、これらの秘密を抱えて生きてきました。それを観客の皆さんに明かしたいという強い思いもあり、今がフィナーレの時だと考えました。

――『ポンペイ』(2014年)で来日された際、「5とは、そうとう違う作品になりそうだよ。ビジュアルの点も含めて、もっとハイテンションで、恐怖も倍増。たぶん、これまでのファンはショックを受けて驚くと思う。心の底から最高のバイオになると思う」とおっしゃっていました。それは実現できたでしょうか? また、“ファンがショックを受ける展開”について、もうすこし教えてください。

アンダーソン100%実現できたという自信があります。ビジュアル的にも目を見張るものがありますし、ロケーションの選択もばっちりでした。

これまでの作品に比べると、よりザラザラとした、リアリティーを感じられる映像になっていますし、ついにアリスの物語の終わりであり、彼女やアンブレラの真実が明らかになるので、非常にエモーショナルな内容になっているのも、ファンにとっては新鮮なのではないかなと思います。

また、1作目はホラー色が強い作品だったと思いますが、その要素がまた戻っています。壮大な世界観ではありますが、1作目が持っていた閉塞感、そしてそこから湧き出る恐怖感というものも感じられるはずです。

さらには、アクションはシリーズの過去の作品のどれと比べても最高のものになっているので、それらのコンビネーションできっと満足していただけると思います。

――本作でのアクションの注目ポイントはどこでしょうか?

アンダーソンアンブレラの黒い兵士を運搬するための装甲車が登場するんですが、その上でアリスとドクター・アイザックスのバトルシーンが繰り広げられます。このシーンでは、スタントは最小限しか使わずに、動く車両の上で俳優本人たちがアクションをしました。

撮影はアフリカの非常に暑い気候の中でしたし、車もある程度スピードが出ている状態で、アクション自体も部屋の中で普通に撮っても大変なレベルの複雑なものです。さらに、車の上から落ちてしまうと、周りにはゾンビの大群が待ち構えていて襲われてしまう、というエキストラもたくさん登場するシーンだったので、撮影は非常に大変でしたが、間違いなく作品のハイライトになっていると思います。

バイオハザード:ザ・ファイナル2

――「バイオハザード:ザ・ファイナル」は1作目が公開された2002年から14年かけての完結作ですが、その間に一番進化したと感じている映画のテクノロジーとそれによって実現できるようになったシーンや表現(バイオに限らず)があれば教えてください。

アンダーソン:ゲーム・映画に共通して「バイオハザード」の世界には“犬(ケルベロス)”が印象的な存在として登場します。

当初、CGだけではリアルに再現できなかったので、本物の犬の撮影をし、そこにCGを加えるというハイブリッド的に表現していたんですが、現在の技術ではついに100%CGでも作れるようになりました

これまでにもフルCGで描かれたクリーチャーというのはさまざまな映画に登場していますが、どうしてもファンタジー臭が漂うものが多いと感じます。現在ではリアルな表現がフルCGでもできるようになったので、5匹くらいまでしか登場されられなかったケルベロスが、今回は50匹くらい一気に登場して、アリスを追いかけるシーンを撮れました。最高でしょう?(笑)

他のテクノロジーだと、私が3Dを好きなのは皆さんよくご存じかと思います。3Dを上手く使うことができれば、観客の没入感を高められるので、特にこの映画の場合は世紀末のワシントンDCやハイブの中の閉塞感を、さらに楽しんでもらえるようになっています。

これまで私は4本の3D映画を作りました。そして5本目の今回、初めてコンバージョン(2Dカメラで撮影して編集で3Dにする方式)に挑戦しました。それを選択したのも、コンバージョンのレベルが非常に高くなってきているからです。

3Dカメラでの撮影だとカメラが大きいので、どうしてもカメラワークに制限が出てしまいます。2Dカメラでは、より動きのある画をさまざまなアングルから撮影できます。そして、それを質の良い3Dに後から変換できるようになってきたんです。

さらに、今回の撮影監督は何度も3D映画を手掛けているグレン・マクファーソンです。彼は3D映画がどういうものなのかをわかった上で、2Dで撮影を行っています。これまでコンバージョンではあまり良いものができないと言われていたのは、技術のレベルだけでなく、3Dのイメージで撮らずに2Dカメラで撮影してしまったものをコンバージョンしていたからという理由もあるのではないでしょうか? そういった面でも、本作は3D映画としても革新的な作品になると思っています。

バイオハザード:ザ・ファイナルのポスター

――今回は日本からローラさんが出演しています。彼女を起用した理由はなんでしょうか? また、彼女のアクションはいかがでしたか?

アンダーソン「バイオハザード」シリーズには、そもそものDNAに「日本」というものが色濃くあります。そのため、日本との絆を大切にしてきました。中島美嘉との渋谷でのシーンでもその絆をより強められたと思っています。

今回の作品は北米が舞台ですが、日本とのリンクは続けたいと思って、ローラを起用することになりました。しかし、彼女は現場に来たときに、おそらくショックを受けたと思います。

というのも、中島の登場するシーンは白い空間の中で、おしゃれにスタイリングをされた衣装に身を包み、ゾンビにしては髪型も最高にキマっていましたし(笑)、そういったキレイな環境の中で撮影をしました。一方のローラは、スタジオのセットではなくアフリカのロケーションで、土や埃にまみれながら、血塗られた大きな刀を持ってもらっての撮影だったんです。

最初は驚いたと思うのですが、仕事ぶりは最高でした! 文句ひとつ言わず、乗り越えてくれましたし、アクションシーンもかなり良い瞬間があるのでお楽しみに!

東京コミックコンベンション 2016」でメイン作品としての出品が決定!
SonyPicturesJapanより

――ミラさんとはどういう会話を重ねて、どういう思いで本作の製作は進めたのでしょうか? また、以前アリスにクリント・イーストウッドのイメージを重ねていると言われていましたが、今回はいかがでしょうか?

アンダーソン:本作でのルックスが、かなり地に足のついた、リアリティーのあるものになっているのは、よりキャラクターと向き合って、彼らの感情を観客の皆さんにも感じてほしいと思うところから出来上がりました。それはミラとの会話の中から生まれたんです。

アクションの上では、今回も間違いなくミラはイーストウッドですが、加えて今回は、過去の作品に比べるとびっくりするくらいエモーショナルな作品に仕上がっています。

アリスが自分にまつわる真実を知るシーンのミラの演技を見て、あまり感情的にならない私もすごく心を動かされました。今回が最終章で、彼女の物語がここで完結するということもあるのですが、なんといっても自分が誰であるかを知ることによってもたらされる感情には本当にグッときます

観客の方もそれを知って、あらためてこれまでの『バイオハザード』を違う目で見直したくなるのではないかと思います。そういうミラの演技が作品に新しさをもたらしてくれて、シリーズにとって非常に良い影響がありました。

――アリス役を演じきったミラ・ジョヴォヴィッチさんに、監督として、夫としてかける言葉は?

アンダーソン:「次は何をしようか?」と声をかけようかな(笑)。

――映画界でこれだけの超大作のシリーズを、パートナーとともに作ってきた映画監督というのも稀有だと思うのですが、監督の映画人生において、「バイオハザード」とはどういう存在でしょうか?

アンダーソン:そうですね。6本の作品に同じ映画監督がここまで関われたというのは本当に稀有だと思います。さらに作品としても成功していて、同じ役者が主演で、というのもシリーズとしては珍しいですよね。私たちがこの作品で達成できたことは、すごく誇らしく感じています。

しかも、1作目のときはドイツと日本の出資だけで作られ、アメリカでの公開も実際に撮影が終わってからやっと決まるというくらいの規模で、成功への期待も非常に低いものでした。そんな中で見事に成功を収めることができたことも誇らしいです。

関わった人々が100%コミットして、自分たちが作りたいからという熱い重いで作っていたからこそ、これだけのものができたと思っています。私自身、1作目ではギャランティーが決まらないうちに脚本をすべて書き終えて、そのあとで脚本代を決めたんです。監督料もあとからもらうようにしています。ミラを含め、クリエイティブな人々が純粋に作りあげたシリーズなんです。

映画「バイオハザード:ザ・ファイナル」は12月23日(金・祝)世界最速公開。

source: 映画『バイオハザード:ザ・ファイナル』オフィシャルサイト, 東京コミコン公式サイト

スタナー松井