機械が生物になる未来がくる? ミミズの筋肉で動く小型ポンプが持つ可能性

機械が生物になる未来がくる? ミミズの筋肉で動く小型ポンプが持つ可能性 1

人工筋肉に新しい可能性が開けそうですね!

技術の進化と共に機械もより精密に、より小型に進化してきましたが、伝統的な機械工学による小型化には限界があるとも論じられてきました。機械に必要となるパーツや電源などがどうしてもボトルネックになってしまうためです。小型化以外にも、外部の電力に依存せず、人間の体のように酸素や栄養をエネルギー源にできたり、材料も自然に還元したりできればより環境に優しい機械を作ることが可能です。バイオコンピュータなどもそれに近いですね。

そこで近年は、機械の動力に有機物を使うことも試みられています。水などを送る機械であるポンプは、最先端分野において小型化が求められているもののひとつですが、先日理化学研究所(理研)がミミズの筋肉を使った小型ポンプの開発に成功したと発表しました。

理研生命システム研究センター集積バイオデバイス研究ユニットの田中陽氏と東京電機大学の釜道紀浩准教授の発表によりますと、彼ら共同研究チームはミミズの筋肉の制御性応答速度収縮力に着目しました。まず筋肉シート(フトミミズを輪切りにして開いたもの)を作成し、電気刺激に対しての収縮力と応答時間を計測しました。

ミミズ筋肉を幅約1cmのシート状にして電圧6Vの電気刺激に対する収縮力を測定しました。その結果、最大9.3 mN(約0.95g重)、収縮するまでの応答時間は約0.3秒でした。これは一般に小型ポンプの駆動素子として用いられる同サイズの圧電素子と同程度の性能であり、ミミズの筋肉シートからポンプの駆動素子として十分な力が得られることが分かりました。

これにより可能性があると判断したチームは、次に筋肉シートを駆動素子として使い、実際のポンプを作成しました。

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吸い込んだ水が入るチャンバーの上にプッシュバーを置き、その上から筋肉シートを被せてピン留めします。そしてシートに電気パルスを与えて伸縮させることでプッシュバーを上下させ、片方の流路から吸い込んだ水を、逆止弁のあるもう片方の流路に押し出します。

結果は成功で、ちゃんと送液が確認できました。流量は分速5マイクロリットルで、「これまでの新生ラットの心筋細胞を用いたポンプに比べて1,000倍以上の量」だったそうです。これにより、同サイズの圧電素子を使ったポンプに匹敵する機能があると実証できました。

この実験の目的は、切ったミミズをあらゆる機械に! というわけでは勿論ありません。可哀想すぎます。チームの期待は、ミミズと同じ構造の筋肉を人工的に作ることで、伝統的な機械に匹敵する有機的な機械を作るということです。今回は筋肉を動かすのに電気を使用しましたが、それはあくまで刺激を与えるためで、本来筋肉が動くのに必要なエネルギー源はアデノシン三リン酸(ATP)です。彼らは「神経組織なども含めて、人工的にミミズと同様の構造を作ることができれば、将来的には電気刺激なしで駆動する可能性」があると言います。

同チームは過去に「シビレエイ発電機」なども開発しており、よりクリーンな技術のために生物の力を借りることを提案してきました。人間が進歩していくには、自然の知恵が必要、ということなのかも知れません。…そのうち人工ミミズ筋に覆われたパワード・スーツ、とか出てくるんでしょうかね。

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source: 理化学研究所
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