ありがとうEyefi。IoTのイノベーションを牽引したプロダクトの幕引きのしかた

ありがとうEyefi。IoTのイノベーションを牽引したプロダクトの幕引きのしかた 1

イノベーションを起こしたプロダクトの終焉。

無線LANを搭載し、カメラから直接PCやWebサービスに写真をアップロードできるSDカード「Eyefi」。2008年末に日本国内で発売された当時は、「IoT」なんて言葉も概念もほとんどの人が知らなかった時代、EyefiはあらゆるデジタルカメラをIoTデバイスにする魔法のSDカードでした。

それから8年、Eyefiはカードをより便利に改良し続け、Eyefi Cloudのサービス等をリリースしてきましたが、今年7月、Eyefiは2016年9月16日をもって、X2以前の製品は限られた機能のみ残し、サポートの対象外になるとアナウンスしました。「Eyefi」というブランドは残りますが、Eyefiカードそのものの販売の継続はなくなり(でもまだAmazonやヨドバシなどで購入できるようです)、X2以前の製品は使えないことはないけれど、サポートの対象外となります。

6月17日に、「Eyefi Cloud」は、リコーの研究開発子会社であるRicoh Innovations Corporation(RIC)が取得し、サービスを継承することが発表されました。8月23日には、東芝がEyefi社とライセンス契約を締結し、東芝の「FlashAir」にEyefi Connected機能を搭載すると発表し、既存のFlashAirカードでもEyefi MobiアプリやEyefiクラウドサービスが使えるようになることが明らかになりました。

この一連の事業売却に伴い、日本の事業子会社であるアイファイジャパン株式会社は2016年8月31日付けで解散となりました。

アイファイジャパンの(元)社長、田中大祐さんは8月31日、自身のFacebookにこう綴ります。(一部省略)

アイファイジャパン株式会社は本日解散となり、私も同社を退任することとなりました。

ちょうど8年前の8月にEye-Fi Incの最初(で最後)の海外子会社としてアイファイジャパン株式会社を一人で立ち上げ、その後様々な方々との出会いに助けられて、「ワイヤレスメモリーカード」というジャンルを開拓し、広くデジタルカメラをIoTデバイスに進化させるイノベーションを進めることができました。

アイファイジャパン株式会社立ち上げの経緯と心境は4年前に書いたこのブログにあるとおりで「5周年はあっても10周年はないと思え」という言葉通りの展開となってしまいました。

でも、私はそれで良かったのだと思っています。イノベーションはその役割を果たしたら、イノベーションではなくなるからです。「あたりまえ」になることがイノベーションのゴールなのです。

現在発売されているほとんどのデジタルカメラにはWi-Fi機能が搭載されるようになり、Eye-FiカードはデジタルカメラをIotデバイスに進化させるという一つの役割を果たしたのだと感じています。そういった意味では、Eye-Fiの創業者4人(Berend,Eugene,Ziv,Yuval)が考えてきたイノベーション、彼らが12年前にマウンテンビューの小さなカフェでナプキンに描いた未来「すべての写真が瞬時にクラウドに保存され、どこからでも見れるようになる世界」は完璧ではないにしても現実となったのだと思います。

Eyefiという会社はなくなりますが、多くの皆様に愛されてきたEyefiブランドはデジタルカメラになくてはならない機能名として残ることとなります。

振り返ると、たった8年でカメラ業界・クラウド業界がいかに急激に変化したか、あらためて驚かされます

その中で、皆様と出会い、一心不乱に事業に打ち込めたことを幸せだったと感じているとともに、もうEyefiという立場でそれができなくなるという寂しさも感じています。

そして、これを知ったEyefiユーザーはびっくりするかもしれません。

「私のEyefiカードは使えなくなっちゃうの?Eyefi Cloudに写真たくさんアップしてるけど、どうなっちゃうの?」

情報をまとめると、

  • ・Eye-Fi X2より前の旧製品はサービス提供を終了、使えなくなる(もちろん、ただのSDカードとしては使える)

  • ・(すでに販売は終了しているが)Eye-Fi X2カードは、このアプリをインストールすることでパソコンに転送する最低限の機能のみ動作する(創業者のBerendが「最後の力を振り絞って開発したアプリ」だそうです)

  • ・新しく事業を取得したリコーによって、Eyefi Mobiシリーズは継続して使える。アプリも使える。サポートも行われる。

    Eyefi Cloudもリコーによって事業を継続。メンバーシップやサービス内容など、直ちにユーザー側に影響する変更はなく、現在利用中のユーザーも、新しいユーザーも、これまで通りにEyefi Cloudを利用できる。

  • ・東芝の「FlashAir」にEyefi機能を搭載するようになる(既存のEyefiユーザーにはあまり関係のない話)

リコーやら東芝やら登場して複雑に感じるかもしれません。ですが、つまりは、2009年頃に発売されたX2より前の旧製品は基本的に使えなくなるけれど、それ以外のユーザーは今のところ、ほとんど影響がないということ。ユーザー保護を最優先にした終焉のかたちですね。

筆者も初期版からのEyefiユーザーで、今もEyefi mobi ProをメインSDカードとして使っています。だからこのEyefiの終了は寂しいけれど、タイトル通り「ありがとうEyefi、さようならEyefi」という気持ちです。

当時は魔法のカードだったけれど、今はカメラ側にWi-Fi機能が搭載されるようになり、Eyefiの恩恵を受けるシーンは減ってきたのも事実。イノベーションを起こしたプロダクトの終焉を、寂しく優しく見守りたいと思います。Eyefiのみなさん、ありがとう、そしてお疲れさまでした。

source:Facebook, 東芝

(mayumine)