口を閉ざし続けるスタッフたち…FacebookはOculus創業者パルマー・ラッキーの存在を消そうとしている?

口を閉ざし続けるスタッフたち…FacebookはOculus創立者の存在を消そうとしている?

時代の寵児がこうもあっけなく…。

先日カリフォルニア州のサンホゼにて、Oculusが主催する年次カンファレンスOculus Connect 3が開かれました。3日間に渡って行なわれたカンファレンスでは、参加者たちはさまざまなセッション、パーティー、VRのデモ体験など楽しみました。マーク・ザッカーバーグ氏は基調講演でVRの未来を語り、FacebookのソーシャルVRアプリを披露する場面も。

どれも予想通りの展開でしたが、今年は1つだけ違いました。24歳のOculus創立者、パルマー・ラッキー氏がどこにもいなかったのです。

一時はゲームの未来を担うとまで言われた彼がいないのは、恐らく最近彼を取り巻く悪評のせいでしょう。先月「クソカキコミの力は強力であり、ミームの魔力は本物だ」という標語を掲げる反クリントン、トランプ支持の団体「Nimble America」にラッキー氏が関わっていたことがThe Daily Beastによって明らかになりました。彼のTwitterのお気に入りを辿ると彼がトランプ支持者である可能性が高いようです。

また、それだけに終わらず、彼はゲーマーゲートの熱烈な賛同者の女性長く恋愛関係にあることも伝えられています。

これらの事実が報道されるや、少なくとも5つのゲームスタジオと多くのインディーOculus開発者が「Oculusでの開発を止める」と発表し、Facebookにとって大きな悩みのタネになってしまったのです。

カンファレンスに姿はなし

Oculusを作り上げたこの若い天才は、かつてはOculusカンファレンスの中心的な人物であり、2014年に20億ドル(約2000億円)で、FacebookがOculusを買収した際にはザッカーバーグ氏と並んでプレゼンを行なったりもしました。ラッキー氏はVRの熱心な伝道師でもあり、Facebookにとって彼を表に出すことはとても重要だったのです。

さらには昨年、アメリカの政治やビジネスを扱うメディアVanity Fairに、Oculus特集としてザッカーバーグ氏とともに取り上げられました。その際に、ザッカーバーグ氏は「パルマー・ラッキー、ブレンダン・イリベ(Oculus CEO)、ネイト・ミッチェル(Oculusプロダクト担当副社長)とOculusの皆がやっていることを世界に披露するのが待ちきれない」というコメントとともに、この記事をFacebookでシェアしています。

しかし1年後の今となっては、Facebookの人間からラッキー氏に関するコメントを得るのはとてつもなく難しくなってしまったのです。

昼食会

実はOculus Connect 3の会期中、宣伝されずメディアも入れない、招待客のみの「Diversity Luncheon」と称した昼食会が行なわれました。これは、限られた数のOculusスタッフと、OculusのVRインキュベーター・プログラム「Launch Pad」に参加している、多様なバックグラウンドをもつ開発者のみが招待されました。

しかし、昼食会の時点では既に複数の開発者はOculusから手を引いた、あるいは手を引くつもりでいるという状況だったのです。

実際に、VRのパズルゲーム「SUPERHYPERCUBE」を開発するKokoromiとPolytronは「今のようにデリケートで危険な政治的背景のなかで、ラッキー氏や彼のプラットフォームをサポートすることで彼の行動を暗に支持するわけにはいきません。私たちは、判明した事実を踏まえた上で、SUPERHYPERCUBEをOculusに対応させないことを決定しました」と共同声明を発表しました。

また、Scruta Gamesも同様にOculusプラットフォームからゲームを撤退させると発表し、「誰を支持しているかの問題じゃない。企業の顔が差別主義者たちを資金的にバックアップしているのが問題なんだ。彼が誰に投票しようとそれは自由だ」とスタジオはTwitterで発言しました。

昼食会も終わりに差し掛かろうという辺りで、米GizmodoのWilliam Turton氏は部屋を出てきた参加者に接近し、昼食会がどうだったかを聞きました。Oculusのスタッフを除いてほとんどが彼の質問に答え、誰もが昼食会を高く評価しましたが、会のなかでラッキー氏について全く触れられなかったことに首をかしげている人もいたようです。「Oculusの沈黙が重苦しいです」「せめて認めてくれればいいのに」と開発者の1人、Dina Karamさんは答えました。

口を閉ざすFacebook/Oculusのスタッフたち

Turton氏が昼食会参加者と話していていると、彼の名刺を持った見知らぬ女性が彼を引き寄せました。その女性は「これ以上イベント参加者に接近するなら、あなたを追放する」と彼に伝えたのです。そして、Oculusのスタッフなのか、OculusのPR部門なのかという質問には答えず、昼食会に戻ってしまいました。後に判明したのですが、Oculusのマーケティング戦略部門に3年在籍しているまさしくOculusのスタッフだったそうです。

複数の参加者が話した内容によると、Oculusのスタッフはラッキー氏が原因で撤退を考えている開発者に、留まるよう説得していたそうです。開発者の1人はそれに対し「少なくとも現状を認める声明を出すか、可能であればラッキー氏をOculusから切り離すべきだ」と答えましたが、スタッフは「そのどちらもあり得ない」と言ったとか。

またTurton氏は、OculusのCTOであるジョン・カーマック氏にもラッキー氏について質問しましたが、返事は似たようなもの。カーマック氏は過去に、VR業界の男女格差について聞かれた際に「今は欲しい人材を確保するのに苦労してる。相手の見た目はどうでもいい」と答えて批判を受けました。彼にラッキー氏を取り巻く物議について尋ねると、笑いながらスピーチに向かいました。

それでもめげずにアプローチすると、彼の広報担当がスーツケースを持って立ちふさがり、「話すことはありません」とシャットアウトされたそうです。OculusのCEO、ブレンダン・イリベ氏に話を聞こうとした時も、「話せないよ。母を探さないといけないんだ。失礼」と取り付く島もなかったと言います。

結局、今は何をしているのか?

ラッキー氏が今でもFacebook/Oculusの従業員なのか、また働いているとすれば、どういった職務なのかを知っている人は誰もいないのです。

2015年の1月までOculusで働いていた元従業員のJoe Chen氏に話を聞いたところ、「自分はラッキー氏の友人だと思っているものの、現在の状況はわからない」と語ったそうです。また、「僕が知っているのは、彼がFacebookの従業員だったということだけだ。それ以上は何も言えない。予想で言ったことを書かれたくないからね。知っているのは僕が雇われていたということだけで、それ以上コメントできない」とのこと。

その後、OculusのPR主任Tera Randall氏から米Gizmodoにメールが届き、ラッキー氏がまだOculusで働いていることが明らかになりました。彼女によれば、「(ラッキー氏は)自分の不祥事が妨げになることを恐れ、(カンファレンスへの)参加を辞退した」そうです。ラッキー氏本人にも直接コメントを求めましたが、返答は来ていません。

ラッキー氏が公にコメントを残したのは、9月22日が最後でした。「私のとった行動が、Oculusとそのパートナーに対する認識を非常にネガティブなものにしてしまっていることを、とても申し訳なく思います」とFacebookに投稿し、彼はその後表舞台から姿を消しています。彼のLinkedInのプロフィールは、今もなおOculusで働いていると表示されていますが、活発だったTwitterのフィードもFacebookも1カ月以上更新されていません。そして、以前であればVRの未来について至るところでインタビューを受けていましたが、先日のThe Vergeによるインタビューに登場したのはイリベ氏で、彼については一切触れませんでした。

以上のことを見る限り、彼はFacebookの命令でほとぼりが冷めるのを待っているように思えます。彼の最近の活動や政治的趣向に関して、人々の関心はいずれ薄れるでしょう。

しかし事実の発覚によって、開発者のなかにはOculusプラットフォームに対する長期的なコミットメントに疑念を持つ人もいます。OculusのPR映像など提供している制作会社mssngpecesのエグゼクティブ・プロデューサー、Kate Oppenheimさんは「(ラッキー氏が)儲ける手伝いをするような仕事を本当にしたいのかという考えが、いつも脳裏によぎります」と言います。こう考えているのは彼女だけではないし、潜在的には非常に多い可能性もあります。

嵐が過ぎ去るのを待つことで、短期的には解決することもあるかもしれませんが、開発者になかなか拭えない疑念が生まれてしまった以上、長期的なダメージになる可能性も否定できません。今Facebookが行動を起こさないと、もしかしたら手遅れになってしまうかも知れませんね。

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image by Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com
source: The Daily Beast, Kotaku, Pastebin.com

William Turton - Gizmodo US[原文
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