【TK Future Labスタート!】小室哲哉さんが歌詞の見えるスピーカー「Lyric Speaker」で考える“これからの音”とは?

TK_小室哲哉_ローリングストーン

人は音に反応した時、何を見てるの?

新しいテクノロジーやトレンドを深く掘り下げて、「テクノロジーとエンターテインメントの未来を探す」をテーマにしたスペシャルな企画がスタートします。

テクノロジーの未来が気になる方、新しいエンタメ体験を探している方、そんな読者の皆さんに少しでも答えたいという思いで始まったこの企画に協力してくださるのは、知らない人はいない日本を代表するプロデューサーで、超がつくほどテクノロジー好きで知られる小室哲哉さん。企画名は「TK Future Lab」です!

ギズモード・ジャパンと音楽メディア「ローリングストーン日本版」との共同企画として始まったこの連載、第一回目となる今回は、再生する曲と同期して透過型ディスプレイに歌詞を表示させる「Lyric Speaker」(リリック・スピーカー)をハンズオン。未来のスピーカー像と歌詞の在り方に迫ります。

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Giz:今回Lyric Speakerを体験されて、どんな印象を受けられましたか?

小室哲哉(以下TK):『Get Wild』、『DEPARTURES』を歌詞付きで再生してもらいましたが、オシャレにしてもらったなと(笑)。もし今『Get Wild』をCMにしたら、こうなるんじゃないかなと感じてます。古い楽曲も今の時代に引っ張ってきてくれるけれど、ギリギリのところまで寸止めしてくれるというか、オンタイムにしてくれる。

鳴ってる音と同じ歌詞が同時に流れると、すごいフェス感を感じさせてくれますよね。音楽の歌詞カードを見る時と、ライブの巨大なLEDディスプレイを見るのでは同じ内容でもすごく説得力に違いがあるように、どちらかというとフェス感覚に近いエフェクトがある気がしますね。今ここにいる3人で曲を聴いているこの体験がライブ感というか。小さなフェスが行われていると思ってもいいかもしれないですね。ちょっとした発想の転換ですよね。人ってどうしても音が鳴る方向を向くじゃないですか。そこに歌詞が表示される。違う情報でも身体を向けてしまう人間の行動を上手く活用していますよね。

Giz:今、オーディオテクノロジーは音質を含めてすごい勢いで変化していますが、スピーカーの進化系とはどのように考えていますか?

TK:スピーカーのファンクションがあまり気にならなくなり始めていることは、理想に近づいている感じはしますね。スピーカーを目の前に置かなければダメなんですよ、じゃなくてインテリアとして周りを複数人で取り囲んでもいいという考え方も進化だと思います。

それから、スピーカーが音のエフェクトを演出するデバイスになってきている気がします。例えば、DJユニットのAxwell Λ Ingrossoがイベントに出演した時、面白いスピーカーの使い方をしていたんです。DJブースの前に誰にも分からないようにスピーカーを設置していたんですね。しかも黒い幕を被せて見えないようにわざと隠してプレイしていたそうです。そして、ある曲のある部分が流れる時に、その幕をバッと外して、スピーカーから大音量を流す。新しい音を加えてお客さんを楽しませるという演出をスピーカー一つで作ったんですね。ステージ中央の、今まで何も無かった角度から急に大音量の音がドッと聴こえてくると、それだけでお客さんを驚かせられる。スピーカーの使い方を変えるだけで、聴いている人を楽しませる音のエフェクトが生まれますよね。音をいじるだけでもまだまだ色々作れる感じがしていて、そこに一つの未来というか進化を感じます。

つい先日、映画の『スーサイド・スクワッド』の試写会に招待されて行ったんですけど、会場が国際フォーラムで、映画館とは違う僕らがライブをやる場所で上映だったんですね。映画館の音響じゃなくてPAからサラウンドで流れてくる音で映画を見ると、ライブ感がいつも以上に感じられたんです。ホール独特のアンビエントがあるので、全然変わりますよね。映画館で見るより映像が格好良く見えた気がした。作中に『ボヘミアン・ラプソディ』が流れるんだけど、ライブ会場にいるような感じになると、映像もより一層目に入りやすくなりますね。その試写会は、直接音楽ではないけれども、音の未来を考える一つの体験になりました。

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出音の最後まで責任を持つということ

Giz:では今の時代の音楽シーンで、アーティストとスピーカーはどんなつながりを持っているとお考えてすか?

TK:例えば、世界のDJの人たちがプレイする時、何をしているかを一言でいうと、どんな感じに音を聴かせられるか、そこに集中している気がしているんですよね。キックの音や低音の出方をコントロールしたりして、音を聴きやすくしている。サウンドエンジニアに近いことをプレイしながらリアルタイムでやっているかもしれないと感じます。DJは音を分かりやすくして聴かせてくれる。そこでスピーカーやPAシステム、プレイする会場、場の雰囲気と密接につながってくると思いますね。音に違いを出すために、この辺を調整しているんです。何にもしないでただ音楽を流すだけだと、やっぱり良くないんですよ。EQやボリュームといったちょっとしたエフェクトを掛けるだけで全然違って聴こえます。音楽フェスでヘッドライナーをするアーティストになればなおさらその違いがスピーカーで明確に聴こえてくるので、今の時代でプロのDJはこういうことなんだなと改めて感じます。

出音の最後まで責任を持つということが、今のDJの音楽というかフェス文化とも受け取れる。DJの役割って、聴いている人が気持ちいいと思わせる音を最後まで届ける責任が含まれると思う。だから、あまりなめちゃいけない(笑)。世界で評価されるDJの人たちの凄さは、ユーザーに音を届ける作業を最後まで完璧に出来るプロフェッショナリズムというかそこが分かっていることな気がします。でもミュージシャンの中には自分の音を届けたいという思いが強い人もいて、”音をいじる”ことに抵抗を感じちゃう場合もあるはず。だから両立することは難しいかもしれない。ミュージシャンでも、そこが分かっている人はプロデューサーになって、そこに気を使ったりしてますよね。

これが21世紀だなとそう感じさせるスピーカーですね

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Giz:Lyric Speakerを含めて、スピーカーとエンターテインメントの関係においてどんなところに注目したいですか?

TK:Lyric Speakerは便利ですよね。今はスマホを使って音楽を聴く事自体が便利になっているけれど、家に人を招待した時とか、何人かで音楽を聴く時には、スマホの画面を見ないでスピーカーの画面を見るようになるかもしれない。スマホを見なくても歌詞が見えることは大きいし、今までのカラオケとも違う形で音楽を人と一緒に楽しめる。これが21世紀だなとそう感じさせるスピーカーですね。Lyric Speakerの凄いところは、これまで無かったアイデアを実現している「ゼロから1」を作っているところだと思います。これからは、例えば壁に歌詞が投影できるとか、サラウンドにするとか、大事なところだけ歌詞を出すとか、プラスアルファの部分にも期待したいですね。

これまで関係のなかった二つの体験が一つのデバイスに入っているんですよね。音響を再現する体験と、音楽の歌詞を見る体験。この二つが大きいと言えると思います。僕もライブの時は、シンセサイザーと一緒にソフトシンセの再生用にアクリル製の透過ディスプレイを使っていますが、自分が演奏をコントロールできるだけじゃなく、オーディエンスから僕のステージが見やすくなるので、便利なんですよ。Lyric Speakerもそれと発想がちょっと似てますね。ステージのモニタースピーカーもこういう透過性あるデザインになれば、もっといいですよね。今のライブって、ステージにモニタースピーカーを置いてプロンプターを置いていますけど、Lyric Speakerのようなデザインでそれらが一つになれば、便利かもしれない。ライブの演出の一つとして使えるかも。音の出処と目線が同じということはアーティストにとってもオーディエンスにとってもすごく大事なことで、違和感を取り除いてくれる。Lyric Speakerで体験できるように、耳と目が同じところを向いていることはもの凄く大事なことですね。

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小室哲哉 (TETSUYA KOMURO)

1958年、東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家。キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。83年にTM NETWORKを結成以降、自身の活動と平行して数々のアーティストをプロデュースし、多くのミリオンセラーを世に送り出してきた。2014年には、30周年を迎えたTM NETWORKのライヴツアーを決行。翌2015年にはglobeデビュー20周年として、セルフリプロダクトアルバム『Remode 1』をリリース。2016年8月に続編『Remode 2』と9月にはライヴブルーレイ BOXを発売

Lyric Speaker(リリック・スピーカー)

音楽と同期して歌詞が表示される次世代型スピーカー。モバイル端末から好きな音楽を選曲して再生すると、スピーカーが自動で楽曲の雰囲気や構成を分析。歌詞をデータベースから取得し、その歌詞の美しいモーショングラフィックを生成し、スピーカーに内蔵された透過型スクリーンに浮かび上がらせます。Lyric Speakerは、この再生した歌詞を自動でモーショングラフィックにする技術「Lyric Sync Technology」を、世界で初めて搭載したIoTスピーカーです。 対応楽曲数は120万曲以上。

現在、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店で製品を体験することができる。店頭とWEBにて先行予約受付中。

  • Collaboration: ローリングストーン日本版

    source: 小室哲哉 公式サイトTwitterFacebook)、Lyric Speaker

  • (Yohei Kogami、撮影:K.Yoshioka)