映画「スター・トレック BEYOND」ジャスティン・リン監督にインタビュー! 家族の時間=スタートレックだった!?

映画「スター・トレック BEYOND」ジャスティン・リン監督にインタビュー! 家族の時間=スタートレックだった!? 1

まさかの車はあんまり好きじゃない発言……!?

「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「ホット・ファズ」のサイモン・ペッグが出演だけでなく脚本も手がける人気SF映画シリーズの最新作「スター・トレック BEYOND」。

今回は新たに監督して参戦した「ワイルド・スピード」シリーズでもおなじみ、ジャスティン・リン監督にインタビューして参りました。

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――「スタートレック」との初めての出会いはいつでしょうか?

ジャスティン・リン(以下、リン):私が初めて「スタートレック」を見たのは、家族がアメリカに移住してきたばかりの頃でした。両親はフィッシュ&チップスの店を経営していて、364日働いていました。店は午後9時に閉まり、夕飯は午後10時にとります。

80年代は「スタートレック」の第1シリーズを夜の11時に再放送していたので、毎晩家族で一緒に見ていました。8歳から大学に入る18歳まで毎晩なので、かなりの時間です。なので、家族の時間といえば「スタートレック」でしたし、ある意味で「スタートレック」のキャラクターたちには、家族の一員のようなつながりを感じています。

――そんな思い出深い「スタートレック」の映画シリーズの監督になったわけですが、どのようにして今回の仕事を引き受けることになったのでしょうか?

リン:実はまったく予想外でした。たまたま、ある映画の撮影に入ろうかというタイミングで、J・J・エイブラムスから電話がかかってきて、「スタートレックは好き?」と聞かれたんです。

私が「人生の一部だよ」と答えると、彼は「じゃあ、監督をやるかい?」と言ってきました。私はそこでは即答せず、会う約束をとりつけ、3日ほど考える時間を設けて、まず家族に会いに行きました。

なので、最初に監督のオファーが来たという話をしたのは両親です。夕飯を食べながら話したのですが、監督を受けようかどうしようか?というような話ではなく、「スタートレック」の話題で盛り上がりました。

「スタートレック」のキャラクターたちについて、まるで彼らが家族の一員かのように話すうちに、家族の過去を振り返る話になっていったんです。いつもは昔話なんてしないので、心を動かされて、あらためて「スタートレック」が自分の人生の大きな部分を占めているんだと実感した、すてきな夕食でしたよ。

J・Jは私を全面的に信頼してくれ、すべてを任せてくれました。「スタートレック」というフランチャイズを再始動させたJ・Jから信頼されるというのは、すごくありがたいことだと感じています。

――今回の作品に参加する以前は、J・J・エイブラムスが作ってきた新しい映画版の「スター・トレック」をどのように見ていたのでしょうか?

リン:スタートレックの大ファンとして、第1シリーズをベースにした映画なんて、実現不可能だと思っていました。第1シリーズはなんといっても、キャラクター主体の物語であり、ファンはそこに愛着がありますからね。

でも、J・Jはそんな難しいことを、素晴らしいキャストとともにやってのけたので本当に驚きました。なにより、「スタートレック」の第1シリーズのキャラクターと時系列を尊重した形で作っていたのもすごいです。

前2作で私が特に楽しかったのは、それぞれのキャラクターが一体どんな人物なのか?がしっかりわかるように描かれ、新しい冒険を経て、元のキャラクターたちと似たDNAは持ちながらも、全く別の人物になっていくところです。

そんな作品に参加できたので、本当にワクワクしました。なんといっても前2作では、私が大好きだった5年間の深宇宙探査に出かける物語の前の部分を描いていたので、今回は新しいキャラクターたちを深宇宙探査へ送り込めることに本当に興奮しました。

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――共同脚本を手がけたサイモン・ペッグとの仕事はいかがでしたか?

リン:脚本のサイモン(ペッグ)とダグ(ユング)とともにこの夢のようなプロジェクトを実現しましたが、それはもう大きな挑戦でした。

実は私が監督として決まってから5カ月で撮影を開始し、18カ月で撮影を終えなければならなかったんです。この規模の映画では今までにないほどの強行スケジュールだと思います。

そんなプロジェクトに、才能にあふれた勤勉な人材と一緒に挑めたのは本当に幸運でした。これはハリウッドでは珍しいことだと思います。残念ながら、お互いのエゴがぶつかり合い、戦いになって無駄なエネルギーを使ってしまうということはよくあります。ただ、この映画では違いました。

もちろんみんな、真剣なのでぶつかることはありますが、そこには作品に対する情熱があります。価値のある、最高の戦いです。

サイモンとダグに初めて会った時、一切面識はなかったのですが、私はそこで「スタートレックを脱構築しよう、エンタープライズ号をバラバラにするんだ」と言いました。その時のサイモンの表情はかなり不満そうでしたね(笑)

ダグはサイモンと私がケンカしないように間に入るというような感じでしたが、すごく楽しい時間でした。そして話し合いを重ねていくうちに、サイモンも私がただ人を驚かせたくて、エンタープライズ号を破壊するのではなく、「スタートレック」というものを本当に脱構築していくんだということを理解してくれたんです。

この時のやりとりはお互いに信頼を築いていく、とても有意義な時間になりました。私はバンクーバー、サイモンはロンドン、ダグはロサンゼルスでそれぞれ執筆やスタッフの準備などを進めていき、そこにキャストも加わっていきました。

主演のクリス・パインは、俳優のクリス・パインとしてではなく、艦長のカークとしてぶつかってきました。自分はさまざまな経験をしているので、そういった主張は大歓迎です。エゴではなく、映画やキャラクターのためにベストな道を選ぶために戦うというのは最高のことだと思います。

もちろん家に帰ればクタクタになって寝ることにはなりますが、ベストな道を模索していくというのはかけがえのない経験です。

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――ぶつかりあいながら作っていったということですが、やはりエンタープライズ号を破壊する展開にはかなり反発があったのではないでしょうか?

リン:私が一番重視していた部分である、作品のトーン作りには欠かせないものでした。私は常に全力で戦おうとみんなに伝えてきましたし、不満は後にとっておかずに、全力でぶつけていこうと言ったのです。

だから最初はサイモンもすごく驚いていました。でも私は「私は君のことを知らないし、君も私のことを知らない。でも知っていくことになる。これが私のやり方なんだ」とずっと言っていました。

50年もの歴史を持つ「スタートレック」を脱構築するのは私にとっては大事なことだったんです。そして今回エンタープライズ号を破壊するのは文字通りの脱構築であり、ただカッコいいからとかスペクタクルを演出したいからとかではありませんでした。なんといっても、家族との思い出がある「スタートレック」のエンタープライズ号は私にとっては「家」みたいなものですから。

エンタープライズ号の破壊はストーリーの後半で使うんじゃないか?と思っている人が多かったようですが、私には序盤に持ってくることで逆境を生み出し、それぞれのキャラクターの本質を見せるという狙いがありました。

もちろん私にとってもエンタープライズ号を壊すのは怖いことでしたが、なによりスタジオが、製作資金の大半を序盤で一気に使ってしまうことになりそうだということを、怖がっていました。しかし、最終的には作品のトーンを決めるという理由があってやったことだと、みんなも理解してくれました。

キャストやスタッフはもう家族のようなつながりを持っている中、私は突然やってきた新入りでしたが、あえて彼らに新たな挑戦を与えることで信頼を築いていったんです。ほんの数週間で素直な意見を出せる関係になりましたよ。

とにかく、この映画のすべての責任は私にあります。映画自体でも、J・Jでも、脚本家でも、キャストでもなく、私の責任です。だからこそ、信頼を勝ち取るのが重要な事だし、責任を取るのが私の仕事なのだと思っています。そして、本当にこの仕事を愛しています。

あらゆるシーンがみんなと一緒に考え抜いた形で、最大限の力を発揮して作られているので、本作を見ればその戦いの軌跡と信頼関係を感じることができるでしょう。たとえば、バイクでのアクションシーンは本来2週間くらいかかる規模のものを、天候などの関係もあり、1日半で撮らなくてはいけませんでした。でも、私たちはそれをやり遂げました。

――サイモン・ペッグへインタビューした際に、バイクが登場することにも驚いたと言っていました。あれは監督のアイデアだったのでしょうか?

リン:私のアイデアです。私は「ワイルド・スピード」シリーズの監督として知られているので、が監督に決まった時「お、じゃあスタートレックに車を出すんだな」と多くの人が考えたようですが、私は車を絶対に出したくありませんでした。絶対にね(笑)

私は「ワイルド・スピード」の監督として生まれてきたわけでもなければ、車を愛しているというわけでもなく、たまたま車が出てくる映画を撮ることになっただけなんですよ(笑)。でも、面白いことに、私が「スタートレック」を「ワイルド・スピード」にするんじゃないか?と心配していたファンもいたように思います。実際のところ「ワイルド・スピード」も私が監督として参加したころには、もう車映画ではなくなっていました。私は登場するキャラクターたちに惚れ込んでいたんです。

今回の映画ではエンタープライズ号を破壊するので、キャラクターを助ける道具が必要になりました。それと同時に、劇中に登場する船の中の倉庫に、より原始的な道具を置こうと考え、どちらの表現にも使えるバイクを思いついたんです。物語の展開と演出上、必要だっただけで、自分の好みでバイクが出したかったというわけではありません。そこにエゴはないです。

もう一つ、すべてのアクションがCGばかりで描かれる映画にしたくなかったというのもあります。だから実際のバイクと巨大なセットを使って撮影し、リアルで人間味のあるシーンにしました。

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――宇宙港「ヨークタウン」が本当にすばらしいSF世界の夢の街として描かれていましたが、どのようにしてこれは生まれたのでしょうか?

リン:実は映画の第三幕で重力を使ったアクションをやろうとは決めていたんですが、もっと惑星連邦に関して描きたいと考え、その舞台を宇宙港にすることにしました。

撮影まであまり時間がない状況でしたが、超巨大な宇宙港を惑星連邦が作ったとして、重力を使ったアクションと組み合わせるためにはどのようなデザインであれば違和感がないか?を考えたんです。

でも、サイモンとダグにそのコンセプトを話した時は、2人は「は? なんだって?」みたいな反応で、なかなか理解してもらえませんでした。その後の昼食のときに絵を描いて仕組みを伝えたときには「なるほど、なるほど」みたいな反応をしていましたが、たぶんそのときもわかっていなかったと思います(笑)。

そこで私は建築家や技師と会い、実際に模型を作ったりしながらデザインに磨きをかけていきました。そして最終的に映画が出来上がって試写で見たときに、2人は「ヨークタウン」が一体どういうものだったのかを初めてちゃんと理解できたようです。

――今回は監督が子どもの頃から大好きだった「スタートレック」を撮るという、非常に大きいことを成し遂げたかと思うのですが、今後はどんな作品を作っていきたいと考えていますか?

リン:幸運なことに、ここ10年間は本当にさまざまな機会に恵まれていて、テレビや映画だけでなく、VRコンテンツの監督も担当させてもらいました。私は新しいものに挑戦するのが大好きなので、毎回楽しく成長できていると思います。

次の作品は自分の原点に立ち返って、人物主体の小さな映画を作ろうと考えています。また、「子連れ狼」の製作も進めています。

映画の規模やビジネス的にどうこうではなく、毎朝興奮して目が覚め、とにかく作っていてクタクタになって家に帰ればすぐ眠れるような作品を撮りたいです。ここ10年は幸運でしたが、これからの10年も非常に楽しみです。

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「ワイルド・スピード」の監督ということで、てっきりコロナ片手にバーベキューをする、イケイケの車好きかと思いきや、非常に真面目かつ冷静な印象のお方でした。一方で、家族や信頼関係を重視する監督であるということもすごく伝わってきて、そこは「ワイルド・スピード」でも「スター・トレック BEYOND」でも表現されている部分でしょう。

もちろん本作はジャスティン・リン監督の作品なので、爽快なアクションも満載ですが、なんといっても監督の「スタートレック」への愛にあふれる、初代へのリスペクトがつまった硬派なSF作品となっています。

映画「スター・トレック BEYOND」は2016年10月21日(金)全国ロードショー。

(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

source: 「スター・トレック BEYOND」公式サイト, YouTube

傭兵ペンギン