映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』デヴィッド・イェーツ監督にインタビュー。「恐ろしい要素があるからこそ、物語が豊かになる」

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ハリー・ポッター』の世界の過去を舞台に、魔法動物学者ニュート・スキャマンダーが冒険を繰り広げる映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』。

シリーズ化も決定している本作に世界中が熱狂する中、日本での劇場公開に合わせて来日したデヴィッド・イェーツ監督にお話を伺いました。

監督の原点から制作上のこだわりまで、誰もが引き込まれる『ファンタビ』の魔法世界と主人公たちが生まれた秘密に迫ります。

――実際に作品を観て、子どものころのようにワクワクしたのですが、大人でもそのような気持ちになれる映画を作るためのポイントはなんでしょうか?

デヴィッド・イェーツ(以下、イェーツ):J・K・ローリングのイマジネーションによって作られた脚本があるからこそ、皆さんに喜んでもらえるのだと思います。

私たちは素晴らしい物語を表現し、伝えるためにたくさんの愛と細部へのこだわりを作品に込めました。童心を持ちながら自分の内側にあるものを引き出して作っていく行為にも、登場するキャラクターやストーリーにも皮肉っぽさはありません。そういう部分が、ワクワクして楽しむことのできる仕上がりにつながっているのかもしれません。

――本作はイギリスの外が舞台でしたが、アメリカにはアメリカの魔法界があったのだという説得力を感じました。1926年の時代背景がアメリカの魔法界に与えた影響を教えてください。

イェーツ:魔法界の歴史において、魔法使いと非魔法使いはなんとか共存していたものの、セイラム魔女裁判以降、アメリカの魔法使いたちのコミュニティは地下に隠れることになりました。ジョー(J・K・ローリング)は魔法使いと人間の共存について物語で扱ってきましたが、互いの世界は影響を与え合っています。

彼女は今も現実世界と魔法をうまく合わせて素晴らしい物語を作っています。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』シリーズは小説版がない映画から始まる物語なので、実際に劇場に足を運んで時代背景と魔法界の関わりを体感してみてください

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――劇中で流れるジャズミュージックが新鮮で印象的でした。音楽面でのこだわりを教えてください。

イェーツ:私は個人的に1920年代のジャズが好きなのですが、適任の作曲家を選ぶことは本作にとって非常に重要なことでした。なぜなら音楽は作品にとって魂と言えるからです。

文章や映像だけでは雄弁に伝えきれない内容も、音楽を加えることでとても豊かに表現できます。作曲家は映像に魔法をかけるかのように豊かさをもたらす存在なのです。

作曲家の中でも私はジェームズ・ニュートン・ハワードの大ファンで、彼も楽曲提供に関心を持ってくれていました。私はジェームズに、通常とは異なる関わり方で作品に参加してほしいと頼んだんです。

本来、作曲家は映画から映画へ次々に楽曲を提供していきます。編集の終盤で作品に参加し、2~3カ月ほどその作品に携わったら、また次の作品へ移っていく産業的なプロセスです。しかし、私はジェームズに、撮影開始前からメロディーを書き始めてほしいと伝えました。そうすればキャストにその曲を聞きながら演じてもらえますしね。

そして、実際に彼はこの作品に集中して、製作の進行とともに作曲していくことに同意してくれました。ジェームズは一年ほどの期間、この作品だけに専念して作曲活動を行ってくれたんです。これは大変うれしく、幸運なことでした。

彼は撮影前から『ファンタスティック・ビースト~』にすべてを注ぎ、撮影中や編集の間にも新しいアイデアを発想してくれました。ジェームズが没頭してくれたおかげで、私たちは同じように考えたり共感したりする部分が多くあり、作品をより魅力的にする美しい音楽を完成させられたんです。

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――映画全体は楽しく心躍る内容でしたが、一方で不気味なシーンは本当に不気味で肝が冷えました。物語のダークな部分はどのように作っていったのでしょうか?

イェーツ:ダークなシーンの撮影には良い意味で緊張感がありました。役者たちもリアルに演じるために役に集中していましたし、現場にも不気味な雰囲気が漂っていたので、笑い声なども一切聞こえなかったです。

J・K・ローリングが織りなす物語の中には必ず闇の部分が含まれており、私はその要素をとても気に入っています。恐ろしい要素があるからこそ、物語自体が豊かで寛容なものになっているんです。ヨーロッパの子どもたちが聞かされるおとぎ話にも大抵怖い要素が含まれていますしね。

実は私も作り手として、いつか心霊映画を撮りたいと思っています。子どものころ、そういう幽霊物語が大好きだったんです。観賞しながらワクワクしたり、すごく怖い思いをさせられたり、とても直感的な反応を体験できるジャンルですからね。自分の中にある子どもの部分が、そういった心霊ものを好んでいるのかもしれません。

――本作にはさまざまな魔法生物が登場しますが、監督のお気に入りはどの生き物でしょうか?

イェーツ:お気に入りのファンタスティック・ビーストはサンダーバードのフランクです。サンダーバードは天候を操る黄金の魔法の鳥で、威厳があって美しいところが大好きです。

――本作を観ると、誰もが主人公たち4人の素直な魅力を大好きになると思います。彼らのように、誰かにとって最高の友人でいるために大事なことは何か、監督の考えを教えてください。

イェーツ:彼らを好きになってもらえたとしたら、とてもうれしいです。

思うに、人のありのままを受け入れる心が大切なんだと思います。相手が何者かを決めつけたりせずにね。それに誠実さや愛情を示すことも同じくらい重要です。

本作の主人公たちはアウトサイダー的な立場の人々ですが、だからこそ4人で上手くまとまることができます。彼らは英雄視されるような人物ではありませんし、ヒーローっぽくもありません。私たちと同じように、生きることでさまざまな葛藤も経験しているから、彼らを見ていると自分と共通する部分が見つかると思います。

決めつけず、その人らしさを受け入れることが大事なんです。

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監督はとても物腰のやわらかい謙虚な方で、一言一言にJ・K・ローリングをはじめとするスタッフやキャスト、そして物語へのリスペクトが込められていました。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、毎日何かにワクワクしていた子どものころの気持ちがよみがえる、最高のファンタジー映画です。魔法の存在を信じられる映像世界と、愛さずにはいられない魅力的な4人の主人公が生まれた秘密は、もしかしたらデヴィッド・イェーツ監督自身の人柄にもあるのかもしれないと感じました。

『ファンタビ』の世界観をさらに知りたい方は、Pottermoreにてアメリカ魔法界の歴史アメリカの魔法学校についてのJ・K・ローリングの記述が読めるので、そちらも併せてどうぞ。

映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は大ヒット上映中!

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source: 映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』オフィシャルサイト, Pottermore1, 2, 3, YouTube

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