猿人のルーシーの死因は木からの落下か。皮肉にも、木の上で生活していた証拠に

    猿人のルーシーの死因は木からの落下か。皮肉にも、木の上で生活していた証拠に

    木で暮らしていたはずなのに、木から落ちるとは…。

    私たち人間のご先祖様、猿人の中で最も有名な「ルーシー」。そんな彼女の死因が、木からの落下死ではないかという説がでました。事実であるなら、進化の過程のわりと最近まで木の上で生活していたことになりますが、研究者の中には疑う声もあります。

    Natureに掲載された新たな研究によると、テキサス大学オースティン校の古人類学者のJohn Kappelmanと共同研究者たちは、ルーシーは木から落ちて亡くなったという仮説をたてました。

    彼らはルーシーの1320万年前の骨についた、場所によってはかなり酷い骨折のあとを調べてこの結論に達しました。この研究により、丁度ヒトが登場し始めた頃、アウストラロピテクス・アファレンシスが木の上に棲息しており、まだ二足歩行のヒト科にそういった習性があった可能性が浮上しました。

    ルーシーの現存している骨は全体の40%しかありませんが、発見された中ではヒト科で最も古く、完全な化石の一つなのです。彼女が属するアウストラロピテクス・アファレンシスは390万年前から290万年前までアフリカに生息していました。人間同様にこのヒト科も二足歩行であったようですが、木の上に住んでいたのかは分かっていませんでした。しかし、今回の新しい研究によればその習性は霊長類たちの中に比較的最近まであったということになります。

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    ルーシーの化石(image: Marsha Miller / UT Austin)

    「人類の進化において木の上での定住に関する議論の元となる化石が、木から落ちて死んだ可能性があるというのは皮肉なことです」とKappelmanは公開の際にコメントしました。

    研究者たちはルーシーの骨をスキャンし、3万5000箇所の断面のデジタル画像を作り出した上でこの結論に至りました。テキサス大学オースティン校、Jackson School of Geoscience内にある高解像度コンピュータ断層撮影施設(UTCT)を利用し、肉眼に見えない骨の細部の様子や構成を視覚化したのです。

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    スキャン中の骨(image: Marsha Miller / UT Austin)

    最初に研究者たちが注目したのは、ルーシーの右上腕にあった、珍しく奇妙なほどハッキリとした骨折でした。「こういった圧迫骨折は、落下の際に手が地面に当たり、肩の各部がお互いに衝撃を与えることで起こり、上腕骨に特徴的な骨折の痕を残します」とKappelman。

    整形外科医の協力を得て、研究者たちは骨折がかなりの高さ(約12m)から落下し、ルーシーが衝撃を和らげるために腕を伸ばした際に発生したと結論づけました。似たような骨折はルーシーの骨の他の部分や現代における骨折の症例にも見られます。骨折のパターンを解析した結果、ルーシーは足から先に落ちて、腕で身構えた後に前に倒れ、重傷を負ったせいで落下の後すぐに亡くなったと研究者たちは言います。

    「ルーシーの複数の重傷に注目が集まった時、私の頭には彼女の姿が思い浮かび、時と空間を超えて彼女に共感を持っていました。死を知ったことで、彼女はただ箱に入った骨ではなく、小さく、怪我を負った体で木の下に力なく横たわる一人の個人となったのです。」とKappelmanは語りました。

    そもそも、二足歩行のヒト科動物、体重は約60ポンド(約27kg)で背丈は3.5フィート(約1.07m)程のルーシーは木の上で何をしていたのでしょうか? 仮説では、彼女は食べ物を探していたか、木の上に寝床を探していたとのことです。

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    ルーシーの骨の3Dプリントを持つJohn Kappelman(image: Marsha Miller / UT Austin)

    しかし、ルーシーが木から落ちたという説を誰もが信じているわけではありません。New York TimesにてCarl Zimmerが書いたように、生き物が骨折する時には曲がった部分が生じます。細かく検査をしたら、ルーシーの骨にも曲がった跡があるかもしれませんが、確認されていません。彼は南アフリカのプレトリア大学の考古学者であるEricka N. L’Abbéの言葉を引用しています。「一番の問題は、研究者たちが顕微鏡で骨を観察しなかったことです」また、別の可能性として、ルーシーが死後、砂に埋もれた後に骨が折れたということも考えられます。

    確かに説得力がありますが、そこまで詳細な仮説をたてるには情報が少なく状況証拠でしかありません。また、既に存在する証拠とすり合わせを行わなければなりません。ところで、アウストラロピテクス・アファレンシスは足が平たく、歩くのに適していたという事実があります。ルーシーはより遠い彼女の先祖と違って木登りには適していなかったのです(実際に彼女が木から落ちたとすると、彼女が落ちた原因の説明にはなります)。それでも、Kappelmanはルーシーが地上と木の上どちらでも移動できる特徴を持っているため、両方で生活していたと信じています。

    ルーシーの骨のデータは一般公開され、eLucy.orgで閲覧できるようになっています。なので、今回の説を疑うという人は自分でデータを確認できます。エチオピア国立博物館の許可のもと、誰もがダウンロードやプリントをし、仮説の証明を行うことができるのです。

    source: Nature

    George Dvorsky - Gizmodo US[原文

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